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道路交通法では、いろいろなルールが規定されています。
トラックやトレーラーなど荷物を積載して運搬する場合、覚えておかないといけないのは積載物の重量制限超過ですね。
法律の中で、最大積載量が規定されています。
もしこれを超えて公道を走行した場合、違反行為で罰則の対象になりますよ。
またそれだけでなく車のコントロールが通常時よりも難しくなり、危険な運転となるので交通事故などのリスクも高まります。
道路交通法に基づく積載物の制限とは?
公道でドライブするためには、道路交通法をはじめとした関連法規を遵守する必要があります。
このことはどのドライバーでも頭に入っていますよね。
道路交通法の中には、様々なルールが規定されているのですが、その中の一つに積載物の制限があります。
もしこのルールを超えた量を車の中に積載した場合、重量制限超過で道路交通法違反になってしまいますよ。
まず重量については、自動車検査証や保安基準適合表彰、軽自動車届け出済み証に記載されている最大積載重量が上限です。
これを超えた時点で、重量制限超過になってしまいますよ。
また積載物の規定は重さだけでなく、長さも規定されています。
積載物の長さは、車両の全長×1.1を上限とします。
ただし大型自動二輪車・普通自動二輪車については、乗車装置もしくは積載装置の長さに0.3メートルを加えた長さが上限となりますよ。
幅については、車幅を上限とします。
こちらも大型自動二輪車・普通自動二輪車には積載装置の左右から0.15メートルを超えるところまでは合法となっていますよ。
積載物の高さについても規定が見られますね。
高さの上限=3.8メートル-車両の積載する場所の高さとなります。
ただし大型自動二輪車・普通自動二輪車については2メートル・三輪の普通自動車、そのほかの普通自動車の場合2.5メートルが上限となりますよ。
このようなルールを守ったうえで、荷物を載せて運転しましょうね。
積載物の重量制限超過になるとどのような罰則になるの?
上で紹介したルールを守らなかった場合、積載物の重量制限超過といって道路交通法違反となりますね。
この時のペナルティですが、車種やどの程度超過したかによって変わってきます。
通常は5割未満、5~10割、10割以上で分類されます。
・5割未満1点
・5~10割2点
・10割以上3点
このほかにペナルティとして反則金が付きます。
これも積載量の上限の5割未満・5~10割・10割以上、さらには普通車・二輪車・原付によっても金額が変わってきます。
積載物重量制限超過の罰金額 | ||||
---|---|---|---|---|
原付 | 二輪車 | 普通車 | 大型車 | |
5割未満 | 1万5000円 | 2万円 | 2万5000円 | 3万円 |
5~10割 | 2万円 | 2万5000円 | 3万円 | 4万円 |
10割以上 | 2万5000円 | 3万円 | 3万5000円 | 6か月以下の懲役もしくは10万円以下の罰金 |
このように積載物の重量制限超過は、決して軽い罪ではないことを理解しておきましょう。
積載物の重量制限超過を行った運送業者には事業者にもペナルティ
積載物の重量制限超過を行った場合、そのドライバーはもちろんペナルティの対象です。
しかしそのドライバーが運送業など、ビジネスで行った場合には事業者に対するペナルティも用意されています。
どのような罰則が科せられるかですが、過去に積載物の重量制限超過でペナルティをもらった経験があるかどうかで変わってきます。
初犯の場合は違反車両の停止処分だけで済むことが多いですね。
ただし今回が積載物の重量制限超過で2回以上ペナルティをもらった場合、さらに厳しい罰則が科せられます。
車両の停止処分はもちろんのこと、行政指導などが加わります。
違反行為が悪質な場合は事業許可の取り消しということも考えられます。
車両停止期間、ケースバイケースですが、積載物の重量制限超過の程度と違反回数によります。
車両停止期間の相場 | |||
---|---|---|---|
5割未満 | 5~10割 | 10割以上 | |
初回 | 10日 | 20日 | 30日 |
2回目 | 30日 | 50日 | 80日 |
3回目 | 80日 | 130日 | 300日 |
4回目 | 200日 | 330日 | 500日 |
事業所に対するペナルティ
ちなみに事業所に対する処分内容ですが、点数で決められます。
この点数は車両停止日数10日につき1点が加点される仕組みとなっています。
この点数は3年間蓄積されていき、トータルポイントが一定の点数を超えてくると行政処分の対象となります。
事業所に対するペナルティ | |
---|---|
20点以上 | 違反事業者名の公表及び運輸支局などからの指導 |
50点以上 | 営業所の全部もしくは一部の停止処分 |
80点以上 | 事業許可の取り消し処分 |
例えば今回4回目の積載物の重量制限超過で、その量が10割以上であれば、1発で50点に達してしまいます。
このように何度も繰り返し積載物の重量制限超過を行っていると、行政処分も頻繁に受けることになります。
依頼者にも罰則有り
ここまでは積載物の重量制限超過を行った運送会社に関する罰則でした。
しかしもう一つ、荷主、すなわち荷物を運ぶように依頼したほうにも罰則が科せられる可能性があります。
