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交通事故の被害者と加害者。
示談に関して積極的になるのは基本的には被害者側です。
交通事故の損害を補償してもらうのは被害者の方ですからね。
まあ、治療費や休業損害に対する保険金を低く抑えようとして、保険会社が積極的に示談を進めようとする事も有りますが、基本は被害者です。
ですが、時に加害者が積極的に示談をしようとお願いしてくる時が有ります。
今回は、なぜ加害者が示談に積極的になるのか?その真意と示談を求められた場合に被害者はどう対応すべきなのか?について紹介していきます。
加害者側から示談をお願いする理由
加害者が示談に積極的になる理由は以下通りです。
- 示談屋による早期示談成立
- 刑事裁判の際の情状酌量目的
示談屋による早期示談成立
加害者の代理人の記事でも紹介していますが、考えられる理由の1つとして【示談屋による強引な示談成立】が有ります。
示談屋は、加害者から報酬を貰っている又は成功報酬なので、早期に解決したり安い示談金で済まそうとするため、示談を積極的に成立させようとします。
示談屋に対しての対応は下記記事参照。
刑事責任の情状酌量目的
示談と刑事責任に直接の関係は有りませんが、加害者にとっては示談が成立しているか否かは大きな意味を持ってきます。
なぜなら、刑事責任の判断をする際に、既に示談が成立していると情状酌量として罰則を軽くして貰える事があるからです。
示談が成立していることによって、検察官の判断にも大きく影響を与えることになるわけですね。
その辺りは下記の記事を参考にしてください。
単純に考えると、示談が成立している事で検察官の判断は以下の表のようになります。(あくまでも例示です)
示談未成立 | → | 示談成立 |
---|---|---|
懲役3年 | → | 懲役1年 |
実刑判決 | → | 執行猶予付判決 |
正式裁判 | → | 略式裁判 |
罰金100万円 | → | 罰金50万円 |
起訴 | → | 不起訴 |
※加害者が過去に同じような事故を起こしていたか、また悪質な事故であるかなども考慮されるので、必ずしもこうなるわけではありません。
また、表の罰金額や年数は例示です。
このように、情状酌量目的で事故から数ヶ月経って(刑事手続きがスタートした頃)急に示談に積極的になってくることが有るのです。
被害者の対応方法
それでは、被害者は示談に積極的な加害者に対してどのような対応をすれば良いのでしょうか。
示談書の作成に関して
■満足のいく提示額の場合
加害者が満足のいく示談金額を提示してきた場合には、示談に応じて示談書を作成すればいいでしょう。
但し、すぐ食いつくのではなく、相手の提示額が弁護士基準で計算されていない場合には、弁護士基準に近づけるか、提示額に1、2割ほど上乗せして交渉してみる価値はあると思います。
相手も焦っていますから「背に腹は変えられん!」という事で、意外にも要求を飲んでくれる可能性が有ります。
弁護士基準による計算方法に関しては「損害賠償(人身事故)カテゴリー」を参照して下さい。
ただ誠意を見せている加害者に対して、このような考え方で接するのを良しとするかどうかはあなた次第です。
■満足のいかない提示額の場合
急に示談に動きだした加害者がまとまったお金を用意できるとは考えにくいので、示談の提示額が満足いかない場合もあると思います。
このような場合には示談に応じる必要は有りませんが、ただ追い返すのは良い手ではありません。
損害額全体を「速やかに支払う事を約束する示談書(もしくは支払期限日を決めた示談書)」を作成すると良いです。
つまり、相手の提示した額はすぐに払える金額若しくは用意してきた金額だと思いますので、「①損害額総額を支払う事を約束した旨②加害者の提示額を受取った旨③残額をいつまでに若しくは速やかに支払う旨」を記載した示談書を作成するのです。
被害者としては、損害額を支払って貰う約束を取り付ける事が出来るので意味は有ります。
一方、加害者にとって、この示談書はあまり意味を持ちません。
ただの約束事ですので、検察官はあまり評価をしないと言われています。
また、中には裁判の為に示談書が必要だからという理由で、そのためだけに強引に示談書の作成を依頼してくる人もいると思います。
ですが、何かの目的の為の示談書といった中途半端な物は、後々トラブルの種となりますので絶対に応じてはいけません。
加害者としては、刑事裁判での情状酌量を得るためには、最初からしっかりと誠意ある対応を被害者に行う事が重要です。
嘆願書の作成に関して
(出展:交通事故と示談の仕方-著者長戸路政行)
嘆願書とは、被害者側から交通事故での加害者の減刑を求める書面です。
文例は上記画像ファイルを見てください。
嘆願書は、通常「満足いく示談金を支払ってくれた場合」や「本当に反省していると感じて減刑を望むような場合」に作成します。
嘆願書は示談をうまく進めるためのツールになる事は覚えておきましょう。
また、嘆願書を書いてくれた事に対しての謝礼を賠償金額に含める事も有るようです。
満足いく提示額を示さない加害者のお願いを断りきれなかった場合に嘆願書を書く事も1つの手です。
嘆願書は刑事裁判専用の書面なので、民事上の問題である示談にはなんら影響を与えません。
つまり、嘆願書を書いたからといって、加害者が提示した金額で示談した事にはならないのです。
また、示談が未成立のまま刑事責任の判断に突入し、刑事罰を受けてしまった加害者は、示談の事などどうでもよくなってしまう可能性が有ります。
なぜなら、嘆願書を求めてきた目的が情状酌量の減刑だったのですから、目的が達成されなかった以上、加害者が示談に積極的になる理由は少なくなってしまいますよね。
ですので、示談交渉をスムーズに進めるためにも、刑事罰を軽減するよう嘆願書を作成してあげるのもひとつの考え方でしょう。
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