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残価設定クレジットとそのメリットについて
マツダが取り扱っているマツダスカイプランは、一般的に言われる残価設定クレジットを指します。
残価設定クレジットとは、車両本体価格の一部を残価として設定し、残価部分を除いた残りの金額のみを分割して支払うというプランです。
このメリットとしては、支払う対象の金額が少ないことから月々に支払う月額が抑えられるという点です。
通常のローンでは、頭金や前に乗っていた車の下取り価格を除いた車両本体価格全額に対して分割払いを行っていくのに対し、残価設定クレジットは残価を除いた部分のみ支払えばよいため、単純に分割する総額が少ない分月々に支払う月額が少なくなります。
月々の支払いを抑えたいと考えている方にはまさにぴったりのプランと言えますね。
分割支払い後の取り扱いは
マツダの残価設定クレジットは、3年~6年の分割払いに対応しています。
その分割払いが終わった後は、自分の状況に合わせて車をどうするか4つの選択肢から選ぶことができます。
・新しい車に乗り換える
現在乗っている車を返却し、新しい車に乗り換えることができます。その場合は、まだ支払っていない残価部分の支払いは不要です。
・そのまま乗り続ける:一括払い
現在乗っている車はそのまま乗り続け、残価部分を一括払いします。
・そのまま乗り続ける:再分割払い
現在乗っている車はそのまま乗り続け、残価部分を再度分割契約して分割払いを続けます。この場合、その際の状況によって金利が変わり、また再度審査が必要になります。
・返却する
現在乗っている車を返却し、新たな契約は結びません。この場合、返却する車の状況に応じて追加金を支払わなければいけない場合があります。
残価設定クレジットと通常ローンの比較
残価設定クレジットのメリットは月々の支払い月額が抑えられる点ですが、実際に通常のローンとどのくらい差が生まれるのでしょうか。
以下の条件でシミュレーションを行いました。
【前提条件】
購入車両: デミオ / XD(2WD 6AT)
カラー:ディープクリムゾンマイカ
メーカーオプション:標準装備のみ
ディーラーオプション:なし
支払い期間:5年(60回)
実質年率:2.99%
車両価格:1,814,400円
諸費用:121,910円
合計金額:1,936,310円
頭金:0円
通常支払い月額:20,851円
最終回1回前支払い月額:20,818円
ボーナス月加算:50,000円
最終回支払い額:588,000円
支払い総額:2,130,517円(最終回一括払い時)
通常支払い月額:31,741円
最終回1回前支払い月額:20,818円
ボーナス月加算:50,000円
最終回支払い額:31,722円
支払い総額:2,087,031円
シミュレーションの結果を見ればその差は歴然ですが、通常支払い月額の金額が、残価設定クレジットの方が約11,000円も安くなっています。
これは残価部分である588,000円がローンに入っているか入っていないかの差から生まれており、通常支払い月額が如何に大きなメリットであるかが一目瞭然です。
またもう一つのメリットとしては、常に数年毎に新しい車に乗り換えていくことが可能だという点です。
残価設定クレジットは最終回支払い月の際に、新しい車へ乗り換えるという選択ができるため、月々数万円を支払い続けていけばずっと新しい車に乗り続けることができます。
しかし、実は残価設定クレジットにはメリットと同等かそれ以上の大きなデメリットが潜んでおり、残価設定クレジットの扱い方によってはデメリットの方が大きくなってしまう場合もあるのです。
残価設定クレジットのデメリット
残価設定クレジットはいくつかのメリットがある一方で、デメリットもいくつかあります。
実際のところ、メリットよりもデメリットの方が多いのが実態ですが、あまりデメリットについては大きく語られていませんので、自分でしっかりと理解をしておく必要があります。
支払い総額が多くなってしまう
残価設定クレジットの最大の欠点は、最終支払い時に乗り続けることを選択した場合に現れます。
残価設定クレジットは、残価部分を除いた車両本体価格をローンとして分割払いを行っていくという特性上、元金にあたる部分の減りが遅いという欠点があります。
元金の減りが遅い分、通常ローンに比べて余計に金利がかかってしまい、より多くの金利を支払うことになってしまいます。
実際に先ほどシミュレーションした結果を見ると、同じ金額で同じ金利でも総支払い金額に差が出ており、残価設定クレジットの総支払い金額は最終支払い分残価一括払いで2,130,517円、通常ローンの総支払い金額は2,087,031円となっており、その差は約43,000円と残価設定クレジットの通常支払い月額2か月分に相当するほどとなっています。
