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示談交渉を上手に進めていく上で必要なこととして、「加害者側がお金を持っているかを調べる事」が挙げられます。
人は基本的に、お金を突然支払えと言われると「今はお金がない!」と言いがちです。
事件が発生したり、会社のお金を横領したりして被害者に対して損害賠償をしなくてはいけなくなったときに、「お金があればちゃんと払うが、無いから払えない」と言い、被害者側が泣きを見る・・・という話を良く聞きますよね。
任意保険の有無と資金の有無が重要
交通事故に関して言えば、自賠責保険は基本的にみんな加入しているので、損害賠償金が自賠責保険の範囲内で収まるのであればそもそも示談交渉は特に必要ありません。
(自賠責に入っていない車やバイクも有るので対処方法は下記参考記事でチェックして下さい。)
自賠責保険の範囲を超える場合に、加害者が任意保険に入っているか否か、入っているのであれば限度額、入っていないのであればお金をどれくらい持っているかを考えていく必要があります。
任意保険に加入しているかどうかは加害者に聞けばわかりますので、ポイントとなるのは加害者が任意保険に入っていない場合に、お金を持っているかどうかを知ることです。
加害者が本当にお金が無いのであれば仕方ないですが「お金が無い」という発言を鵜呑みにして、簡単に諦めてしまうと交通事故の示談交渉では思う様な結果を出す事は難しいでしょう。
また、お金が無いのに示談をかたくなに世間相場で成立させても、回収できないのであればあまり意味がありません。
加害者側から確実に回収出来るであろう金額で示談を成立させることが、加害者にお金がない場合の正攻法です。
ただ真っ向から資産の額を聞いても教えてくれないのは今までの話でお分かりでしょう。
そこで、この記事では「興信所や探偵を利用して相手方の資産を調査する」という方法を紹介します。
興信所と探偵の違い
よく身辺調査などを依頼しようとして候補に挙がってくるのは「○○探偵事務所」や「○○興信所」ですが、そもそもこの二つに違いはあるのでしょうか。
両者に明確な決まりというものは特にないですが、主な違いは業務内容にあります。
探偵業務の代表的なものは浮気調査や人探し、ストーカー、盗聴器発見などです。
見つからないように人の尾行をするなど、難しい調査もしてくれるので探偵業務は一般的に調査費用が高い傾向にあります。
一方の興信所の業務で代表的なものは、結婚相手の身辺調査や企業の取引先信用調査などです。
調査対象者に不動産がどれくらいあるか、商売人であれば売上はどれくらいあるかなどといった外枠的な調査が多いため、詳細なデータを入手するのは難しいですが1件当たり20〜30万円程度の調査費用で済むことがほとんどです。
調査費用が思わぬ高額な出費とならないように、依頼する前にどれくらい費用がかかるかを問い合わせて、自分に本当に必要なのは探偵事務所なのか興信所なのかを見極めていく必要がありますね。
活用法は様々
加害者の資金力を調査してもらうだけでなく、探偵事務所や興信所は以下の様な調査にも活用することができます。
- 目撃者の捜索・目撃者への事故時の状況の聞き込み調査
- 事故後の相手の健康状態や勤務状態調査
- 事故後の相手の後遺障害の有無確認
これらの調査は相手方が任意保険に入っていて、保険会社の担当者が間に入り手続きを進めていく場合には特段必要ありません。
必要になるのは相手方が任意保険に入っておらず、示談交渉を当事者間で進めていかなければならない時です。
事件の目撃者がいれば目撃情報を元に示談を進めていく事ができますが、被害者はケガをして目撃者の捜索ができないこともありますし、現実的に自分だけで目撃者を探し出すのは難しいです。
また加害者側としても、被害者が事故後の健康状態や後遺障害について嘘をついて示談金を不当に上げていないか心配なところです。
こういった情報を得るために探偵や興信所を活用するのも一つの手ですね。
専門家からのコメント
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
コメント
無保険の相手と事故をして、仮に示談に至ったとしも、「相手がその賠償額を約束通りに支払ってくれるかどうか」というのは非常に厄介な問題です。無保険には理由があって無保険な訳で、多くの場合、お金の余裕がない為に自動車保険を契約していません。
興信所や探偵を雇うにはお金がかかる為、費用を抑えて相手の財産資力を調べる方法としては、相手の
「不動産の登記簿謄本」を調べる方法があります。
この方法は相手が持ち家の場合に限られますが、費用を抑えて財産を調べる方法としては簡単、且つ、確実な手段です。登記簿謄本は、法務局に行けば誰でも取得する事が出来ます。登記簿謄本を取得すれば、土地建物の不動産に関する情報、所有者の情報、担保設定に関する情報が記載されております。ネットを検索すれば、登記簿謄本の見方も開設されています。
登記簿謄本の情報の中で確認すべきは、担保設定に関する情報です。
冒頭でお伝えした通り、無保険者=お金がない人の可能性が高く、最悪の場合、多重債務者である可能性も考えられます。多重債務者の場合、抵当権設定社には見た事も聞いた事もない信販会社や保証会社が記載されている可能性があります。
そうした多重債務者の場合、金銭の賠償を正当な手段で得るのは難しいかもしれませんし、抵当権設定権者が反社会的勢力と繋がりがある可能性も否定できない為、むしろ深く関わりを持つべき相手ではない可能性が高いとも考えられます。
そうした可能性がないか調べる為に、不動産の登記簿謄本を調べる方法は有効です。
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