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「エンジンオイルを交換しないとどうなる?交換時期の目安も紹介」の記事で書いたように、エンジンオイルは定期的に交換する必要が有ります。
いざエンジンオイルを交換しようとして、カー用品店に足を運ぶと商品棚にエンジンオイルが大量に陳列されています。しかも同じメーカーのエンジンオイルでも何種類も有ります。
どの商品も同じように見えますが、よく見るとエンジンオイル缶に記載されている「数字」や「ローマ字」などが異なります。この文字が表しているのが「エンジンオイルの規格」なんです。このエンジンオイルの規格を基準にエンジンオイル選びをしていく事になるわけですね。
そこで今回は知識が無ければただの暗号でしか無いエンジンオイル規格について紹介していきたいと思います。
エンジンオイルの規格
エンジンオイルの規格は2種類有り、「品質」と「粘度」を表しています。
(出典:yahooショッピング)
例えば、上記画像の「API SN」と「ILSAC GF-5」の部分が品質の規格を表していて、「SAE 0W-20」の部分が粘度の規格を表しています。
なお、「全合成油(化学合成油)」はエンジンオイルの製法を表しています。製法の分類については後述します。
品質による規格
「API規格」と「ILSAC規格」と「ACEA規格」はエンジンオイルの品質を表す規格です。
3つの規格が有りますが、日本ではAPI規格とILSAC規格が主流です。ACEA規格は主にヨーロッパで用いられています。
「API規格」と「ILSAC規格」
ILSAC規格はAPI規格を基にSH以上のグレードに対して品質が定められています。そのため、下記表のように同じ行のグレード(例:GF-1とSH)は同等の品質を表していています。
API規格 | ILSAC規格 | 品質 |
---|---|---|
SA | - | 低品質 |
SB | - | ⇩ |
SC | - | ⇩ |
SD | - | ⇩ |
SE | - | ⇩ |
SF | - | ⇩ |
SG | - | ⇩ |
SH | GF-1 | ⇩ |
SJ | GF-2 | ⇩ |
SL | GF-3 | ⇩ |
SM | GF-4 | ⇩ |
SN | GF-5 | 高品質 |
上記の表はガソリンエンジン用のエンジンオイルのグレードを表したものです。なお、アメリカ石油協会によるとSAからSHまでの規格は廃止されています。
「SN」又は「GF-5」が高品質のエンジンオイル
現在、流通しているエンジンオイルのうち「SN」又は「GF-5」が最高品質のエンジンオイルです。品質が高いほど汚れや酸化などに対しての耐久性が有り、エンジンオイルとしての性能が高くなります。
ACEA規格
ACEA規格は「A/B」「C」「E」の3つのカテゴリーに分類され、それぞれにグレードが設定されています。
参考:ACEA(欧州自動車工業会)(英文PDFの5・6ページ目)
■「A/B」カテゴリー(ガソリンエンジン・軽荷重ディーゼルエンジン用)
- A1/B1・・・低摩擦・省燃費オイル
- A3/B3・・・高性能エンジン用ロングドレインオイル
- A4/B4・・・高性能エンジン及び直噴者式ディーゼルエンジン用ロングドレインオイル
- A5/B5・・・高性能エンジン用省燃費ロングドレインオイル
ロングドレインオイルとは、交換期間が長いエンジンオイルを指します。
■「C」カテゴリー(排ガス対策装置装着車用)
- C1・・・低摩擦、低粘度の低リン低灰型省燃費エンジンオイル
- C2・・・低摩擦、低粘度の省燃費エンジンオイル
- C3・・・通常の粘度グレードの省燃費エンジンオイル
- C4・・・通常の粘度グレードの低リン低灰型省燃費エンジンオイル
■「E」カテゴリー(高過重ディーゼルエンジン用)
- E4・・・欧州排ガス規制ユーロⅤの排出要件を満たし、DPF装着車などは除く高性能ディーゼルエンジン用オイル
- E6・・・欧州排ガス規制ユーロⅥの排出要件を満たし、DPF装着車などを含む高性能ディーゼルエンジン用オイル(使用燃料は低硫黄ディーゼル燃料)
- E7・・・欧州排ガス規制ユーロⅤの排出要件を満たし、DPF装着車などは除く高性能ディーゼルエンジン用シリンダ摩耗対策オイル
- E9・・・欧州排ガス規制ユーロⅥの排出要件を満たし、DPF装着車などを含む高性能ディーゼルエンジン用シリンダ摩耗対策オイル(使用燃料は低硫黄ディーゼル燃料)
ディーゼルエンジン用のエンジンオイル規格
