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自動車保険の等級が1等級になってしまうと、様々な不安・疑問が頭をよぎるのではないでしょうか。
「1等級だと自動車保険の契約引受を拒否されるのか?」
「1等級で加入できたとしても保険料はどれくらいになるのか?」
「1等級をリセットする方法はないのか?」
確かに、自動車保険のノンフリート等級制度において最下層に位置する「1等級」は、契約の面でも保険料の面でも相当不利な扱いを受けます。
注:1等級以外のデメリット等級である2等級・3等級・4等級・5等級、特に2等級・3等級の場合も保険会社によって1等級と同じような扱いを受ける場合があります。
しかし、全ての1等級の人が自動車保険の引受を拒否されるわけではありません。また、高くなってしまう保険料を抑えるコツもあります。そして、1等級をリセットして6等級又は7等級から再スタートする事も可能です。
そこで今回は、「1等級でも自動車保険に加入できるのか」「1等級だと保険料がどれくらい高くなるのか」そして「等級をリセットする方法」などを中心に紹介していきたいと思います。
1等級でも自動車保険に加入できるのか?
まずそもそも”なぜ1等級の人が自動車保険の引受を拒否される事が有るのか?”に関してですが、保険会社が「1等級の人は事故を起こすリスクが高い」と判断しているからです。
初めて自動車保険を契約する際の等級は6等級又は7等級です。保険金を請求せずに1年間過ごせば、年に1つ等級が進みます。しかし、事故を起こして保険金を請求すると、1等級ダウン又は3等級ダウンすることになります(等級がダウンしないノーカウント事故も有ります)。
単純に考えれば、等級が高い人は事故を起こすリスクが低く、等級が低い人は事故を起こすリスクが高い事になります。その中でも1等級の人は、狭い間隔で最低でも2回事故を起こして保険金を請求している事になるので、最もリスクの高い人となります。
保険会社は事故を起こした契約者に保険金を支払うのが1つの仕事ですが、それはそのまま損失に繋がります。そのため、保険会社としては事故を起こしやすい契約者とはなるべく契約したくないわけです。
こうした事から1等級の人は契約を拒否される事が有るんですね。
しかし、冒頭でも書いたように、全ての1等級の人が自動車保険の契約を拒否されるわけではありません。つまり、1等級の人でも契約ができる場合があるという事です。
ポイントとなるのは、どういった経緯で1等級になっているのか、という点です。
等級ダウンによって来年1等級になる場合
現在の等級は2等級・3等級及び4等級のどれかで、事故を起こし保険金を請求した事によって等級がダウンし、来年1等級になる場合です。
このケースだと、ダイレクト型の自動車保険ではイーデザイン損保やチューリッヒ以外の保険会社が引受拒否となっています(要確認)。一方、代理店型の自動車保険では契約を拒否される事は少ないでしょう。
ただし、現在の契約期間中に2回以上事故を起こして1等級になっている場合は、契約を拒否される可能性が高まります。状況的にはかなり厳しいです。
なお、1等級ではなくても、年に3回・4回も事故を起こしている場合も契約の引受拒否の対象となる場合があります(回数の基準は保険会社によって異なります)。
現在1等級で来年も1等級になる場合
2年連続で1等級となる場合です。1等級での契約中に、事故を起こして保険金を請求すると、翌年も1等級となります。
このケースだと、ダイレクト型の自動車保険ではほぼ全ての保険会社が引受拒否となります。一方、代理店型の自動車保険では契約可能な場合が多いです。
ただし、さきほどのケースと同様に、契約期間中に複数回の事故を起こしていると、代理店型の自動車保険でも契約拒否となる可能性が高くなります。
以上のように、現在の契約の等級及び事故の回数(自動車保険の使用回数)が、1等級でも自動車保険に入れるかの別れ目になります。
なお、1等級でも引き受けてくれる自動車保険を一覧で知りたい場合は、任意保険の一括見積を利用すると簡単に知る事ができます。引受拒否となる自動車保険では見積自体が出てきませんので、表示された自動車保険から加入する保険の検討をすると良いでしょう。
