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これまでの交通事故における損害賠償の最高金額は、いくらぐらいか知っていますか?
なんと5億2,853万円にもなります。
事例としては、平成23年に41歳の男性開業医が死亡した人身事故における賠償額です。
死亡事故だけではなく、被害者が重い後遺障害を負うようなケースでも、1億円を優に超える高額賠償命令が下される事例がいくつも有ります。
また、賠償額が少額になると思われがちな物損事故・自転車事故においても、1億円を超える又はそれに近い高額な賠償命令が下されています。
このような高額賠償の事例は、自動車保険や自転車特約、自転車保険に加入するにあたって、非常に参考になる情報です。
そこで今回は「人身事故」「物損事故」「自転車事故」の3つに分けて、それぞれの高額賠償事例をランキングによって紹介したいと思います。
加害者・被害者両方の立場で、言い換えると賠償する側・補償される側の立場でデータを見て下さいね。
人身事故の高額賠償事例ランキング
損害保険料率算出機構によると、人身事故の高額賠償事例は以下の通りとなっています。
認定総損害額 (万円) | 判決年度 | 年齢性別 | 被害者職業 | 被害様態 |
---|---|---|---|---|
52,853 | 平成23年 | 男41歳 | 眼科開業医 | 死亡 |
39,725 | 平成23年 | 男21歳 | 大学生 | 後遺障害 |
39,510 | 平成23年 | 男20歳 | 大学生 | 後遺障害 |
38,281 | 平成17年 | 男29歳 | 会社員 | 後遺障害 |
37,886 | 平成19年 | 男38歳 | 会社員 | 後遺障害 |
(参考:自動車保険の概況P144.145‐平成28年3月発行)
人身事故での賠償金最高額は優に5億円を超える金額となっています。
死亡した男性が所得の高い開業医であった事から逸失利益額が高額になった結果です。
2番目~5番目までの金額を見ても4億円弱となっていて、重度の後遺障害を被った場合は賠償金額が高くなる事が分かります。
これだけ高額な賠償金額をあなたは払えますか?無理ですよね。
コツコツ働いて払える額では有りません。
もちろん、自賠責保険から被害者が死亡した場合に3,000万円、後遺障害の場合に最高で4,000万円が支払われます。
しかし、焼石に水です。
やはり任意保険に頼るしかありません。
事故の当事者ではなく、客観的な立場で見れる今だからこそ事前に対策を施せます。事故を起こさないように安全運転に注力するのは当然ですが、万が一に備えて任意保険に加入しておいた方が良いでしょう。
さらに付け加えるなら人身事故に対して補償をする対人賠償保険の限度額は無制限にしておいた方が良いです。
一方、被害者の立場で補償を考えるなら、相手の資力や事故の過失割合に関係なく補償される「人身傷害保険」の付帯を検討してみましょう。
なぜこのような高額賠償になるのか
交通事故の加害者は被害者に対して民事責任を負います。
民事責任とは損害賠償の事で、事故によって被害者に与えた損害を金銭で補償する事を指します。
その内容は主に以下の通りです。
- 治療費
- 慰謝料(死亡した場合・後遺障害を負った場合・傷害を負った場合)
- 逸失利益(事故が無ければ得られたはずの利益) 等
被害者の年齢や職業(収入)、被害の程度などによっては、これらの合計金額が莫大な金額となります。
特に、逸失利益は就労可能年数(原則、満67歳まで)に基づいて計算されるので、賠償額が高額化する最大の要因となります。
物損事故の高額賠償事例ランキング
次に紹介するのは物損事故の高額賠償事例です。
こちらのデータも参考にしたのは損害保険料率算出機構です。
認定総損害額 (万円) | 判決年度 | 被害物件 |
---|---|---|
26,135 | 平成6年 | 積荷(呉服・洋服・毛皮) |
13,580 | 平成8年 | 店舗(パチンコ) |
12,037 | 昭和55年 | 電車・路線・家屋 |
11,798 | 平成23年 | トレーラー |
11,347 | 平成10年 | 電車 |
物損事故の賠償金額の最高額は2億6千万円です。2番目~5番目の金額も1億円を超えています。
この結果は意外だったのでは無いでしょうか。物損事故で賠償の対象となるのは車がほとんどです。そのため、数百万円で済みそうなイメージですよね。
