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自動車保険の”団体割引”について気になっている人は多いのではないでしょうか?
「保険料の割引率が凄い高いけど、本当にお得なの?」
「そもそも自動車保険の団体割引って何?」
特に1つ目の疑問を持っている人は多いはずです。
確かに、勤めている企業によっては30%を超える割引率が設定されている事もあり、個人で加入する場合より保険料を節約する事が出来ます。
しかし、団体契約で取り扱われている自動車保険は、残念ながら”東京海上日動”や”損保ジャパン”などの元々の保険料が高い代理店型の保険ばかりです。
なので、多くの場合で”団体契約”で加入するよりもダイレクト型の自動車保険に直接加入した方が保険料は安くなります。
以下、両者の保険料を比較してみた結果を公開します。
合わせて、団体契約に加入する場合に知っておきたい情報もまとめています!
自動車保険の団体割引の割引率~勤務先や組合によって異なる~
自動車保険の団体割引の割引率は、勤務先の企業や加入している組合などによって異なります。
低い所では5%、高い所では30%~40%となっており、誰もが高い割引率で契約できるわけでは有りません。
そのため、まずは団体割引の割引率がどれくらいなのかを確認しておきましょう。
割引率の確認先は所属している団体毎に違いますので、間違えないようにしてくださいね。
以下を参考にどうぞ。
- 勤務先の総務部や保険部門
- 加入している共済・組合
- 団体契約の対象となっている保険会社 *
* 問い合わせをする際は、「○○企業の団体扱自動車保険」などのように、どこの企業の団体契約なのかを伝えるようにして下さい。
実際の団体割引の割引率一例~大企業や公務員なら30%に達する事も~
2017年4月時点のネット上で公開されているいくつかの企業の「大口団体契約の割引率」を紹介しておきます。
- パナソニック・・・30.0%
- ブリヂストン・・・27.5%
- 株式会社ヤマザキ・・・22.5%
- 文部科学省共済組合・・・22.5%
- 愛媛県学校生活協同組合連合会・・・15.0%
なお、団体扱一括払を利用すれば、割引率が約5%上乗せされます。
パナソニックやブリヂストンなどの大企業の割引率は「約30%」となっており、また、公務員の人も20%を超える割引を受けられそうですね。
このように、団体割引の割引率は、基本的に各企業の従業員数に比例して高くなります。
上記の3つの会社の連結ベースでの従業員数は以下の通りです。
数値は各社の会社概要や有価証券報告書より(時期に若干のズレが有ります)。
企業名 | 従業員数 |
---|---|
パナソニック | 249,520名 |
ブリジストン | 143,616名 |
株式会社ヤマザキ | 27,180名 |
厳密にいうと、団体契約の加入者数に比例します。
従業員が多ければ、加入者数も多いと予測できますよね。
もしあなたが大手の企業にお勤めしているのであれば、大口団体割引によって大きな保険料の割引を受けられる可能性が高いです。
本当にお得なのか!?団体割引とダイレクト型(通販型)の自動車保険の保険料を比較
それでは、「自動車保険の団体割引を利用した場合」と「ダイレクト型の自動車保険を契約した場合」では、どちらがお得なのか検証していきましょう。
検証方法は以下の2ステップで行います。
- STEP1:まず、同条件(以下の画像)で東京海上日動、SBI損保及びソニー損保の3社で保険料を見積もりを取る
- STEP2:次に東京海上日動の保険料に団体割引の割引率(5%・10%・20%・30%の4つ)を適用した金額と他のダイレクト型2社との保険料を比較する
STEP1:同条件で3社から見積もり
見積もり条件は以下のとおりです。
(出典:東京海上日動)
上記の条件での見積結果は、それぞれ以下のようになります(団体割引はまだ適用していません)。
保険会社 | 保険料 |
---|---|
東京海上日動 | 73,030円 |
ソニー損保 | 50,210円 |
SBI損保 | 39,870円 |
STEP2:団体割引適用後の金額とダイレクト型の保険料を比較
そして、この結果に団体割引を適用すると、以下のようになります。
なお、保険料の厳密な計算方法は後述しますが、ここでは単純に割引前保険料に対して団体割引などの割引率を乗じて保険料を算出しています。そのため、実際の見積結果とは、若干異なる点にご注意ください。
保険会社 | 保険料 |
---|---|
東京海上日動 (団体割引率:5%) | 69,379円 |
東京海上日動 (団体割引率:10%) | 65,727円 |
東京海上日動 (団体割引率:20%) | 58,424円 |
東京海上日動 (団体割引率:30%) | 51,121円 |
ソニー損保 | 50,210円 |
SBI損保 | 39,870円 |
今回の見積条件の場合では、30%の団体割引が適用されたとしても、ダイレクト型自動車保険の保険料の方が安くなりました。
この結果を考慮すると、自動車保険の団体割引が大きな割引率を謳っていたとしても、必ずしも最もお得な選択とはならなさそうです。
もちろん、見積条件は人によって異なるので、団体割引を利用した方がお得になるケースも有るかと思います。
そのため、団体割引の割引率に惑わされるのではなく、またダイレクト型の自動車保険が安くなると決めつけるのでもなく、しっかりと両者の保険料を見積もって比較する事が大切です。
【参考】自動車保険の団体割引の割引率の計算方法
団体割引に限った話ではありませんが、複数の割引が適用される場合には、以下のような計算式によって最終的に適用される割引率を算出します。
(興味のない方は読み飛ばして頂いて構いません!)