API規格でもディーゼルエンジン用のエンジンオイルの分類は行われています。API規格におけるディーゼルエンジンオイルの分類は以下の通りです。
API規格 | 品質 |
---|---|
CA | 低品質 |
CB | ⇩ |
CC | ⇩ |
CD | ⇩ |
CE | ⇩ |
CF | ⇩ |
CF-4 | ⇩ |
CG-4 | ⇩ |
CH-4 | ⇩ |
CI-4 | ⇩ |
CJ-4 | 高品質 |
なお、アメリカ石油協会によるとCA~CG-4までの規格は廃止されています。
JASO規格
ディーゼルエンジン用のエンジンオイル規格には、日本独自の規格が存在します。それが「JASO規格」です。日本国内の環境規制が厳しくなった事を受けて、2000年に設定されました。
JASO規格には下記3つのオイル規格が有ります。
- DH-1・・・日本の環境基準(長期規制)を満たしたディーゼルエンジン用オイル
- DL-1・・・日本の環境基準(新短期規制以降)を満たし、DPF装着車などのディーゼルエンジン用オイル(主に乗用車向け)
- DH-2・・・日本の環境基準(新短期規制以降)を満たし、DPF装着車などのディーゼルエンジン用オイル(主に大型トラック向け)
粘度による規格
次は「粘度による規格」です。エンジンオイル選びにおいては品質規格よりも粘度規格の方が重要とされています。なぜなら、車種(エンジン)や使用環境などに合った粘度のエンジンオイルを使用しないと、エンジンの出力低下やエンジントラブルに繋がってしまうからです。
さて、粘度の規格がどのように表示されているかと言うと、さきほどのエンジンオイル缶の画像のように「SAE 0W-20」などと表示されています。
「SAE」とはSAE規格の事でアメリカ自動車技術協会が定めた規格です。そして「0W-20」の部分がエンジンオイルの粘度を表していて、前半部分が低温時の粘度、後半部分が高温時の粘度です(「W」はWINTERの頭文字)。
寒さ | 低温時の粘度 | 高温時の粘度 | 暑さ |
---|---|---|---|
強い | 0W | 60 | 強い |
⇩ | 5W | 50 | ⇩ |
⇩ | 10W | 40 | ⇩ |
⇩ | 15W | 30 | ⇩ |
弱い | 20W | 20 | 弱い |
低温時と高温時の粘度の組み合わせは様々有ります。「5W-30」や「10w-60」などのようにです。
選び方は前述したように車の使用環境等に合ったエンジンオイルを選ぶのですが、どのエンジンオイル(粘度規格)を購入すれば良いのかが分かりませんよね。
そこで利用して欲しいのが取扱説明書です。取扱説明書には自動車メーカー推奨のエンジンオイルの粘度が記載されています。メーカー推奨のエンジンオイルを選んでおけば基本的に問題無いでしょう。
ただし、取扱説明書に記載されている粘度は新品のエンジンを想定した数値となっています。そのため、ある程度走行した車にはメーカー推奨の粘度よりもやや粘度の高いエンジンオイルを選ぶ方が良いかもしれません。例えば、メーカー推奨の粘度数値が「10W-30」なら「10W-40」を選ぶといった感じです。
製法による違いも有る
どのエンジンオイルも「ベースオイル」に添加剤などを加えて作られています。このベースオイルの製法にも違いが有ります。製法は以下の3つです。
- 化学合成油・・・ナフサなどを原料として化学合成させた高純度なエンジンオイル
- 部分合成油・・・鉱物油(7・8割)と化学合成油(2・3割)を混合したエンジンオイル
- 鉱物油・・・原油を蒸留して精製されたエンジンオイル
化学合成油のエンジンオイルは高性能・高品質ですが、その分価格が高いという特徴が有ります。一方、鉱物油のエンジンオイルは低価格で最も普及しています。ただし、劣化するのが早いため短いサイクルでの交換が必要になります。部分合成油のエンジンオイルは品質・価格ともにその他の中間に位置しています。
まとめ
今回はエンジンオイルの「品質」と「粘度」の規格及び「製法」について紹介しました。エンジンオイルを選ぶ際に最も重要なのは「粘度」という事でしたね。そして粘度の選び方は基本的にメーカー推奨の物を選ぶようにして下さいね。
「高品質・高性能なエンジンオイルが良い」というわけでは有りませんので注意して下さい。車種・使用環境等に合ったエンジンオイルを選んで愛車を大切にして下さいね。
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