またこの差はあくまで最終支払い分を一括で支払った場合です。残価設定クレジットは月々の支払いを抑えたい方の利用が大半で、最終回にまとまった金額を支払うようなケースはあまりないのが実態です。
従って最終支払い分は多くの方が再分割契約を結んでいます
。そうなると、更にそこから再分割に伴う金利を支払っていくことになりますし、再分割契約の金利は当初金利よりも上がってしまう事がほとんどであるため、先ほどの43,000円どころでは済まないような差が生まれてしまいます。
従って、最終支払い時に乗り続けることを選択した時点で残価設定クレジットではない通常のローンに劣ってしまうため、支払い金額では残価設定クレジットは損になってしまうのです。
銀行系マイカーローンに比べて金利が高い
残価設定クレジットをはじめとしてディーラーで取り扱っているローンは金利が高い傾向にあります。逆に、銀行系マイカーローンは金利が低く、借入が有利です。
また、残価設定クレジットはディーラーしか選択肢がありませんが、マイカーローンを取り扱っている銀行はたくさんあり、金利も銀行によって差があるため選択肢は多数あります。
加えてそれぞれの銀行で金利優遇キャンペーンなども頻繁に行っており、代表的なのはその銀行の口座を持っているケースや給料口座になっているケース、住宅ローンを組んでいるケースなどですね。
いろいろな銀行を比較し、低い金利の銀行を選択できれば残価設定クレジットに対しかなりのアドバンテージとなります。
先程のシミュレーションでは金利2.99%で試算を行いましたが、仮に銀行系マイカーローンの金利が1%低い2.0%だった場合は以下のようになります。
支払い期間:5年(60回)
実質年率:2.00%
車両価格:1,814,400円
諸費用:121,910円
合計金額:1,936,310円
頭金:0円
通常支払い月額:30,727円
最終回1回前支払い月額:20,818円
ボーナス月加算:50,000円
最終回支払い額:30,700円
支払い総額:2,036,323円
シミュレーション結果を見ると、銀行系マイカーローンの総支払い金額は残価設定クレジットの残価一括払いに対して約10万円も低くなっています。これは、残価設定クレジットの通常支払い月額5か月分に相当し、金利の違いがかなりの差を生むことが分かりますね。最終支払い分を再分割契約にすればその差はもっと広がります。この金利はあくまで一例であり、銀行によっては更に低い金利での取り扱いがあるところもありますので、金利の低い銀行系マイカーローンは賢い選択と言えますね。
最終支払い時にまとまったお金が必要となる場合がある
残価設定クレジットで車を購入し、最終支払い時に返却することを選んだ場合は、残った残価部分については支払いを行う必要はありません。
しかし、返却する際の車の程度によっては追加金を支払わなければいけない場合があります。
まず車を返却する際には、車の下取り査定と同じように車のエクステリア・インテリアの状態をチェックします。
チェックは一般財団法人日本自動車査定協会の定める基準に準じて設定された所定の査定基準に従い査定が行われます。
主にみられるのは、エクステリアの場合はキズやへこみ、汚れ、亀裂などが無いか、その程度がどうかなどを確認します。
インテリアに関しては、同じようにキズ、へこみ、汚れなどの他に布地の破れや色あせ、シミ、黄ばみや匂いなどがチェックされます。
磨けば取れるような汚れなどは対象になりませんが、残ってしまうようなものは査定に影響が出てしまいます。
その査定の結果次第では、追加金を支払う事になるのですが、マツダの場合は特約制限の免責点数50点を超えないことという決まりがあります。
査定は点数制で、1点当たり1,000円で50点、つまり50,000円を上回ってしまうようであれば、追加金が発生してしまいます。
また、追加金は走行距離でも発生します。
残価設定クレジットの契約時に、契約年数によって規定の走行距離が定められます。
そして規定の走行距離を上回るようであれば追加金が発生する仕組みとなっています。
追加金は走った距離によって1km当たりの単価が変わり、走行距離が80,000km以内であれば1km超過毎に10円、80,000kmを超えるようであれば80,000km以内の超過分は1kmあたり10円、80,000kmを超えた超過分は1kmあたり20円と定められています。
走行距離の規定が60,000kmであったとして、70,000km走っていれば、追加金は超えた10,000km×10円で100,000円という大金を支払う事になってしまいます。
