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自動車の任意保険は、強制保険である自賠責保険の対に位置する保険です。
具体的に言うと、自賠責保険が対人賠償にしか使えない保険であるのに対して、任意保険は対人賠償に加えて、対物賠償や自己及び同乗者のケガ、自車両の修理代までをも、保険プランに応じて補償してくれます。
記事:自賠責保険で支払われる保険金額でも書いていますが、現在は賠償金額の高額化が進んでおりますので、自賠責保険だけだと、特に対人賠償において不安な点が多く、自賠責だけでなく任意保険にも加入することは、ドライバーにとって義務とも言えるでしょう。
以下、任意保険と自賠責保険との違いも見つつ、任意保険の特徴を紹介していきます。
任意保険と自賠責保険の違いについて
冒頭でも少し説明しましたが、ここではもう少し掘り下げて「任意保険」と「自賠責保険」の違いについて紹介したいと思います。
①「任意」か「義務」‐自賠責保険に未加入の場合は罰則も
任意保険はあくまで”任意”なので、加入・未加入については個人の判断に委ねられています。たとえ加入しなかったとしても罰則などは有りません。
注:ただし、自賠責保険だけではご自身や同乗者、相手方への補償(賠償金額など)が不足するケースが多いです。そのため、任意保険への加入を強くお勧めします。
一方、自賠責保険は”強制保険”とも呼ばれ、「自動車損害賠償補償法第5条」において加入が義務付けられています。仮に自賠責保険に加入せずに車を運転した場合は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、及び行政処分として6点の罰則を受けます。
②補償範囲の違いは歴然
任意保険と自賠責保険では補償範囲に歴然とした差が有ります。以下の表を見て下さい。
* 契約内容によっては補償されない場合が有ります。例えば、車両保険を付帯しなければ車の補償は受けられません。
任意保険は、基本的に相手方・ご自身の人・物に発生した損害を補償してくれます。一方、自賠責保険は相手方の人に発生した損害のみが補償範囲となっています。しかもかなり低い限度額が設定されています。
例えば、頻繁に起こる自損事故の場合、自賠責保険だけではご自身の怪我や壊した物、車の修理費用などは一切補償されません。
なお、自損事故でも搭乗者が受けた損害については自賠責保険で補償されます。
この事からも自賠責保険で補償されない範囲をカバーする為に任意保険に加入しておいた方が良いでしょう。
ちなみに、任意保険には示談代行サービスやロードサービス、契約者限定の優待サービスなどの付帯サービスが付いています(自賠責保険にこうした付帯サービスは有りません)。
③補償金額の違い
任意保険と自賠責保険の補償金額の違いは以下の通りです(対人賠償に関して)。
任意保険 | 自賠責保険 | |
---|---|---|
限度額 | 無制限 | 傷害:120万円 後遺障害:4,000万円 死亡:3,000万円 |
人身事故で相手に重症を負わせてしまうと、自賠責保険の120万円だけでカバーする事は出来ません。また、重い後遺障害を負わせてしまったり、死亡させてしまった場合には損害賠償金が1億円近くになる事も有ります。
やはり、限度額が無制限の任意保険に加入しておいた方が良いと言えますね。
④保険料の違いについて
任意保険の保険料は、契約する保険会社や契約者の条件(年齢・家族構成・免許の色など)、契約車両(車種・グレード)などによって異なります。
そのため、一概に年間いくらの保険料になるかは断言出来ません。ただし各社の見積を取る事は可能です。以下の記事では、前提条件を設けて保険料の見積を取っているので平均相場などを知りたい人は参考にして下さい。
自動車保険の平均相場はいくら?20代・30代・40代と年代別に見積もってみた!
また、ご自身の条件及び契約車両の任意保険料を調べたい人は「自動車保険の一括見積」を利用して下さい。各保険会社の保険料を知る事が出来ます。
一方、自賠責保険の保険料は、普通車や軽自動車などの車種別に設定されています。そのため、任意保険のように保険会社や契約者などによって保険料が変化する事は有りません。
ちなみに、2017年4月1日から自賠責保険料の値下げが行われます。普通車と軽自動車の最新の保険料を以下に掲載しておくので参考にして下さい。詳細については「自賠責保険料の金額早見表!2020年度&2019年度版」をご覧ください。
車種 | 24ヶ月 | 36ヶ月 |
---|---|---|
普通車 | 25,830円 | 35,950円 |
軽自動車 | 25,070円 | 34,820円 |
任意保険とは?主な補償内容について
さて、自動車の任意保険について話をしていきましょう。
ここまでの話からも分かるように、任意保険は対人や対物、自身の怪我や車などを補償してくれる保険です。その主な補償内容は以下の通りです。
- ①対人賠償保険
- ②対物賠償保険
- ③人身傷害補償保険
- ④搭乗者傷害保険
- ⑤車両保険
- ⑥無保険車傷害保険
- ⑦自損事故保険
これらの補償の中から必要な物を組み合わせて、自分にピッタリな保険を作りあげる事が出来ます。
なお、基本的に「①対人賠償保険」と「②対物賠償保険」を軸に補償を組み立てていく事になります。また、ほとんどの保険会社では「⑥無保険車傷害保険」と「⑦自損事故保険」が自動付帯されています。
