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麻薬等運転は道路交通法によって禁止されている違反行為
道路交通法によって禁止されている交通違反行為にはいろいろな種類があり、その数は100項目以上もあります。
その中でも特に危険行為とみなされているのが麻薬等運転です。
これは違反名から見ても想像しやすいですが、一言で言うなら麻薬などの薬物を使用して自動車の運転をするという違反行為です。
道路交通法の違反行為の定義は麻薬等運転となっていますが、必ずしも麻薬のみが麻薬等運転の対象となるわけではなく、麻薬以外でもアヘンや覚せい剤、大麻、そのほか安全かつ冷静な運転ができない状態になってしまう薬物はすべて、麻薬等運転によって違反行為と認定されています。
麻薬等運転がどうしてダメなのか、理解できない大人はいないでしょう。
そもそも麻薬は違法薬物なので、運転しなくてもこうした違法薬物を使用すること自体が法律で禁止されていますよね。
しかし麻薬等運転が道路交通法によって禁止されているのは、こうした薬物が法律によって禁止されているからという理由だけではありません。
これらの薬物を使用すると、中枢神経が影響を受けてしまいます。
その結果、幻覚が見えたり幻聴が聞こえたり、また妄想が目の前に現れるなど、視覚的かつ聴覚的に安全運転できない状況を作り出してしまいます。
さらに、薬物の種類によっては神経がリラックスしてボンヤリしてしまい、ハンドルを握ると急な場合にブレーキが間に合わないなど、安全運転ができない状況になってしまうこともあります。
また、こうした薬物には、嘔吐や呼吸困難、悪寒などの症状が起こることもあるため、安全な運転ができないという理由から道路交通法では「麻薬等運転」として罰則の対象となっているわけですね。
麻薬等運転はどのぐらい減点されるの?
麻薬等運転は、道路交通法で違反行為と認定されている項目の中でも、かなり重度の違反です。
そのため、麻薬等運転の現行犯の場合には、点数としては35点が減点されることになります。
これは飲酒して運転をする酒酔い運転と同じレベルの違反行為となり、35点も減点されるので、これまで全く交通違反をしていなかったドライバーでも、麻薬等運転だとその場で一発免許取り消しとなってしまいます。
その場で免許取り消しの処分になるということは、そこから先はハンドルを握る事が出来なくなるわけですし、自宅までとりあえず帰って車を駐車場に入れてから先のことを考える、ということももちろんできません。
また、麻薬等運転によって35点減点されるというのは、ゴールド免許を持っている人や前歴がない人でも例外はありません。
ゴールド免許を持っている人でも、麻薬等運転なら一発免許取り消しとなってしまいます。
ちなみに免許取り消しになる点数は15点ですから、麻薬等運転がいかに悪質で重大な交通違反行為なのかが分かるでしょう。
麻薬等運転による免許取り消しとはどんな処分?
麻薬等運転によって一発免許取り消しの処分になると、これまで持っていた運転免許は失効となります。
免許取り消し期間は前歴や違反点数などによって決められていますが、免許取り消しの場合にはその期間が過ぎても、持っている免許書が再び有効になることはありません。
つまり、再び車の運転をしたい場合には、改めて教習所に通って運転免許を取得する必要があることになります。
麻薬等運転で免許取り消しの処分を受けた場合、免許を再取得できない欠落期間と呼ばれる期間が発生します。
3年~6年と期間は長いため、その間は自動車を持っていてもハンドルを握ることはもちろんできませんし、教習所に通って免許を取得する準備をする事もできません。
そうなると、これまでマイカーで通勤していた人にとっては、日常生活に大きな支障が出てしまいますし、ライフスタイルを変えることを余儀なくされることになるでしょう。
そうした不便な生活を強いられないためには、麻薬等運転のような悪質で重度な交通違反は絶対にしないように気を付けなければいけませんよね。
麻薬等運転による欠落期間は、ケースバイケースで決定されるわけではなく、前歴が何回あるかによって決められています。
前歴というのは免許停止レベルの思い罰則を受けた回数のことで、過去3年に何回の前歴があるかによって、麻薬等運転による免許取り消しの欠落期間が異なります。
例えば、過去3年以内に前歴がゼロの人は、欠落期間は3年間となるため、この期間を過ぎたら再び自動車教習所に通って運転免許を取得することが可能となります。
前歴が1回の場合には欠落期間は4年、前歴2回だと欠落期間は5年、そして前歴3回以上の場合には、欠落期間は6年間となります。
過去3年間の間に免許停止を3回以上も受けている人というのは、危険運転に対する反省の色が少ないとみなされるため、欠落期間も6年間と重くなっています。
麻薬等運転の罰則は免許取り消しだけではない
