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「保険の自由化」という言葉は、若い人にとってはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんね。
おそらく保険を意識し始めた頃には、既に自由化されていたので。
西暦にして1996年~2000年頃の話です。
昔の話ではありますが、当時は「保険の自由化」によって日本の保険業界、ひいては私たち一般消費者に大きな影響を与えました。
実際に保険の自由化を肌で感じた人も多いのではないでしょうか。
今回は、この「保険の自由化」の経緯やメリット・デメリットについて紹介していきたいと思います。
保険自由化の簡単な経緯
自由化前の保険業界は、護送船団方式の最たるものと言われるくらいに自由化や規制緩和に対して遅れをとっていました。
護送船団方式:特定の産業において最も体力のない企業が脱落しないよう、監督官庁がその産業全体を管理・指導しながら収益・競争力を確保すること(戦後の金融業界によくあったものです)。
それが、1996年から2001年にかけて行われた大規模な金融制度改革「金融ビックバン」により矢面に立たされ、一気に自由化・規制緩和の一途を辿る事になりました。
それを境に保険業界を取り巻く環境は一変します。
その要因となったのが、この時に改正された保険業法です。
このときに改正された保険業法は「新保険業法」と呼ばれ、旧法を「改正前保険業法」や「旧保険業法」と言うくらいにその内容が大きく変わりました。
そこでの目玉改正が以下の2つ。
- ①損害保険分野の自由化(算定会料率の使用義務を廃止・リスク細分形自動車保険を認可)
- ②生保損保相互参入の許可
生保損保相互参入の許可とは、どういうことかも簡単に説明しておきますね。
生保損保相互参入が可能に
改正前保険業法では保険事業の定義が明確ではなかったのですが、新保険業法では「生命保険固有分野(第一分野)」「損害保険固有分野(第二分野)」「第三分野」の3つに分けて定義されるようになりました。
第三分野:生命保険と損害保険の間に位置する保険。
例えば、医療保険やガン保険、介護保険などです。
これにより、生命保険会社は生命保険・第三分野、損害保険会社は損害保険・第三分野を事業として行うことになったのです。
その結果、子会社による生・損保相互乗り入れが認められる事になり、生命保険と損害保険が同一グループ会社で行えるようになりました。
例えば、東京海上グループでは、生命保険を東京海上あんしん生命が取り扱い、損害保険を東京海上日動火災保険が取り扱っています。
ここまでの内容は、今では普通のことですが、保険業法が改正された当時はかなり大きな話題になっていました。
過去を知る事で保険業界を見直す、ということも必要かもしれないですね。
さて、保険の自由化の経緯を簡単に説明した所で、ここからは保険の自由化がもたらしたメリット・デメリットを自動車保険に的を絞って紹介していきます。
保険の自由化がもたらしたメリット
自動車保険の自由化により、どのようなメリットが消費者にもたらされたのでしょう。
メリット1:保険料が安い自動車保険の登場
保険の自由化がもたらしたメリットの一つは保険料の値下げです。
保険の自由化により、各自動車保険会社は保険料率を自由に決められるようになったためです。
以前は、算定会料率という保険料を定める基準の使用義務が有ったので、各社が自由に保険料を設定する事が出来なかったんですね。
そして、始まったのが保険料の値下げ合戦です。
1社が値下げをすると、他の会社もその会社に契約者を取られまいと、連鎖反応で値下げが行われていきました。
しかし、値下げするだけでは経営が悪化してしまいますよね。
そこで登場したのが「リスク細分型自動車保険」です。
リスク細分型自動車保険:契約者が事故を起こすリスクを保険料計算に反映させる方法。
事故リスクが低い人は保険料が安くなり、逆に事故リスクが高い人は保険料が高くなります。
ゴールド免許の人が保険料の大きな割引を受けられるのも、まさにこのリスク細分型自動車保険のおかげというわけです。
一方、初心者ドライバーなどは、運転に慣れていないという事もあって、保険料が高くなってしまいますね。
一長一短とも言えますが、どちらかというとリスク細分型の恩恵を受けられる人の方が多いのではないでしょうか。
メリット2:外資系の参入により選択肢の幅が増えた
保険の自由化は、日本企業にだけ影響を及ぼすものではありません。
海外の保険会社が日本に参入するチャンスも生まれました。
今まで日本の会社しか選択肢が無かった消費者にとっては喜ばしいことですよね。
つまり、外資系の参入により、保険会社の選択肢が増え、より自分の条件に合った自動車保険を契約する事ができるようになったんです。
メリット3:保険商品の幅も増えた
「保険料の差」「保険会社の選択肢の増加」に加え、保険商品の幅が増えた事もメリットの1つと言えるでしょう。
保険商品の幅を実現させたのが、各社オリジナルの特約や様々なケースに合わせた特約です。
これにより、消費者は自分の日常生活・カーライフや想定する事故リスクに合わせた自動車保険を組み立てることができるようになりました。
その一例を挙げると、今でも契約者のニーズが高まっている「人身傷害補償保険」です。
この保険の登場によって、今まで補償されなかった自らの過失部分の補償も受けられるようになりました。
ちなみに、人身傷害補償保険は、外資系の値下げ攻勢に対抗するために考え出された保険商品なんですね。
見事にヒットして、今では外資系の自動車保険も導入しています。
メリット4:ダイレクト型自動車保険の登場で保険契約の方法の幅も増えた
今でも代理店での契約が一番多いですが、自由化によりインターネットや電話での契約ができる「ダイレクト型自動車保険」が登場しました。
ダイレクト型はコストがかからないため、代理店型に比べ保険料が安いのが特徴です。
ダイレクト型自動車保険特有の「インターネット割引」によって、大幅に保険料が安くなった人も多いのではないでしょうか。
これも消費者の選択肢の幅が増える事に一役を担っている、と言えますね。
保険の自由化がもたらしたデメリット
保険の自由化は何もメリットだけをもたらしたわけではありません。
メリットがたくさんある反面、デメリットも生まれています。
デメリット1:商品の複雑化
メリットで取り上げた「保険会社の新規参入」や「様々な特約の誕生」により、商品が複雑化し、消費者の商品に関する把握が追いつかなくなった事がデメリットとして挙げられます。
自動車保険会社の代理店も保険商品に関する知識が追いつかなかった、と言われています。
ちょっと間の抜けた話ですね。
また、補償範囲が理解しにくく、事故を起こした時に「実は補償範囲外だった」というケースも増えました。
そのため、消費者は契約前にしっかりと保険内容を把握する必要があります。
情報をキャッチアップしやすい現在でも、同じ事が言えるので注意して下さいね。
デメリット2:保険金の不払い
保険商品の複雑化に伴って、消費者も保険会社も本当なら利用できる保険を見落としてしまい、貰えるはずの保険金が支払われていなかった「保険金の不払い問題」を引き起こしました。
まとめ
1996年頃から始まった「保険の自由化」。
それがもたらしたメリット・デメリットをまとめると、以下の通りです。
■メリット
-
- 保険料が安い自動車保険の登場
- 選択肢・保険商品・契約方法の幅の増加
■デメリット
- 商品の複雑化
- 保険金の不払い
自由化当時と比べると、デメリットはかなり改善されていますが、それでも油断は禁物です。
自動車保険を契約する際には、必ず1つ1つの補償をチェックして、その内容を把握した上で契約するようにして下さいね。
そして、メリットを十分に活かして、保険料の安い自動車保険を見つけていきましょう!
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