この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。
一般の事業会社と違い保険会社は勘定科目が特殊であり、会社の健全性を示す指標なども保険業界特有のものがあります。
各社の財務諸表等を見れば記載されているのですが、その指標が何を意味しているのか知らないとせっかく指標を見ても財務諸表から読み取れる情報も少なくなってしまいます。
そこで保険会社に特有の指標について解説をしていきますね。
[myphp file=’kiji-top’]
保険会社特有の指標紹介
正味損害率
(正味支払保険金+損害調査費)÷正味収入保険料
その会社のアンダーライティング(保険契約の引受の可否等や料率等を決める業務)の良否を示す指標です。
数値が低いと引き受けに関する可否等の判断がよく出来ていたということを示しています。
とはいっても、大災害などが発生し保険金の支払が多くなると損害率は必然的になってしまいます。
正味事業費率
(諸手数料及び集金費+保険引き受けに係る営業費及び一般管理費)÷正味収入保険料
その会社の経営効率の良否を示します。(単に事業費率ということもあります)
この事業費率が低下傾向にあれば一般的には経営の効率化が進んでいると考えて間違いないです。
ただし、システムの改善等の先行投資をした場合など一時的に上昇する事もあります。
コンバインド・レシオと収支残率
コンバインド・レシオ
正味損害率+正味事業比率
収支残率
1−(正味損害率+正味事業比率)
支払備金や責任準備金の状況は加味されていませんが、当期の収入・支払ベースの効率性を表します。
両者は表裏一体の関係に有り、一般的にコンバインド・レシオが100%を超えることは即ち収入よりも支出が多いことを示すため保険会社の収益性に関して疑義が持たれることとなる(収支残率はその逆)
最近は保険会社の収益指標の一つとしてディスクロージャー資料にも普通に登場するようになっています。
但し、保険会社には通常の保険料収入の他に資産運用収益も有りそれらを統合的に判断して経営判断が行われているためその辺りまで汲み取った上で数値の判断を行う必要がある。
E/I損害率(アーンド・インカード・ベーシス)
発生損害額÷既経過保険料
発生損害額=当期正味支払保険金+(当期末支払備金?前期末支払備金)
既経過保険料=前期末未経過保険料+当期正味収入保険料−当期末未経過保険料
損害保険の保険料を算出する計算方法の一つ。
支払備金・(普通)責任準備金の繰入・戻入を加味し、当期発生ベースでの損害率を示す指標です。
アーンド・インカード・ベーシス法の他には「リトン(ペイド)・ベイシス損害率」が有る。
こちらは当期に支払った保険料を収入保険料で割ることによって算定される。
つまりコンバインドレシオはこの損害率の出し方によっても変動するため元となる計算数値に何が使用されているかをしっかりとチェックする必要がある。
責任準備金積立率
責任準備金期末積立額÷正味保険料
その会社の保険金支払能力を示します。
数値が高いほど積立の割合が大きいことになり、支払能力は大きいことを意味していますが、単純にそれだけでよいとは言い切れず、裏付ける換金性の高い資産を保有していなければあまり意味がありません。
保険引受利益
保険引受収益?保険引受費用?保険引受に係る営業費及び一般管理費±その他収支
保険引受に関する利益の額を示しています。
運用資産利回り(インカム利回り)
(利息及び配当金収入?地震保険運用益・雑利息)÷運用資産の月平均運用額
月平均運用額=各月末の残高の12ヶ月分合計÷12
運用関係の収益性を示す指標です。
高ければ運用での収益がよく出ているという事になります。
まとめ
その他にも保険会社では一般の事業会社と同じようにROIやROEなど経営分析に使う指標も活用しますが、業務の特殊性から今回紹介した指標も重用視されます。
財務諸表を見る上で知っておいた方がいいものばかりなのでこれから財務諸表を見るという方は抑えておきたいですね。
一般的な保険会社の財務諸表情報については下記を参照して下さい。
コメント
この記事へのコメントはありません。