麻薬等運転をすると、点数が大きく減点されてその場で一発免許取り消しという重い罰則が科せられます。
しかし、罰則はそれだけではありません。
麻薬等運転の罰則は5年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰が適用されます。
麻薬等運転という違反行為の現行犯で捕まると、切られるキップの色は青ではなく赤キップとなりますよね。
青キップの場合には、反則金を払えば裁判にならずに済みますが、赤キップの場合には罰金を支払っても裁判にならずに済むということはなく、かならず裁判で提訴されることになる重たい違反行為なのです。
麻薬等運転でキップを切られると、赤キップを渡されて裁判となり、有罪は確定してしまいます。
有罪ということは前科がつくということでもあるため、今後の就職や転職などにはマイナスに影響してしまいますし、職種によっては二度とチャンスがなくなってしまう可能性もあるでしょう。
麻薬等運転の場合には、警察官が「何となく薬物を使っているような気がする」という理由で赤キップを切られるわけではなく、その場で現行犯逮捕され、警察署でどんな薬物をどのぐらい使用していたのかについても取り調べが行われることになりますよね。
その上で裁判に臨むことになるため、裁判で無罪になる可能性はほとんどないのです。
薬物を持っていることも違法
麻薬等運転における罰則は、道路交通法では「懲役5年以下または罰金100万円以下」と定められていますが、実際にはそれだけではありません。
麻薬などの薬物は、日本国内では所持しているだけでも違法行為に当たります。
また、そうした違法薬物を使用することもまた違法行為となってしまいます。
そのため、麻薬等運転で検挙されると道路交通法によって罰せられるだけではなく、刑法によっても罰則を受ける事になります。
具体的にどんな罰則が適用されるかというと、どんな薬物を使ったのかによって異なりますね。
例えば、覚せい剤を所持していたり使用して運転した場合には、刑法によって10年以下の懲役に処せられますし、麻薬やアヘンを使っていた場合には7年以下の懲役刑、大麻なら懲役5年以下となります。
これらの薬物は法律によって所持することも使用することも禁止されているものなので、持っているだけでも厳しい罰則を受ける事になりますし、使用して運転した場合には、使っている所を現行犯逮捕されなくても、体内に薬物が残っていることが検査によって明らかになれば、現行犯以外でも逮捕されてしまいます。
麻薬等運転というのは、使用しながら運転しているのはもちろんNGですが、運転する前に使用して薬物に影響を受けている状態で運転するという行為もNGとなりますよね。
合法ハーブも麻薬等運転
麻薬等運転は、法律によって禁止されている薬物のみが対象となるわけではありません。
使用することによって中枢神経に影響を与えるような薬物なら、合法のものでも対象となります。
脱法ハーブや合法ハーブなどを所持していたり使用していたり、使用した後に影響を受けた状態で運転していると、3年以下の懲役および300万円以下の罰金という罰則を受ける事になります。
シンナーやトルエンなどは、持っているだけでは道路交通法でも刑法でも罰則の対象とならない毒物です。
しかし使用している所を現行犯でつかまったり、使用した後に影響を受けている状態で運転をすれば、麻薬等運転として罰則を受ける事になります。
具体的な罰則ですが、シンナーやトルエンの場合には2年以下の懲役および100万円以下の罰金となります。
麻薬等運転と言っても、どのような薬物を使用しているか、または使用したのかによって、適用される罰則が大きく異なります。
そのため、麻薬等運転で検挙された場合には、使用中の現行犯逮捕でなくても、警察署に連行されて取り調べを受け、どのような薬物を使ったのかという点が詳しく検査されることになりますね。
同じ車に同乗しているだけでも同罪になる?
麻薬等運転や酒酔い運転など道路交通法によって違反行為と認定されている項目の中でも重度で悪質なものは、ハンドルを握っていたドライバーはもちろん厳しい罰則を受ける事になりますが、同じ自動車に乗っていた同乗者についても罰則の対象となります。
自分が運転していたわけではないから責任はない、という言い訳はできませんよね。
麻薬等運転の場合、実際に運転していたドライバーは、道路交通法によって罰則を受けるだけでなく、刑法によっても薬物を所持していたり使用したということで罰則を受ける事になります。
同乗者の場合には、ドライバーが麻薬等運転をしていることを止めなかったという点では幇助とみなされ、道路交通法によって罰則を受ける事になりますが、同乗者が薬物を所持していたり使用していたわけでなければ、刑法による罰則を受けたり行政処分が下されることはありません。
この点は、ドライバーと同乗さとで大きく異なる点となります。
麻薬等運転でも許容量はあるの?
