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損害保険会社の財務諸表を見るにあたり、一般の事業会社と違い保険会社は保険業法の定めにより特有の勘定科目が登場します。
財務諸表分析をするのに特有の勘定科目をある程度把握しておかないとぱっと見た時に意味が全く分からないという事態になりかねません。
そこで今回は貸借対照表の負債の部と純資産の部について見ていきましょう。
前回記事:「損保会社の財務諸表の見方「貸借対照表編①」~資産の部~」
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独特な負債の部
保険会社の負債の部によく登場する独特の項目としては
- 支払備金
- 責任準備金
- 共同保険借
- 再保険借
- 価格変動準備金
などがあります。
では一つずつその内容を見ていきましょう。
支払備金
支払備金は保険契約準備金(保険業法で将来の保険金などの支払いに備えるために積み立てることが定められているもの)の一つです。
保険の契約上既に支払義務が発生している保険金や返戻金その他の給付金で、事業年度終了日時点では、未払いとなっているものに関して、その支払いのために必要な金額を積み立てる準備金のことです。
なお、支払事由の報告は未だ受けていないが、その支払事由が既に発生したと考えられる金額についても、支払備金に積み立てることとなっています。
責任準備金
これも保険契約準備金の一つです、(損保会社の財務諸表分析?損益計算書①?」にて解説をしているのでそちらを参照してください。)
共同保険借
共同保険借は、2以上の保険会社が共同して元受保険を引き受ける場合に共同保険の幹事会社が非幹事会社のために共同保険料を代収したときに生じる非幹事会社に対する未払債務のことを言います。
(共同保険貸は資産項目で非幹事会社に対する未収債権を言います)
再保険借
再保険借は資産項目である再保険貸の逆で、損保会社と再保険会社との間の再保険契約にもとづいて受取・支払される再保険料・保険金などに関する債務の総額のことを言います。
価格変動準備金
価格変動準備金は保険会社の支払能力確保の点から、財産の中でも特に株式等の価格変動リスクに備えるために保険業法で積立が定めれているものです。
保険業法115条では以下の様に定められています。
保険会社は、その所有する株式その他の価格変動による損失が生じ得るものとして内閣府令で定める資産(次項において「株式等」という。)について、内閣府令で定めるところにより計算した金額を価格変動準備金として積み立てなければならない。ただし、その全部又は一部の金額について積立てをしないことについて内閣総理大臣の認可を受けた場合における当該認可を受けた金額については、この限りでない。
対象となっているのは国内外株式・円建外貨建債券、預金、貸付、金地金等で、期末簿価の0.02%から0.3%の間で積立基準が定められています。
ちなみに税法上はこの価格変動準備金の繰入額と戻入益は損金・益金には算入されません。
純資産の部について
純資産の部については一般の事業会社のそれと変わるところは特にありません。
保険会社の財務諸表を見たことがない人でも基本的には問題なく分かるかと思います。
まとめ
損益計算書に始まり、貸借対照表も保険会社に特有の項目を色々と見てきました。
財務諸表を見ていく上でいきなり保険会社の決算数値をみても意味が分からない人が多いということで解説を書いてきました。
少しでも理解が深まればと思います。
次回からは各保険会社の財務諸表について実際に分析していきたいと思います。
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