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遅延損害金(利率5%)の定義や発生時期でも書いているように遅延損害金の利率は5%です。
低金利時代を経験している我々からすると破格の金利ですよね。
交通事故に遭い疲弊している状況ですとあまり物事を深く考えられないかもしれませんが、遅延損害金の充当の関係上、自賠責の貰い方によって賠償金の総額が変わってしまうので一読しておいて下さい。
加えて、労災保険の場合の遅延損害金の取扱いについても記載しています。
自賠責を先取りすると得?それとも損?
自賠責保険金は死亡の場合は原則3千万円と決まっています。
例えば任意保険も含めて1億5千万円が損害額となった事例を考えてみると、自賠責保険から3千万円、任意保険から1億2千万円の請求をしていくことになります。
この1億5千万円については合計で請求することもできますが、自賠責保険の3千万円部分だけ先に請求して受け取ること(いわゆる「先取り・被害者請求」)もできます。
また自賠責の仮渡金制度を使えば一部だけ貰うことも可能ですね。
被害者感情としては一部でも先に受け取った方が安心感というものが得られるかもしれないですが、遅延損害金という点から考えると果たしてどちらが得なのでしょうか。
損害額1億5千万円の場合、先取りをしなかった場合は裁判で1億5千万円を請求額とすることになりますが先取りをした場合は3,000万円を引いた1億2千万円を請求額とすることになります。
請求額がそのまま損害賠償金と認定されたとすると、遅延損害金は1億5千万円を元に計算するか1億2千万円を元に計算するかという違いが生じてきます。
事故の発生から支払まで2年間かかったとすると遅延損害金は以下の様になります。
先取りした場合
1億2千万円×5%×2年=1,200万円
先取りしなかった場合
1億5千万円×5%×2年=1,500万円
差額は実に300万円にもなります。
かなり大きな金額になりますので急を要していない限りは先取りはしない方が得ということになりますね。
自賠責保険と労災保険の遅延損害金の扱い
交通事故に遭遇した時、自賠責保険と労災保険の両方から給付を受ける事ができないことは「労災保険と自動車保険の関係性は?併用できるの?」で説明しました。
遅延損害金という観点から見ると、自賠責保険と労災保険のどちらから給付を受け取ったかによってその受取額が遅延損害金と元本のどちらに先に充当されるかが異なってきます。
原則は以下の民法491条1項が定める通りとなります。
債務者が1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
つまり、弁済を受けた場合はまず遅延損害金に充て、その残りを元本に充てることになります。
では原則を元にそれぞれどのように違うかを見てみましょう。
自賠責保険の場合
判例によると保険会社から自賠責保険金の一部を受け取った時は、その支払はまず遅延損害金に充てられ、残りを元本に充てることになります。
つまり、全額を受け取るまでは遅延損害金は発生し続けるということになります。
労災給付の場合
労災保険からの給付を受けた場合はというと、判例によると受け取った給付金はまず元金に充てるべきであるとされており、元本を受取った後の残りの給付を受取り終わるまでの遅延損害金は新たには発生しないという扱いになります。
受取る側からすると、自賠責保険の方が一部を先に受けた場合に残りの元本に対しても遅延損害金がもらえるので、労災給付よりも嬉しいということになりますね。
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