道路交通法で禁止されている違法行為の中でも、酒酔い運転と麻薬等運転は減点が最大の悪質な違法行為です。
このうち、酒酔い運転の場合には何をどのぐらい飲んだかという点が問題になるわけではなくて、体内にアルコールがどのぐらい残っているかという点がポイントとなるため、警察は酒酔い運転ドライバーを見つけた場合には、その場でアルコール濃度を検査され、場合によっては現行犯逮捕となりますよね。
しかし麻薬等運転の場合には、血液中及び呼気の中に薬物がどのぐらい残っているかという点が大切なポイントになるわけではなく、使用して影響を受けている時点でアウトとなります。
場合によっては酒酔い運転ではないことを確認するために呼気検査を受ける事はありますが、反応がなければ麻薬等運転が疑われるために血液検査という流れになり、その結果、どんな種類の薬物を使っていたのかという点が判定されます。
医療麻薬は麻薬等運転の処罰対象にならないの?
使用することが禁止されている薬物の中には、医療麻薬のように疾病における痛みを軽減する目的で医師が処方してくれる薬物もあります。
ガン治療において有効な治療法がない場合には、緩和ケアとして痛みを出来るだけ少なくするための方法として医療麻薬やモルヒネなどの鎮痛剤が処方されることがあるでしょう。
こうした薬物は、処方されるときに自動車の運転をしないようにと指導を受けるため、積極的に運転をしようという人は少ないと考えられています。
しかし、最終的には患者さん自身が判断することになるという点で注意が必要ですね。
通常の場合には、麻薬を使用して自動車を運転し、警察に現行犯で捕まった場合には、麻薬等運転という点で交通違反行為に該当するため、道路交通法によって罰則を受ける事になります。
しかし麻薬を所持していたり使用したといっても、医療麻薬の場合には法律によって認められているため、刑法による処罰の対象にはならないと考えられています。
それでも麻薬を使った後に運転したということで、麻薬等運転として道路交通法による罰則を受ける対象になることは理解しておきましょう。
医療麻薬の所持や使用については刑法ではOKでも、医療麻薬のような薬物を使用して運転することは、危険極まりない行為であることに変わりはありませんし、万が一のときには他人を巻き込んで人身事故などの交通事故を起こしてしまうリスクも高くなってしまいます。
そのため、どのような目的で薬物を使用する場合でも、影響下にある時には絶対に自動車の運転はしないことを徹底することが大切ですね。
医療麻薬を使用して事故を起こしたら罰則はどうなるの?
医療麻薬やモルヒネなどは、医療目的で合法的に処方されている薬物です。
そのため、所持したり使用することに対して罰則を受ける事はありません。
しかし、こうした薬物によってドライバーが正常・安全・冷静に運転できない状態になった場合には、「正常に運転できない状態」に該当するため、速やかに運転をやめなければいけないという義務が生じます。
もしもこの義務を無視して無理に運転を続けた場合、交通事故を起こしてしまう確率は高くなってしまうでしょう。
そして、万が一にも交通事故を起こした場合には、正常な運転ができない状態なのに運転をしたという点において、麻薬等運転は適用されなくても道路交通法に基づいた罰則を受ける事になりますね。
麻薬等運転で禁止されているのは、一般的な社会人なら普段所持することも使用することもない薬物がリストアップされています。
しかし、そうした薬物ではなくドラッグストアで購入できるような医薬品の中にも、飲むと眠くなってしまうようなものはたくさんあります。
違法薬物ではないから飲んで運転してもOKとは考えず、もしも眠くなる可能性がある医薬品なら、飲んだら運転しないことを徹底する必要がありますし、万が一眠くなってしまったら速やかに運転を辞めることも必要ですよね。
ドラッグストアで購入した医薬品を飲んで眠くなり、それが原因で交通事故を起こしてしまった場合には、麻薬等運転によって罰則や罰金が発生するわけではありませんが、道路交通法第117条と118条の「正常な運転ができない状態」という項目に違反したと解釈され、罰則や罰金が科せられることになります。
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