たった10,000km超えただけでこの金額ですので、遠出することが多いような乗り方をする場合は特に注意が必要ですね。
もう一つ注意しておかなければいけないのは、この追加金に関しては分割払いなどはできず、一括で支払う必要があります。
せっかく毎月の出費を抑えても最後に一気にまとまったお金を払う羽目になってしまう可能性がありますので、返却するからと貯蓄もせずに楽観視していると最後に痛い目をみることになります。
交通事故を起こした場合の対応
残価設定クレジットの契約中に交通事故を起こしてしまった場合は、返却時に大きな追加金を支払わなくてはなりません。
まずは、当然ながら交通事故に伴って車には何らかのダメージを負いますが、キズやへこみは車体損傷精算として追加金を支払うことになります。
これは先程の査定と同じものです。
加えて、事故の程度によりますが修理を伴うようなものであった場合、車には修復歴が残ります。
修復歴は修復歴減価精算と呼ばれる、修復歴による精算が必要になり、この分について追加金を支払う必要があります。
中古車市場においては、修復歴があるというだけで売れにくくなるため、販売価格はかなり低いものになりますし、下取り時においても修復歴があれば下取り査定はかなり低くなってしまいます。
これと同様で、残価設定クレジット終了後に返却された車は中古車として販売されますので、修復歴を付けてしまった場合はそれ相応の追加金を支払うことになってしまうのです。
仮に交通事故によって廃車になってしまうなど物理的に返却ができなくなってしまった場合は残価部分の支払いをしなければいけなくなってしまいます。
返却できない場合がある
残価設定クレジット終了後に車を返却する際には、場合によっては返却させてもらえないといったケースがあります。
一つ目はキズやへこみなどの損傷が激しく、残価よりも追加金の支払いが多くなってしまうようなケースです。
あまりに損傷がひどいと返却後に中古車として販売ができないため、その場合は返却不可となり乗り続けるか売却するしかなくなってしまいます。
二つ目は、改造等を行い原状回復ができなくなっているケースです。
その場合は返却できなくなってしまいますので、車のカスタマイズが好きな方は残価設定クレジットでの車の購入は控えた方がよいでしょう。
三つ目はタバコを吸う場合やペットを車に乗せる場合のケースです。
これらの方は車のシートや内装に付着した黄ばみや汚れ、匂いが付着してしまいますが、これらはクリーニングを行っても取れないため、あまりにひどい場合は返却ができなくなってしまいます。
四つ目は、支払いが滞ってしまっているケースです。
残価設定クレジットの月々の支払いはもちろんのこと、自動車税についても未払いがある場合は返却することができません。
乗り換えをする場合はずっと車代を支払い続ける必要がある
残価設定クレジットを利用し、最終支払い時に新しい車に乗り換える場合でもデメリットはあります。
残価設定クレジット利用中の車は、所有者はカーディーラーとなっており、自分の所有物ではありません。
あくまでもディーラーから車をレンタルしているような状況で、自分の思うように車をいじったりすることはできません。
また、乗り換えは車に乗っている間は毎月ずっと支払いを続けていく必要があります。
通常のカーローンを利用して購入した場合は車の所有権は自分自身となり、ローンを完済すればそれ以降は毎月の支払いはなくなり、負担はかなり軽くなります。
これも残価設定クレジットのデメリットの一つです。
残価設定クレジットに不向きな方
これまでの結果から、以下の条件に当てはまる方には残価設定クレジットの利用はおすすめできません。
・将来車を乗り続ける前提で購入される方
シミュレーション結果の通り、銀行系マイカーローンに対して総支払い金額が高くなってしまいます。
・車を良くぶつけてしまう方、交通事故を起こしてしまったことがある方
車にキズなどを付けたり、修復歴がついてしまうと追加金を支払う事になってしまいます。
・タバコを吸う方、ペットを車に乗せたい方
シートに付着した匂いや汚れはクリーニングしてもなかなか落ちませんので、追加金を支払う事になってしまいます。
・旅行や出張など、よく車で遠出をする方
走行距離が規定を超えてしまうと大きな追加金が発生してしまいます。
・車を自分好みにカスタマイズしたい方
車を改造したり、カスタマイズして原状回復が困難となれば、最悪は返却ができなくなってしまいます。
・お金にルーズな方
月々の支払いはもちろんのこと、自動車税なども延滞していると返却ができなくなってしまいます。
