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「今日はお酒を飲むから自動車で出掛けるのはやめて、自転車で行こう」とはまさに、行きは良い良い帰りは怖いです。
お酒を飲んだ帰りに自転車に乗車すると、飲酒運転となって重い罰則が待っています。
自転車は徒歩と同じ扱いになると勘違いしている人が多いようですが、これは全くの認識違いです。
お酒を飲んだら乗るな!
これは自動車に限らず自転車でも守らなければいけない鉄則のルールです。
自転車も飲酒運転の取り締まり対象
飲酒運転は道路交通法第65条1項において以下のように規定されています。
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
車両等とは、「自動車、原付、軽車両、トローリーバス(道路交通法第8条1項八号)」の事をいい、自転車は軽車両に該当(道路交通法第2条1項十一号)します。
つまり、自転車もお酒を飲んで運転してはいけないわけです。
なお、自動車の酒気帯び及び酒酔い運転の場合と同様に、自転車の運転者に対してお酒を提供する事やお酒を飲んでいる事を知っていて自転車を貸す事も禁止されています。
飲酒して判断力が低下した状態で自転車を運転することは非常に危険です。
自転車でも、道路交通法のルールに違反した場合には重い罰則を受ける事になります。


「ながらスマホ」の罰則強化!
令和6年(2024年)11月から自転車運転中にスマートフォン等を使用する「ながら運転」(ながらスマホ)の罰則が強化され、「自転車の酒気帯び運転」も新たに罰則対象とされています。
【罰則強化】
- 「ながらスマホ運転」
- 「自転車の酒気帯び運転」
【具体的な禁止事項】
- 自転車運転中にスマホで通話すること(ハンズフリー装置を併用する場合等を除く。)
- 自転車運転中にスマホに表示された画面を注視すること。
※どちらも自転車が停止しているときを除く。
5万円以下の罰金
「酒気帯び運転」の罰則も強化!
飲酒して自転車を運転することは禁止されており、これまでは酩酊状態で運転する「酒酔い運転」のみ処罰の対象でしたが、今回の「法改正」により「酒気帯び運転」(血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき、0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で運転すること)についても罰則の対象となります。
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
酩酊状態で自転車を運転する行為は「酒酔い運転」とされ、今回の改正道路交通法施行以前からですが、罰則として、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。
出典:警視庁ホームページ(2024年11月の自転車に関する道路交通法の改正)
こういった事故を起こした場合には刑事罰に加え、民事上の損害賠償責任を負う事になります。
決して、軽く見てはいけません。
自転車の事故での損害賠償金額は1億円近くになる事もあります。
一緒にいた人も罰則される!?酒気帯び運転「ほう助」にも罰則あり!
自転車での酒気帯び運転「ほう助」にも罰則が科されるようになりました。
主な禁止事項は下記の通りです。
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること。
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供すること。
- 自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗すること。
自転車での運転!実はこんな運転にも罰則あり!
自転車運転する際、下記のような運転も禁止されています。頭に入れておきましょう!
- 傘をさしての運転(5万円以下の罰金等)
- イヤホンやヘッドフォンを使用し、安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態での運転(5万円以下の罰金)
- 2人乗り(5万円以下の罰金。都道府県公安委員会規則の規定で認められている場合を除く。)
- 並進運転(2万円以下の罰金又は科料。「並進可」の標識があるところを除く。)
参考:埼玉県警察HP(自転車のながらスマホ、酒気帯び運転の厳罰化(令和6年11月1日施行))
自転車の運転に保険は適用できる?
自転車には自賠責保険がありませんので、賠償責任に関する特約等がついた保険(保険によっては補償範囲外)に加入していない場合には、「全額自己負担」となってしまいます。
先ほども記載した通り、自転車で事故を起こした場合、約1億円の損害賠償を払わなければならないかもしれません!
下記が自転車事故での実際の損害賠償の事例です。
判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額で、実際に支払う金額とは異なる事もありますが、下記金額を請求されるケースがあるという事です。
判決認容額 |
事故の概要 |
---|---|
9,521万円 |
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。( 神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決) |
9,330万円 |
男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決) |
9,266万円 |
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決) |
6,779万円 |
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決) |
|
自動車事故 |
自転車事故 |
---|---|---|
損害賠償に備える保険(強制加入) |
自賠責保険 |
× |
損害賠償に備える保険(任意加入) |
任意の自動車保険 |
個人賠償責任保険など |
|
事故相手の生命・身体 |
事故相手の財産・モノ |
自分の生命・身体 |
---|---|---|---|
個人賠償責任保険 |
◯ |
◯ |
× |
傷害保険 |
× |
× |
◯ |
このような自転車事故の場合にも、対応できる保険に入っておく事も重要です。
このような自転車事故による損害賠償責任に備える保険があります。また、自身の自動車保険に「自転車特約」を付ける事で、単独で入るよりも安いケースもあるでしょう。
自動車事故と違い、被害者救済のための自賠責保険が、自転車事故にはありません。
是非、一度自身の自動車保険を見直したり、一度、自転車保険を含めた他の保険も見ておく事をオススメします。
自転車も立派な車両であり、安全運転を心掛けましょう!
参考:自転車の違反と罰則





運転免許証が停止される場合もある
お酒を飲んで自転車を運転すると、「酒気帯び運転であれば注意」「酒酔い運転であれば罰則」があると前述しましたが、酒酔い運転で自転車に乗った場合は自動車免許にまで影響が及ぶ可能性があります。
もちろん運転免許がなくても自転車にはのれますが、酒酔い運転で自転車に乗った人が自動車免許を保有している場合、それが停止されるという事例が過去にもありました。
これに関しては都道府県に条例よって対応が変わってくるのですが、愛知県ではこういったケースに厳しく対応していて、180日以下の免許停止の処分を受ける事になっています。



自転車の酒酔い運転の常習者や悪質な違反者が自動車運転免許を所持している場合、一般的な点数制度によらず停止することができる
としているので、一部の都道府県に限らず「自動車運転免許の停止処分」を受ける可能性はあると言えます。
「悪質な違反者」とは、人身事故を起こした場合などが該当しますが、事故を起こしていない場合でも、警察の判断次第で免許停止処分を受ける可能性があります。
これは、普通免許に限らず「中型・普通二輪・原付」など全ての運転免許に言えることで、自転車の酒酔い運転で免許を停止された場合、車だけでなくバイクや原付などにも乗ることができなくなってしまいます。
自転車で飲み会に行った場合、帰りは必ず押して帰るようにしましょう!