ただ、1等級で加入できる自動車保険が分かったとしても、契約前に1等級で自動車保険に加入するデメリットをおさえておいてください。引受拒否以外にも1等級は不利な扱いを受けるからです。
1等級で自動車保険を更新するデメリット
ここまで紹介してきた「契約の引受拒否」は、1等級の最たるデメリットと言えます。ただ、その他にもデメリットが存在します。それが以下の2つです。
- 非常に高い割増率が適用され保険料が高額になる
- 契約内容が一部制限される
割増率64%!それ以上の割増率が適用される場合もある
4等級以上であれば等級に応じた”割引”を受けられるのですが、1等級から3等級では”割増”となっています。以下が等級別の割増引率です(1等級~5等級抜粋)。
等級 | 割増引率(割増:+、割引:-) |
---|---|
1等級 | +64% |
2等級 | +28% |
3等級 | +12% |
4等級 | -2% |
5等級 | -13% |
1等級ではなんと64%もの割増率が適用されます。たとえば、4等級から1等級に下がった人の場合では、現在の保険料と翌年の保険料に割増引率で66%もの差が出る事になります。
さらに、「現在:1等級⇒翌年:1等級」となる場合には、保険会社によって、1等級連続事故契約割増が適用され64%を超える割増率となります。日新火災では15%の割増が加算され、単純合計で79%もの割増になります。
(出典:日新火災「自動車保険パンフレット」)
追加の割増制度が有るという事は、1等級でも契約できる証拠となりますが、その分高い保険料を支払わなければなりません。高額な保険料については覚悟しておいた方が良いでしょう。
補償内容の一部制限~車両保険の付帯は難しい~
1等級で自動車保険が契約できたとしても、車両保険の付帯を断られる場合が多いです。それだけ車両保険の使用頻度が高く、保険金の支払額に占める割合が多いからでしょう。
チューリッヒでは、引受条件に以下のような記載をしています。
次回のノンフリート等級が1等級~3等級の場合には、車両保険は付帯できません
そのため、1等級での契約期間中は車の修理費を全額自己負担する事になります。
1等級をリセットする事も可能
実は、自動車保険の等級はリセットする事が出来るんです。リセットすれば等級を6等級(セカンドカー割引を適用すれば7等級)に回復するので、検討する価値があると思いますよ。
一番オススメする方法は「13ヶ月無保険で過ごす方法」です。意味の無い方法も紹介していますが、これは間違った選択をしないように敢えて列挙しているものなので一読してみてくださいね。
13ヶ月間無保険で過ごす
自動車保険は、前契約の満期日から13ヶ月が経過するまでに次の契約をしなければデメリット等級が引き継がれない、というルールになっています。
なお、次回の等級が7等級以上となる場合では、満期日から7日以内に契約手続きをしないと等級は引き継がれません。
つまり、13ヶ月間無保険の状態で過ごし、14ヶ月目に自動車保険の契約をすれば新規契約の扱いになり、1等級ではなく6等級(又は7等級)からスタートする事ができます。
注意点は、この間無保険となる事です。もし事故を起こしてしまうと任意保険からの補償は受けられません。
そのため、どうしても車が必要な場合は自動車保険が付帯されているレンタカーを借りるか、1日自動車保険に加入して家族・友人の車を借りるようにしましょう。
1日自動車保険を徹底比較!ちょいのり保険と1DAY保険とワンデーサポーターに違いは有るのか?
増車して新規で保険を契約する
もう1つの方法は、新たに車を購入して自動車保険に加入する方法です。この方法であれば、新車の自動車保険は新規の扱いとなるので6等級(又は7等級)からスタートできます。
ただし、字のごとく”車が1台増える”状態でなければいけません。つまり、新車の自動車保険加入時期とは別の時期に1等級の自動車保険を解約し、そして車を売却してしまう、という手は通じません。
これは単なる車両入れ替えであり、1等級逃れとみなされ、新車の自動車保険が1等級に戻されるか、最悪の場合契約解除となってしまいます。
車を2台維持しなければならず、コスト的にもあまりオススメできる方法ではありません。
リセットされないので以下の行動は意味なし!