A割引の割引率X+{(1-X)×B割引の割引率Y}+{(1-X-T)×C割引の割引率Z}・・・=最終的に適用される割引率
(1-X)×B割引の割引率Y=T
ちょっと複雑・・・ですよね。
例えば、等級制度での割引率が50%、団体割引が30%の場合だと、最終的に適用される割引率は、0.5+(1-0.5)×0.3=0.65(65%)となります。
具体例を見ると、少し分かりやすくなったのではないでしょうか。
ただ実際には、保険の種類によって割引率が異なる事も有りますし、また割引が適用されない特約も有るので、単純に上記の計算式で最終的に適用される割引率を計算する事は出来ません。
割引率が公表されていない事も有りますからね。
そのため、個々人で割引率を計算するよりも、「各保険会社の見積り」や「自動車保険の一括見積り」などを利用した方が迅速かつ正確に保険料を比較する事ができます。
要するに上記の計算式を覚える必要は一切ありません。
各割引の割引率を単純に合算(上記の例だと50%+30%=80%)するのではない点だけ押さえておけば良いでしょう。
自動車保険の団体割引を利用する上で知っておきたい事
保険料が高かろうが安かろうが、私は団体契約をしたい!という人もいると思います。
そういった方々の為に、自動車保険の団体割引を利用する上で知っておいて欲しいポイントをいくつか紹介しておきたいと思います。
個人から団体、団体から個人に移行する場合でも等級は引き継がれる
自動車保険の団体割引を利用して保険に加入しても、以前の等級が引き継がれます。
また、団体契約から一般契約に変更する場合にも、同様に等級が引き継がれるので安心して下さい。
ただし、一定の共済の場合だと等級を引き継げない可能性はあります。
この辺りは、自分が加入しようとしている共済に確認をとって貰うとともに下記記事も参考にしてみて下さい!なお、損保会社同士であれば問題なく引き継げます!
自動車保険の団体割引は家族(別居の未婚の子も含む)も対象
自動車保険の団体割引は、勤務している本人だけでなく、その家族(別居の子も)も対象です。
なお、保険契約者、記名被保険者及び車の所有者については、基本的に以下の条件を満たす必要が有ります。
- 保険契約者・・・勤務している本人
- 記名被保険者及び車の所有者・・・団体割引の対象者
退職後も継続して団体割引を利用できる場合も有る
自動車保険の団体割引は、基本的に現時点で勤務している人が対象です。
そのため、退職後は団体契約から一般契約に切り替えるのが一般的です。ただ、企業などによっては退職後も団体契約が可能な場合が有ります。
退職者団体扱制度などによって運用されていると思うので、確認するようにして下さい。
なお、退職者の方が継続して団体契約を結ぶ場合は、保険料の支払方法が「一括のみ」となる場合が多いので、注意が必要です。
また、分割払いの契約期間中に退職する場合は、残りの期間に相当する保険料を一括で支払う事になる点も併せて注意して下さいね。
ネットで更新手続が可能な事も有る
自動車保険の団体契約は、基本的に代理店窓口や電話などでの更新手続となりますが、団体によっては”インターネットによる手続き”が行える場合が有ります。
ネットから手続きを行えるなら、わざわざ必要事項を手書きする必要もないので、かなり更新手続きが簡単になります。
ただし、ダイレクト型の自動車保険のようなインターネット割引は有りません。
自動車保険の団体契約を解約する場合の保険料の取り扱い
自動車保険の団体契約を契約途中で解約する場合、支払方法によって、それ以後の保険料の取り扱いは以下のようになります。
- 一括払い・・・未経過期間に相当する保険料の返還
- 分割払い・・・返還無し
なお、分割払いの場合、給料から保険料が天引きされる時期が2、3ヶ月ほどズレが有るので、解約後もそのズレた期間分給料から天引きされる事になります。
