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交通事故の被害者としては、ケガが治るまでしっかり治療を続けていきたいと思うのは当然のことです。一方で、保険会社としてはいち早く症状固定にして治療費や休業損害を打ち切りにしたいところです。
この両者の意識の違いから生じる問題点として、「損保側が長期に渡る治療を遷延治療(故意に治療を引き延ばすこと)と判断し、治療費や休業損害の打ち切りをすること」が挙げられます。
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交通事故の治療は長期間に渡る?
交通事故といっても内容は様々で、正面衝突や停車中に後ろからトラックに追突されたりするなどの大事故から、ゆっくり走っているバイクにぶつかるといった軽度の事故まで数え上げればキリがありません。
手足を骨折した程度であれば1〜3ヶ月程度で完治することが一般的ですが、交通事故では、衝突の勢いで首に損傷を受ける事が多いです。首は人間の身体の中でもとても重要な部位になるので、1度損傷を受けると治療も長期間に渡りがちです。
首の損傷として一番多いのが頸椎捻挫(いわゆるむち打ち症のことです。)ですが、これは軽度なもので1ヶ月弱、重度になると1年以上治療にかかることもあります。さらに、脳にある脊髄液が減少して頭痛や耳鳴りなど全身に症状が出てくる「脳脊髄液減少症」になると、治療期間は2〜3年近くかかることもよくあります。
しかし、一般的に病院側としての治療自体は早期の内に終わることが多く、その後も被害者が「何だか頭痛がする」、「疲れがとれない」といった不定愁訴を長期に渡って訴えるため、治療が長期間になってしまうことがあります。
不定愁訴は、原因が分からずに起こる身体の不調のことをいいます。主に、「よく眠れない」「吐き気がする」「頭が重い」といった症状で、患者の自覚症状があるだけで病院で検査をしても異常が見つからないことが多く、治療が難しいものとされています。
最終的には自律神経失調症と診断されるケースが多いようです。
バレー・ルー症候群とは?
交通事故の場合に不定愁訴として扱われることが多い症状として、「バレー・ルー症候群」というものがあります。これは、1926~1928年にフランスのバレーとルーによって報告された症状です。
首の痛みの他に、筋肉の凝り・耳鳴り・めまい・声がかすれるなど様々な症状があり、首の損傷によって自律神経が直接的もしくは間接的に刺激を受けることで発症するものとされています。
交通事故で頸椎捻挫になった後で、しばらく経っても上記の様な症状が無くならないときにこのバレー・ルー症候群と診断されることがあります。主に患者の自覚症状によって診断するもので、検査をしても異常が見つかりにくいことから、どうしても不定愁訴として扱われることが多くなってしまいます。
そして損保側では症状が不定愁訴であるならば、それは「交通事故とは関係ないもの」と判断し、長期間の治療は遷延治療であるとして治療費・休業損害を打ち切ろうとするのです。
債務不存在確認訴訟
保険会社が治療の打ち切りをすると、「まだ当然治療が終わっていないのに・・・」と被害者としてはクレームをつけたくなりますよね。
しかし被害者からクレームがくると、損保側は躊躇なく弁護士を立ててきて訴訟に持ち込みます。「治療は終わっているので、これ以上の債務は保険会社は負わないです!」と主張するための訴訟で、「債務不存在確認訴訟」と呼ばれています。
債務不存在確認訴訟については、「債務不存在確認訴訟とは?訴えを起こす役割や目的」で解説をしているので参考にしてください。
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