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近年は自然災害が増加傾向にあり、自動車だけでなく建物にも被害を及ぼし、酷い場合には人名にも危険を与えています。そうした中で、保険会社の保険金支払いは増加傾向にあり、収益にも大きな影響を及ぼしています。
事実最近、MS&AD(三井住友海上&あいおいニッセイ同和損保)は業績悪化の影響により、6,300人の大規模な人員削減の計画を発表しました。
被害の観点から振り返っても、昨年は静岡県熱海市で土砂崩れが発生し27名の方がお亡くなりになりました。また今年、静岡県静岡市にて記録的な大雨で浸水被害が発生し、静岡市内で約5万5,000世帯で断水被害が発生しました。
10年以上前はこうした大規模な自然災害は少なかったですが、近年は毎年、激甚災害に指定される様な自然災害が発生しています。
さて本題に戻りますが、冒頭の台風や雹による車両の損傷被害については、自動車保険で対応する事が可能です。
以下詳しく説明させて頂きます。
車両保険で自然災害はどこまでカバーされる?
東京海上日動火災保険のトータルアシスト自動車保険を例に説明させて頂きます。
自然災害の主な事故例として、「台風・たつ巻・洪水・高潮」がありますが、台風・たつ巻等の強風による被害と、洪水・高潮等による浸水被害の2通りに分類する事が可能です。
但し、地震は自然災害ですが、地震による被害は基本的に車両保険で補償されませんので、注意が必要です。
基本的にはどの自動車保険も、強風による被害、浸水被害のいずれであっても車両保険を契約されていれば補償されます。
竜巻による損害(飛来物や車が飛ばされた事による損害)
竜巻の損害も自動車保険の補償の範囲内です。
竜巻が起きると、車自体が飛ばされたり、飛んできたものが車にぶつかったりして、車に損害が発生します。
竜巻による車の損害は、「一般型」「エコノミー型」どちらのタイプの車両保険でも補償されます。また、台風により車のドアが急に大きく開き、他の車にぶつかった場合などの、相手方への賠償も自動車保険で支払われます。
竜巻で飛んできたものが車に当たって損害が出た場合も基本的には補償の対象となります。
台風や豪雨による損害(水没や土砂崩れによる損害)
台風や高潮、堤防の決壊などが原因の洪水による車の水没は、基本的には車両保険の補償範囲です。台風による洪水で河川が氾濫し車が水没して損害が生じた場合や台風による高潮で車が水没し損害が生じた場合も補償の車輌保険の範囲内です。
また豪雨によって、道路が冠水し、車に不具合が生じた場合や豪雨による土砂崩れに巻き込まれて車が埋まったことによる全損も車両保険の補償の範囲内です。車が一度水没してしまうと、外見上は異常がないように見えても電気系統などが壊れていて修理できず、全損になる場合があります。
全損時は、車両保険の免責金額は引かれず、自動車保険に加入時に設定した車両保険の保険金額全額が保険会社から支払われます。
保険会社によって損害の原因判断が異なる事も多いです。心配な際はどのような判断になるか契約している自動車保険会社に確認しておきましょう!
津波や地震、噴火による損害は補償される?
津波による車の水没や地震、噴火によって生じた損害は自動車保険で補償されません。ただ「地震・噴火・津波危険『車両全損時一時金』特約」などと呼ばれる特約を用意している保険会社もありますので、特約を希望する場合は問い合わせてみましょう!
車両保険の一般型とエコノミー型の違いは?
自然災害の補償に関しては、車両保険の一般型とエコノミー型に違いはありません。どちらの契約であっても、自然災害については補償されます。
実際に被害にあった場合はどうする?