また、その後新しい車に乗り換える場合やローンを新たに組む場合の審査にも影響が出てしまいます。
残価設定クレジットの審査について
よく残価設定クレジットの審査は甘いと言われる方がいらっしゃいます。
月々の支払いを抑えられるため見かけ支払う金額が少なく見えたり、ディーラー側も積極的に宣伝を行っているためそのような情報が出ていますが、実態は通常のディーラーローンと審査基準は変わりません。
残価設定クレジットはディーラーで取り扱っている商品であり、審査についてもディーラー指定の保証会社によって審査されます。
これは通常のディーラーローンと全く同じです。
残価を含めればローンを組むトータル金額も一緒ですので、審査基準は変わりません。
繰り上げ返済はできるか
繰り上げ返済とは、本来の月々の支払い金額とは別に一括、もしくは部分的に支払いを行う事です。
これにより、本来の支払い回数よりも早めに支払いを終えられたり、もしくは支払い回数はそのままで月々の支払い金額を減らしたりすることが可能です。
またそれ以外繰り上げ返済のメリットとしては、繰り上げ返済は元金の返済に充当されますので、元金が減ることで支払う金利部分を減らす効果があります。
繰り上げ返済は、銀行などで取り扱っている通常のマイカーローンやディーラーの通常ローンはもちろんのこと、残価設定クレジットに対しても取り扱いがありますので、どのローンを利用しても条件は同じであると言えます。
マツダの残価設定クレジットの繰り上げ返済は手数料が無料ですので、月々の支払いが低いことによって多少の貯蓄ができるのであれば、積極的に繰り上げ返済を活用し少しでも余計に支払う金利を減らすのが得策と言えますね。
デミオの購入時には残価設定クレジットは向いていない
残価設定クレジットは向いている方と向いていない方がいらっしゃることを説明してきましたが、実際にデミオを購入する場合にはどうでしょうか?
基本的には車種によって向いているか向いていないかという部分はあまりなく、使う人のタイプによって決まってきます。
ただ、デミオを販売するマツダの「走る歓び」をテーマに走りにこだわった車づくりをしているメーカーで、デミオについてもその系譜を脈々と受け継いで作り込まれています。
マツダ独自のスカイアクティブテクノロジーはエンジンやシャーシ、ボディなどに徹底的にこだわり、走りが楽しくなることをコンセプトに設計されています。
燃費についても小型車という事もあってかなり高い水準となっており、特にマツダ独自のディーゼルエンジンを搭載したモデルではJC08モードの2WD(FF) AT車で26.4km/Lと素晴らしい燃費性能となっています。
走るのが楽しく燃費も良いとなれば、乗る人はたくさん走りたくなる人も多いのではないでしょうか。
そういった意味で言うと、残価設定クレジットを利用してデミオを購入してしまうと走行距離に規定があるため、返却時に追加金を取られることを考えると思う存分走る事ができないという事態に陥ってしまいます。
では返却せずにそのまま乗り続けようという事になれば、前述したシミュレーション結果の通り、残価設定クレジットの仕組みや金利の影響によってトータルでの総支払い金額が割高になってしまう残価設定クレジットを利用するというのは賢い選択とは言えないでしょう。
車を購入するときは銀行系マイカーローンがおすすめ
車を購入する際、総合的に考えた場合には銀行系マイカーローンを利用した購入がおすすめです。
残価設定クレジットは足元数年間の月々の支払いが抑えられますが、返却時に大きな追加金を求められるというリスクがあるため、月々抑えられた分はある程度貯蓄しておくことが必要となります。
返済してしまうと車はなくなってしまいますので、また車を買わなければいけなくなってしまいます。
また場合によっては返却ができなくなるというリスクも抱えています。
かと言って返却せずに乗り続けようものなら、最終的に支払う金額が高くなってしまう残価設定クレジットは損をすると断言しても過言ではありませんし、その他の様々なデメリットを考慮しても、残価設定クレジットは得策とは言えません。
本当の意味で車の出費を抑えたいのであれば、足元だけ安く抑えられる残価設定クレジットではなく、車に乗っている期間トータルとして支出を抑えられてリスクも少ない銀行系マイカーローンを使うのが賢い選択だと言えます。
銀行系マイカーローンは最終支払いまで支払う金額は一定ですので、生活設計も立てやすいですね。
デミオの購入で残価設定クレジットか銀行系マイカーローンかで悩んでおられるようであれば、銀行系マイカーローンをおすすめいたします。
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