上でみたように、自動車保険の等級がリセットされるのは「①13ヶ月無保険で過ごす」か「②増車して新車契約するか」のどちらかです。
名義変更をしたり虚偽申告をしても意味はありませんので注意して下さい。
自動車保険の名義変更は意味がない
自動車保険の名義変更、つまり被保険者を変更しても意味がありません。たとえば、被保険者を夫から妻に変更したとしても、その自動車保険自体が継続されるわけですから等級は1等級のままです。
等級を虚偽申告して他の自動車保険へ乗り換えてもバレる
共済も含め各自動車保険は、等級などの情報を共有しています。そのため、他の自動車保険に乗り換える際に嘘の等級を申告しても遅かれ早かれバレてしまうんです。
1等級で更新する場合の保険料を節約するポイント
保険料の観点からすれば、等級を1つずつ回復させていくよりもリセットしてしまった方がお得です。しかし、通勤で車が必要など、無保険で過ごす事が現実的に不可能な場合もあるでしょう。
そういう人は1等級の自動車保険を継続していく他ありませんよね。ただネックとなるのは「保険料」です。前述したように大きな割増を受けるためです。
そこで、1等級の自動車保険を更新する場合に保険料を節約するポイントを2つ紹介しておきます。
補償は必要最低限の内容に!
1等級の割増率は非常に大きいので、補償を増やせば増やすほど、基本的に保険料は割増率に比例して高くなってしまいます。そのため、1等級から最低でも割引となる4等級までは必要最低限の補償内容に留めておいた方が良いでしょう。
その必要最低限の補償というのが以下の3つです。
- 対人賠償保険(無制限)
- 対物賠償保険(無制限)
- 人身傷害保険(車内補償タイプ)
この3つの補償さえあれば、事故時の相手の怪我・物の損傷及び自分自身の怪我をカバーする事ができます。
なお、1等級だと車両保険は付帯できない場合が多いので、車両保険なしの契約が基本と考えておきましょう。
【重要】自動車保険を安く済ませたい人でも必要な最低限の補償内容
加入可能な自動車保険を比較!
前述したように、等級が1等級だと引受を拒否する自動車保険はありますが、それでも契約可能な自動車保険はいくつか有ります。
加入可能な自動車保険を探すと共に、その中から安い自動車保険を探す努力をしましょう。
自動車保険の一括見積もりが一番便利だと思いますが、1社1社当たっても構いません。なお、見積もりを取る際は情報入力時に「車両保険無し」を選択してくださいね。
「車両保険有り」とすると、車両保険無しで契約可能な自動車保険にもはじかれてしまうので。
1等級にならない為に自動車保険は賢く使おう
- どういった時に自動車保険を使おうと考えていますか?
- 事故を起こした時や車が傷付いた時と答える人多いと思います。では、賠償額・被害額がいくらでも自動車保険を使いますか?
何が言いたいのかというと、自動車保険は使える時に使う物ではなく、必要な時に使う物なんです。また、使った後の事も考える必要があります。
具体的には、人身事故や対物賠償・車の修理費用が多額になる自損事故などが使うべきタイミングです。一方、軽い傷が付くだけの修理費用が少額となる自損事故では保険ではなく自己負担をした方が良いでしょう。
10万円前後の修理費用なら、自動車保険を使う事によって高くなる保険料と大して差がないと思います。
どんな事故でも自動車保険を使っていると、そのうち1等級になってしまい、今回紹介したような不利な状況に陥ってしまいます。必要な時・タイミングに自動車保険を使うようにしてくださいね。
事故った!保険を使わない方が得になる時・損になる時~等級ダウンによる値上げと修理費用の比較がポイント
専門家からのコメント
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
【コメント】
基本的には、5等級以下の新規ご契約の引き受けは、保険会社の事前の確認が必須となります。また当社としても、かなり慎重に引き受けの判断を行っていますが、余程の事情がない限りお断りしています。
やはり実務において、(年齢にもよりますが)5等級以下の方というのは、運転の技能、注意、等において何かしらの問題を抱えている可能性があると思います。実際、夜間に発生した事故ですが、スーパーの屋外駐車場の該当に突っ込み全損となった方がいました。
この方は、ご契約時から等級が低く、事故も多く、そうした中での事故でした。
自動車保険の等級制度は平等に出来ています。20等級に至るには、無事故で14年間いる以外の方法はなく、安全運転の積み重ね以外に方法はありません。
まとめ
自動車保険の等級が1等級になってしまうと何かと不利な扱いを受ける事になります。契約の引受距離然り、割増による保険料の高騰然り。
それでも加入できる自動車保険はありますし、保険料を節約する事も可能です。
1等級になって契約している保険会社から引受拒否の通知が送られてきて焦っているかもしれませんが、落ち着いて加入可能な自動車保険を探してください。無い場合には等級をリセットする事も可能なので検討してみてくださいね。
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