解約の手続きは完了しているので、安心して下さい。
誰でも「大口団体割引」を受けられる訳では無い
大企業であれば、ほとんどの会社にこの制度が有ると思いますが、中小企業では「大口団体割引」制度が無い可能性の方が高いです。
「大口」という言葉が付いているように、一定数以上の契約が見込めないなら、保険会社もわざわざ割引してあげようなんて思いませんからね。
しかし、中小企業単独で団体契約が出来なくても、ご自身が働いている中小企業が加盟している組合で、団体契約を取り扱っている場合も有ります。
私も以前勤めていた会社単独では有りませんでしたが、所属組合単位で15%の大口団体割引を受ける事が出来ました(ただ、通販型の方が安かったので加入はしませんでしたが・・・)。
ですので、とりあえず企業の総務担当者などに「自動車保険の団体割引の制度は有りますか?」と問い合わせてみると良いでしょう。
問い合わせるだけならタダですからね!
【注意】毎年、割引率が変化する可能性がある
自動車保険の団体割引の割引率は、従業員数だけでなく、団体契約で加入している人の損害率による影響も受けます。
損害率とは、保険会社の保険料収入に占める事故によって支払った保険金の割合の事です。
事故の多い団体ほど損害率が高くなるので、保険会社としては一定の利益を得る為に割引率の見直しをおこなって、前年よりも低い割引率を設定する事が有ります。
そのため、自動車保険の団体割引を利用する場合でも、毎年、ダイレクト型の自動車保険を含めた比較・検討を行うようにしましょう。
まとめ~割引率に惑わされずに比較する事が大切~
大口団体割引の割引率は、大手の企業だと20%や30%となる事も多いです。
かなりお得だと感じる人もいるでしょう。
しかし、割引前の保険料が高い点には注意が必要です。
そのため、利用可能な大口団体割引の保険料と一般契約での保険料(特にダイレクト型の自動車保険)を比較した方が良いでしょう。
ちなみに、三井住友海上や損保ジャパンなどの代理店型の自動車保険から選びたいのであれば、大口団体割引を利用した方が間違いなくお得です。
契約内容や補償内容は同じですから、是非利用するようにして下さいね。
FP・専門家からのコメント
菊地 季美子(Kimiko Kikuchi)
菊池 季美子 (Kimiko Kikuchi) 「 MoneQ 」
生命保険会社2社に合計8年の在籍後、損害保険へ転向。3年の営業店事務経験ののち損害保険代理店に転職、自動車保険・火災保険の設計を担当し、相談件数は在籍3年で800件を超える。現在はフリーランスでFP資格試験の講師、セミナー、執筆活動を行っている。
<保有資格> FP技能士3級・2級、日本FP協会認定AFP、トータルライフコンサルタント、損害保険プランナー
「コメント」
上記の解説の通り、団体割引よりもダイレクト型のほうが割安です。ダイレクト型が安い理由は、パンフレットなどの資料にかかる経費や、更新手続き・事故受付の人件費を削減しているためです。よって、補償内容を自分で情報収集する、更新手続きを失念しないようにするなど、自己管理が求められます。
代理店型は保険料が高い分、パンフレット等の情報提供や手続きのきめ細かいサポートを受けられます。自己管理が不安な人には代理店型がおすすめですし、団体割引がある職域の代理店なら、他の保険契約(火災保険や生命保険など)も一丸管理してもらえる利便性もあります。
団体割引の注意点としては下記が挙げられます。
- 割引率を下げないために、事故が多く等級が低い人は更新を断られる場合がある
- 3年などの長期契約はできない場合が多い
- 保険料支払方法が給与天引きだけの場合が多い
つまり自動車保険は、補償内容だけでなく、どのようなサポートを受けたいかが落としどころであると言えます。
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