しかし、賠償するのは車両だけではなく、積荷も含まれます。高価な積荷に損害を与えれば、賠償金額は跳ね上がります。
2億6千万円の事例がまさにそれです。
また、車両ではなく店舗などの建物に損害を与えた場合も賠償金額が高くなる事が有ります。
2番目に高額な賠償金額となったパチンコ店が良い例です。
物や建物に対する賠償だけでなく、営業再開までの営業損失いわゆる休業損害も賠償の対象となります。
物損事故とはいえ高額な賠償金額となる場合も有ります。
物損事故を甘く見て限度額を設定していると、途方に暮れる事になってしまいます。
やはり対人賠償保険と同様に対物賠償保険も高額賠償に備えて「無制限」で契約しておいた方が良いでしょう。
また、無制限で契約しても限度額を設定した場合と保険料はたいして変わりません。これは対人賠償保険にも言える事です。
自転車事故の高額賠償事例ランキング
高額賠償事例は何も車だけでは有りません。最近は自転車事故でも高額な賠償命令が言い渡されるようになっています。
「たかが自転車」と油断をしていると、とんでもない事態に陥ってしまいますよ。
それでは自転車事故の高額賠償事例を見てみましょう(参考:日本損害保険協会)。
賠償金額 | 事故内容 |
---|---|
約9,521万円 | 小学生が時速20km超で60代女性に衝突し後遺障害を負った事故 |
約9,266万円 | 高校生と会社員の自転車同士の事故 |
約6,779万円 | 片手で下り坂を走行中に女性と衝突し、女性が死亡した事故 |
約5,438万円 | 信号無視をして交差点に進入し、女性と衝突し女性が死亡した事故 |
約4,043万円 | 高校生が信号無視をして横断中に、オートバイと衝突し運転手が死亡した事故 |
なんと1億円に迫る賠償事例が2件も有ります。また、その他の事例を見てみても数千万円の賠償金額となっています。
この結果を見て肝を冷やすのは子供を持つ親でしょう。5件のうち3件で子供が加害者となっているからです。あなたは高額な賠償金額を払えますか?数千万円をポンと払える家庭は極僅かでしょう。
そのため、車の事故だけでなく自転車の事故にも備えておいた方が賢明です。1つの手段として考えられるのが「自転車保険」です。
ちなみに、兵庫県・大阪府・滋賀県などでは自転車保険が義務化されています。
ほとんどの自転車保険は損害賠償金額が1億円以上となっています。
そのため、自転車保険に加入しておけば、万が一加害者になった場合でも十分被害者に賠償する事が出来ます。
また、自転車乗車中の怪我も補償されるので、より安心出来るのではないでしょうか?
「たかが自転車、されど自転車」です。
自分や子供が加害者になった時の事を考えて、自転車保険に加入しておいた方が良いでしょう。
まとめ
全ての事故が今回紹介したような高額賠償となるわけではありません。
しかし、高額賠償となる事例がある以上、それに対応できるように備えておく必要があるでしょう。
その手段となるのが、やはり自動車保険です。対人賠償保険・対物賠償保険・人身傷害保険などの補償内容を、これを機に見直してみてはいかがでしょうか?
また、自転車事故についても自動車保険の「自転車特約」及び「個人賠償責任特約」でカバーする事ができます。
付帯していない人は、これらの特約の付帯も検討してみましょう。
専門家からのコメント
野村 圭(Kei Nomura)
大学卒業後、生命保険会社・医療機器メーカーに勤務し、様々な仕事を経験。
現在、不動産会社にて事業用の不動産売買をメインに、FP2級の知識を生かしリテールの不動産売買においても相談やコンサルティングを積極的に取り組む。宅地建物取引士資格取得に向け、修業中の日々を過ごしている。
保有資格:FP2級
コメント
特に自転車に乗っているお子様がいる家庭については、「自転車保険」や「個人賠償責任保険」が付加されている保険に加入しているか調べる必要があります。
自動車保険や火災保険にセットされていたり、オプションで追加するケースもあるため確認しておいて損はないです。また、2重で保険を掛けていたとしても、有事の際に2重で支払われることはありませんので、被っている保険は見直すことで保険料を節約することもできます。
一昔前までは、“自転車ヘルメット”は田舎ならではの光景でしたが、最近では都心部でも子どもを中心に良く見かけます。
それだけ自転車事故が身近になってきた証拠だと思います。
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