それには条件があって、積載物の重量制限超過であることを知りながら積載の依頼や要請をした場合です。
初回の場合、積載物の重量制限超過を意図的に依頼した場合には、警察署長の方から再発防止命令が出ます。
再発防止命令を受けた後で積載物の重量制限超過を依頼した場合には、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
100万円の罰金が科せられる可能性もある
大型車の場合先ほども紹介したように、10割以上の積載物の重量制限超過であれば、10万円以下の罰金となります。
これ以上の基準がないですから、「どうせ同じ罰金であれば、2倍3倍の積載物の重量制限超過をしてしまえ」という事業者も出てくるかもしれません。
しかし、あまりに積載物の重量制限超過のレベルがひどい場合には10万円の罰金ではすまない可能性もでてきます。
国土交通省では、2015年2月23日から基準の2倍以上の悪質な積載物の重量制限超過を行った場合、即時告発の対象となるように一部法令の改正を実施しました。
即時告発が認められた場合、100万円以下の罰金刑が科せられます。
積載物の重量制限超過は危険
制動距離が長くなる
積載物がある場合、車両の重量が増えていることになるので、制動距離が延びてしまいます。
制動距離とはブレーキを踏んで、車両が実際に停止するまでの距離のことです。
「車は急に止まれない」という言葉があるように、急ブレーキをかけてもその場でピタッと止まることはできません。
制動距離は積載物が多ければ多いほど、長くなる傾向が見られます。
つまり積載物の重量制限超過の程度がひどいと、それだけ制動距離が伸びてしまいます。
制動距離が長くなるほど、何か障害物があってブレーキをかけても止まりきれなくなるので、衝突の危険性が高まります。
また、衝突時の衝撃も大きくなります。
バランスを崩しやすくなる
積載物の重量制限超過をすればするほどバランスを崩しやすくなる傾向があります。
積載物の重量制限超過をすると、どうしても荷台部分に荷物を高く積み上げないといけなくなって、左右のバランスを崩しやすくなってしまうわけですね。
このため、いわゆるお尻を振られるような状態が起こりやすくなります。
その結果、コーナリングの際に対向車線にはみ出しやすくなります。
急カーブや右左折の際に、積載物が多すぎると車両が耐え切れなくなって横転の危険性も高まります。
フェード現象
もうひとつ、無視できないのはフェード現象です。
フェード現象はブレーキが過熱してしまって、止まらなくなってしまう症状のことです。
下り坂を通行している場合、必要以上に加速しないようにブレーキを頻繁にかけながら走行することになります。
しかし、積載量が多いとどうしてもブレーキの負担が大きくなってしまうのです。
車両の重量が多ければ多いほどブレーキが熱を発しやすくなり、フェード現象が起こりやすい状況となってしまいます。
このように積載物の重量制限超過をすると、運転の安全性を担保できなくなってしまうのです。
だからこそ積載量の上限を守って運転を心がけることが求められるわけですね。
積載物の重量制限超過による事故の実例
2004年岐阜県でトラックと乗用車が正面衝突する交通事故が発生しました。
トラックの乗員2人と乗用車に乗っていた一家5人全員の7名が死亡するという痛ましい事故でした。
なぜこの事故が発生したのか、調査の結果トラック側に問題がありました。
トラックはこの時積載物の重量制限超過の状態で、その結果タイヤがパンクしてしまったのです。
積載物の重量制限超過ですが、実に法定の1.5倍にも達していました。
タイヤの空気圧が不足していたこともパンクの原因に寄与したといわれています。
パンクしたことでトラックは車両のコントロールが不可能な状態になってしまいました。
県警ではトラックに積載物の重量制限超過を許可して運行させたということで、運送会社の社長を書類送検しました。
このように積載物の重量制限超過をさせた事業所はきちんと罰せられるという実例です。
もう一つの事例として、2006年静岡県の国道で発生した事故を紹介します。
大型トレーラーが横転したことで、ちょうどその近くを歩いていた20歳の若者がその下敷きになってしまいました。
病院に直ちに運ばれましたが、死亡が確認されました。
これもまた、全く関係のない人が犠牲になった事故でした。
この事故原因ですが、まずは積載物の重量制限超過がありました。
加えて交差点を曲がる際に時速15㎞以下で走行しなければならなかったのですが、このドライバーは倍以上の速度でカーブしようとしたことが判明しました。
その結果、積載物の重量制限超過のトレーラーのドライバーは業務上過失致死罪で逮捕されました。
裁判の結果、「積載物の重量制限超過をしたトレーラーが減速せずに曲がれば横転の危険性のあることは十分予見できたはず」「基本的な注意義務を怠ったことで一人の命を奪った責任は重い」ということで、このドライバーには2年6か月の懲役という実刑が下りました。
このように積載物の重量制限超過で、道路交通法を守らないと取り返しのつかない大きな事故を引き起こす可能性は十分あります。
そして懲役刑になって、仕事も失い、自分の人生をも棒に振ってしまう可能性のあることは頭に入れてもいいかもしれませんよ。
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