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保険は、万が一の不測の事態に備えて加入しておくものです。
しかし、「不測の事態」にも色々な種類が有り、そのそれぞれに対応するための「保険」にも色々な種類が有ります。
保険の種類を大まかに分ければ、「損害保険」と「生命保険」の2つです。
この2つの保険が木の幹となって、細かい保険に枝分かれしていく構造になっているんですね。
そこで今回は、「損害保険」と「生命保険」の違いについて、それぞれの定義を見ながら紹介していきます。
損害保険とは
損害保険とは地震や火災、台風などの「自然災害」、車同士の衝突事故など「モノ」に起こる不測の事態を基準にして考える保険です。
代表的な損害保険を挙げれば、このサイトでも紹介している「車」に起こる不測の事態に備える「自動車保険」です。
この自動車保険を細かく分けると「自賠責保険」と「任意自動車保険」の2種類に分けられます。
ちなみに、自賠責保険は全ての車両が加入しなければなりませんが、対人賠償しか補償されません。
自賠責保険で補償されない不測の事態に備える為に、任意自動車保険に加入する必要が有ります。
保険金は基本的に実損てん補払い
実損てん補払いとは、実際に発生した損害額を補償する保険金の支払方法です。
上限額が設定されていたり、一定額以上の損害に対してのみ補償などの条件が付されている場合が有ります。
たとえば、保険金額が50万円の車両保険を契約している場合、事故による損害が30万円であれば、補償されるのは保険金額の50万円ではなく30万円となります。
一方、損害額が70万円であれば、補償されるのは保険金額の50万円となります。
損害保険の種類
損害保険の代表例として「自動車保険」を挙げましたが、その他にも色々な保険が有ります。
たとえば、以下のような保険です。
- 地震保険
- 火災保険
- 傷害保険
- 自転車保険 等
これらの損害保険について、簡単に説明していきますね。
■地震保険
地震保険は地震・噴火及びこれらの影響により発生した津波や火災等で生じた「建物・家財の損害」を補償する保険です。現在、地震保険に加入する為には、火災保険に加入していることが条件となっています。
日本は地震大国なので、いつ地震が起こるか分かりません。
なるべく加入しておきたい損害保険の1つですね。
■火災保険
火災保険は「火災・落雷・爆発・風災・雪災・雹災」などの天災によって発生した「建物・家財の損害」を補償する保険です。天災だけなく、水漏れや盗難など日常生活の中で起きる事故も対象となります。
■傷害保険
保険会社によっては「ケガの保険」と呼ばれたりもします。傷害保険はその名の通り、日常生活で傷害(ケガ)を受けた時の治療費・入院費等を補償してくれる保険です。
仕事中の事故だけでなく、プライベートにおける事故も補償対象です。傷害保険をもっと細分化すれば「旅行保険」や「ゴルファー保険」などもこのカテゴリーに含まれます。
■自転車保険
自転車による事故を補償対象とする損害保険です。
昨今の「自転車事故の増加」「高額賠償事案の増加」に鑑みて、自転車保険への加入を義務付ける地方自治体も出始めています。
以上が代表的な損害保険です。
他にも船舶保険や貨物保険、賠償責任保険など多種多様な保険が存在します。
生命保険とは
生命保険とはその名の通り、私達の生命にかかわる不測の事態に備えるための保険です。
補償対象は「ヒト」ですね。
保険金は基本的に定額払い
定額払いとは、保険契約時に定めておいた金額が給付される保険金の支払方式です。実際に発生した費用が保険金額より少なかったとしても、定額給付を受ける事が出来ます。
もちろん、契約内容によっては不足する事も有ります。
たとえば、入院1回につき10万円とか死亡した場合3,000万円など、といった感じですね。
生命保険の種類
生命保険は、万が一世帯主が病気等で亡くなってしまった時に残された家族の生活費を保障することが主な目的です。
死亡保障が付いた生命保険だけでも「終身保険」「定期保険」「収入保障保険」「養老保険」という4つの種類が有ります。
現在では、死亡した場合だけでなく、ケガや病気による入院等を保障する「医療保険」や医療保険のうち日本人の三大死亡要因の一つであるガンに特化した「ガン保険」など多種多様な生命保険が販売されています。
一見すると「損害保険の傷害保険」と「医療保険」は同じような保険に思えます。
しかし、「傷害保険」が外来の事故より発生した「ヒト」の傷害を補償する保険で有るのに対して、医療保険は加齢等によって高まる病気や死亡のリスクに対応するための保険です。
例えば、三大疾病は損保の傷害保険では補償されませんよね?これは生きていれば当然発生する可能性が有るリスクであり、外的要因により発生するものでは無いからです。
ただし、医療保険では病気等だけでなく、外的要因である交通事故でケガを負った場合も補償されます。
【参考】損害保険と生命保険の両方から保険金は受け取れる?
結論から言うと、損害保険と生命保険の両方から保険金を受け取れます。
また、受け取れる保険金が相殺される事も有りません。
たとえば、自動車保険(人身傷害保険:3,000万円)と生命保険(死亡保障:5,000万円)の両方に加入している人が、自動車を運転中に自損事故を起こして死亡してしまったとしましょう。
実際の損害額が3,000万円と仮定します。
この時、自動車保険から3,000万円、生命保険から5,000万円、合計で8,000万円の保険金を受け取る事ができます。
自動車保険から3,000万円受け取っているから、生命保険からはその額を差し引いて2,000万円しか支払われない、という事はありません。
ちなみに、損害保険会社にだけ複数加入している場合には、基本的に実際の損害額までしか保険金を受け取る事はできません。
つまり、相殺されるという事です。
一方、生命保険に複数加入している場合には、全ての保険から保険金を受け取る事ができます。
損害保険と生命保険の違いまとめ
簡単ではありましたが、「損害保険」と「生命保険」のそれぞれについて見ていきました。
両者の違いをまとめると以下のようになります。
項目 | 損害保険 | 生命保険 |
---|---|---|
補償対象 | モノ | ヒト |
保険金支払方式 | 実損てん補払い | 定額払い |
代表例 | 自動車保険 地震保険 火災保険 自転車保険 | 終身保険 養老保険 医療保険 ガン保険 |
ただし、これはあくまで損害保険と生命保険の基本的な特徴であって、全ての保険に通じるものではありません。
最近では、両方の特徴を持った保険商品も販売されています。
特に損害保険に多いですね。
そのため、損害保険と生命保険を完全に区別するのではなく、「どういった保険に加入したいのか」「どういった補償が必要なのか」という点を重視して、保険選びをするようにしましょう。
ファイナンシャル・プランナー(FP)からのコメント
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
FPからのコメント
損害保険と生命保険では確かに解説の通りの違いが存在します。
しかしながら、私が実務上にお客様へ「保険を入る上での前提(目的)を明確にしてください」とお伝えしています。身の回りにどんなリスクがあって、自分にとって影響度合いが高いリスクに対して、その回避の手段の一つとして保険があります。目的が明確ではなく、義務的に保険に入ってしまうのは望ましくありません。
そして、その前提というのはライフサイクルに応じて変化します。
結婚、出産、マイホームといった事が代表例です。前提が変化すれば、当然補償(保障)も対応させる必要がありますので、保険の見直しの必要が生じる、という訳です。
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