大前提として、車が自走可能な状態にあるか、そうでないかにより、その際の対応方法が異なります。
A)自走困難な場合
例えば、強風で落下物がフロントガラスに落下し、ガラスに大きな亀裂が入り走行が困難な状態となった場合、車での移動はガラス破損等の危険が伴う為、速やかに車両を安全な場所に停止し、保険会社(保険代理店)へ事故連絡とロードサービスの手配を行う事が必要です。
ロードサービスは、エンスト等の車が走行不可能な状態に限らず、道路交通法上において車両が走行出来ない状態(車検に通らない状態)も含まれますので、フロントガラスが大破した場合や、灯火類(例:ブレーキランプ)が正常に作動しない場合もロードサービスの出動条件を満たします。
2次的被害を発生させない為にも決して無理をせず、現場で冷静に判断し、保険会社へ相談する事が必要です。
B)自走可能な場合
被害が軽微で自走可能な場合、先ずは保険会社へ速やかに事故の連絡をする事です。最近は、保険会社が専用のアプリをリリースしていますので、アプリ経由で事故報告する事も可能です。写真をアプリ経由で保険会社に送る事も可能なので、画像を見ながら損傷状況を確認する事が可能な為、口頭で説明するよりも遥かに楽ですし、お客様、保険会社、保険代理店、全ての当事者に利便性が高いです。
保険会社への事故連絡が済んだら、速やかに修理工場へ入庫し、修理の打ち合わせを行います。その際の注意点は次の通りです。
被害にあった場合の自動車保険の留意点
(1)車両保険の損失額制限がある場合
車両保険には、免責金額が設定されています。車両保険でお車を修理する場合は、必ず免責金額を確認する必要があります。
免責金額とは自己負担額の事であり、免責金額の設定金額が高い程、保険料を安く抑える事が可能です。新規契約により保険料を抑えたい方や、事故により等級ダウンした方が保険料を節約する為に、免責金額を設定します。また、事故の頻度や状況によっては、更新時において保険会社より免責金額の設定を条件にされる事もあります。
さて、話を戻しますが、免責金額の設定に関して、具体例を元に説明します。例えば、以下の様な事故の場合です。
<ケース①>
- 車両:ムーヴ
- 損害:フロントガラス大破の為、ガラス交換
- 損害額:15万円
- 免責金額:0円
- お支払額=15万円ー0円=15万円
<ケース②>
- 車両:ムーヴ
- 損害額:15万円
- 免責金額:5万円
- お支払額=15万円-5万円=10万円
となります。
ケース①では全額保険でカバーされますが、ケース②においては保険からは10万円しか支払われず、5万円の自己負担が発生します。詳しくは次に解説しますが、等級ダウンによる影響も考慮する必要があるので、更に注意が必要です。
また上記はあくまでも修理費用についてですが、車を修理に預けると、その間の代車(レンタカー)を手配する必要があります。
良心的な修理工場であれば、無償で代車を貸し出してくれる事もあると思いますが、場合によっては有償となる事も想定されますので、注意が必要です。レンタカー特約を付帯し、保険会社の所定の条件を満たせば、保険の特約の範囲内でレンタカーを借りる事も可能です。修理の際は、合わせて保険会社に確認して下さい。
(2)等級ダウンによる翌年からの保険料
台風や雹等の自然災害により車両修理を保険使用した場合、1等級ダウン事故となります。
余談ですが、現在の自動車保険で等級ダウンとならない代表的な事故は、人身傷害保険のみ使用するケースです。実際にあった事例ですが、トラックから降車する際に足を踏み外して着地したため半月板損傷をしたケースや、生後1歳程度の赤ちゃんが誤ってチャイルドシートのロックを外してしまい、シートから落下し手首を骨折したケースがありましたが、人身傷害保険から保険金が支払われ、等級ダウンも無く対応する事が出来ました。
さて話を本題に戻しますが、台風や雹による車両修理に自動車保険を使用した際には、等級が1つ下がり、事故有係数適用期間が1年間適用されます。これは、次回更新時に1年間保険料が高くなるという意味です。
保険使用する際は、翌年の保険料がどの程度増額するか予め確認する必要があります。ケース②の様に、免責金額の設定によっては、自己負担額があるにも関わらず、等級ダウンにより保険料が増額となるので、その合計額を考えれば、全額自己負担の場合とたいして変わらない、なんていう事もありえますので、注意が必要です。
余談ですが、以前と比べると、全てのご契約ではありませんが、免責金額無しと有りの場合の保険料の差額も小さくなった印象があります。保険料のご負担に支障がないのであれば、免責金額無しでご契約されるのをオススメ致します。
(3)現在の等級と事故有係数適用期間の確認
お金の面だけでなく、等級と事故有係数適用期間には注意が必要なケースがあります。それは、既に事故有係数適用期間が設定されている方です。交通事故で保険使用した場合、1回の事故で等級は3つ下がり、3年の事故有係数適用期間となります。立て続けに事故をすると、その分等級は下がり事故有係数適用期間が長くなります。
昨今の保険会社というのは、短期間で事故を起こした契約に関して、何等かの措置を求めて来る事が多い為、現在のご契約が上記に該当する場合や、等級が6等級未満の場合については、あえて保険使用せず、全額実費で修理をされた方が良い場合もあります。
私はそうした事は一度もありませんでしたが、3等級以下の事故多発契約については、保険会社が更新を謝絶するという話を聞いた事もあり、そうなると保険自体がなくなってしまうため、注意が必要です。
まとめ
台風や雹でお車に被害が発生したら、先ずは車の損傷状態を見極め、自走不可な状況であれば無理をせずに速やかに安全な場所に車を移動させ、保険会社へ連絡し、レッカー搬送を依頼する事です。
自走可能な状態であっても、保険会社に連絡の上、修理工場に入庫し、修理の内容、金額、代車等について打ち合わせを行って下さい。
自動車保険を使用する際には、
- ①現在の等級と事故有係数適用期間と、
- ②車両保険の免責金額、
- ③保険使用した場合の更新時の増額分を確認し、保険使用せず実費で負担した場合と比較してください。
6等級未満の方や、短期間に事故を複数回起こして保険使用した方は、保険使用について、保険会社(保険代理店)とよく相談の上、決める事をオススメします。
ファイナンシャル・プランナー(記事作成者)
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
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