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「遷延性意識障害」つまり「植物状態」になってしまった人の家族が、損害賠償請求訴訟を起こした場合、これまでの判例では将来の介護料であったり、在宅介護の費用などは否認される事も多々有りました。
しかし、最近ではその傾向に変化の兆しも見られます。
将来の介護料については「平均余命期間」を短く算定される事が多かった
遷延性意識障害と診断されるという事は、多くの場合で被害者は「寝たきり」の状態です。寝たきりの状態ですから「自分でご飯を食べたり、排泄物を処理したり、お風呂に入ったり」する事は当然出来ません。
その為、家族もしくは職業付添人が被害者の介護をしてあげる必要が出てきます。また、遷延性意識障害は単なる足の骨折などと違って、ほとんどのことを自分で出来ないわけですから24時間付きっきりで介護する必要が有る事も。
そうなると、介護施設に依頼する場合でも相当の費用がかかります。なにせ入院期間は長期に渡るわけですから。
しかし、以前は賠償金額を決定する際に、「遷延性意識障害者は平均余命まで生きる可能性が少ないので、将来の介護料の算定期間を短くして算出すべき」という意見が有りました。これだと困ったことが起こります。
「この被害者はあと7年くらいしか生きられないので、将来の介護料も7年間だけ払うこととする!」
こんな判決が出て、その被害者が10年以上生き続けたらどうなるでしょうか? 一度決まってしまった示談金・賠償金は基本的に変更できないわけですから、7年過ぎた後の介護費用は家族の自腹という事になってしまいます。
介護もしてヘトヘトになっている家族がそんな費用を払えるか?と言われると厳しいですよね。このような判決は遷延性意識障害者に死ねと言っているのと同じです。
そこで、最近の判例では「遷延性意識障害者」の平均余命を短く見積もらずに、思わしくない状態が継続的に発生していない限りは、「平均余命」まで生きると判断して将来の介護料を算定することが多くなっています。
在宅介護は損保会社と争いになる事が多い
中には、介護施設などで介護せずに「自宅」で介護をしたいと主張する被害者家族もいます。味気ない病院での介護よりも、慣れ親しんだ自宅で介護を行った方が、万が一の時にも対応しやすいし、病院への行き来で疲れる事も有りません。
また、在宅介護にして遷延性意識障害者の状態が良くなるという事例も有るようです。
しかし、在宅介護となると自宅のバリアフリー化・福祉車両の購入などで費用がかさんでしまいます。ですので、損保会社は「在宅介護の必要性無し!」として、在宅介護に関わる賠償金額の請求には真っ向から争うことが多いです。
遷延性意識障害者にとって受入施設の環境は「生死にかかわる重要な問題」です。受け入れ体制がイマイチな病院で介護をするよりも、自宅で万全な状態で介護をしたいと思うのも当然の心理です。
しかし、現状ではなかなかすんなりとは認められていないようなので、在宅介護の必要費用を請求するなら、長期戦を覚悟した方が良いでしょう。
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