上記の任意保険の主な補償内容について、簡単に解説して行きたいと思います。
①対人賠償保険
対人賠償保険は、その名の通り、人を死傷させた場合に支払われる保険の事を言います。
「自賠責保険」も対人賠償保険ですが、自賠責保険は「死亡で最大3,000万円、重度の後遺障害の場合で最大4,000万円、傷害の場合は最大120万円」までしか補償されないので、これだけでは、少し心もとないです。
この自賠責保険だけでは賄いきれない部分を補償してくれるのが、任意保険の対人賠償保険です。つまり自賠責保険の上積み保険だと考えれば、分かりやすいです。
②対物賠償保険
自動車を運転していて、衝突してしまった車や車に積まれていた荷物を壊してしまった場合に補償される保険。あるいは店舗に突っ込んでしまって、お店が休業せざるを得なくなった時の休業損害の補償にも使えます。(もちろん、店舗の修理代なども含む)
過去には「3億円規模の賠償命令」が出されたことも有るため、保険料はケチらずに「無制限補償」にしておきたい保険です。
③人身傷害補償保険
「自賠責保険・対人賠償保険・対物賠償保険」が、相手方のケガや物の補償に使われる保険で有るのに対して、人身傷害補償保険は加入者本人の補償に使われる保険です。
実損てん補型自動車保険とも呼ばれており、「加入者に過失が有ったとしても、過失の有無に関係なく保険金が満額支払われる」という意味で、非常に画期的な保険です。(但し、支払われる保険金は裁判基準ではなく、加入保険会社の算定基準に基づきます。)
また、人身傷害補償保険の良い所は被保険者本人だけでなく、その家族、具体的には【①配偶者②加入者と配偶者の同居の親族③別居の未婚の子④親族以外にその場に同乗していた他人】までをも補償してくれる所に有ります。
更に、自分が歩行している時に自動車事故に巻き込まれた場合にも、補償してくれます。
但し、この場合④の他人は補償されません。また、歩行中の自動車事故を補償してくれない人身傷害保険も有るので、保険プランを良くチェックしてみて下さい。
④搭乗者傷害保険
傷害保険と書いてある事から分かるように、車を運転している本人または一緒に車に載っていた同乗者が怪我をした場合に、保険が支払われます。特徴として保険金支払が【定額制】であることが挙げられます。
また、その他の対人賠償保険や人身傷害補償保険、無保険車傷害保険とは関係なく、定額の保険金が支払われることも特徴です。更に言えば、健康保険や労災保険とも重複しません。
⑤車両保険
事故や盗難などで、自分の車が壊れて修理等が必要になった場合に支払われる保険。
通常タイプとエコノミータイプに分かれるほか(呼び方は任意保険会社によって変わります。)、免責金額の有無・多寡によって保険金額が大きく変わります。
⑥無保険車傷害保険
事故の相手方が任意保険に加入していない場合に利用される保険。人身傷害補償保険と似ていますが、こちらは被害者の過失を考慮します。詳細は下記でチェックして下さい。
⑦自損事故保険
名前の通り、相手方のいない事故を起こした場合に補償してくれる保険です。対人保険や自賠責保険はいずれも相手が有っての保険ですが、こちらは相手がいなくても補償されます。但し、故意で自損事故を起こしても、当然保険金は出ません。
さらに特約を付帯して補償を手厚く出来る
自動車の任意保険には、主な補償内容とは別に特約が存在します。この特約を付帯する事で主な補償内容では補償されない範囲まで自動車保険が適用されるようになり、より手厚い自動車保険を作りあげる事が出来ます。
なお、特約を付帯すればその分保険料は高くなります。必要な特約を見定めて追加するようにしましょう。
■主な特約
- 個人賠償責任特約・・・日常生活において他人に怪我を負わせたり、他人の物を壊してしまった場合に発生する損害賠償責任を補償してくれる特約
- 弁護士費用特約・・・自動車事故の損害賠償請求や示談をする際の弁護士費用を補償してくれる特約
- ファミリーバイク特約・・・125㏄以下のバイクで事故を起こした場合に相手方への損害賠償を補償してくれる特約(自身の怪我の補償も含まれるタイプも有ります)
- 自転車事故補償特約・・・自転車による事故によって怪我をした場合に補償してくれる特約(相手方への損害賠償を補償するタイプも有ります)
- 対物超過修理費用補償特約・・・相手方の車の修理費用と時価との差額を補償してくれる特約(修理費用が時価を超えた場合)
ここでは上記5つの特約のみを紹介しましたが、その他にも様々な特約が有ります。それらの特約については下記記事にまとめているので、気になる方は参考にして下さい。
注:特約を付帯する場合は、所有している他の車の自動車保険や自動車保険以外の保険との補償の重複に注意して下さい。
まとめ
任意保険と自賠責保険の違いからも分かるように、自賠責保険だけでは万が一の事故の際に十分な補償(相手方への賠償も含む)を受ける事が出来ません。あくまで任意ですが、それでも任意保険の加入は検討した方が良いでしょう。
そして任意保険に加入する際は、今回紹介した主な補償内容と特約を上手く組み合わせて、過不足のない補償を受けられるように契約して下さいね。どんな補償内容が今の自分・家族にとって必要なのか?をしっかりと考えて、自分に最適な保険プランを作りあげて行きましょう。
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