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日本の自賠責保険の後遺障害等級認定は、あまり融通が効かないとされています。どういうことなのか?少し詳しく見て行きましょう。
個々人の事情が反映されない例
例えば、顔の傷に関する後遺障害等級は、その程度に応じて「第7級 12号」「第9級 16号」「第12級 14号」の3段階に分けられます。
ちなみに「第7級」は「外貌に著しい醜状を残すもの」と定義されているのですが、被害を受けた女性が「未婚の女優やアイドルなど顔の美しさを商売の基本とする女性」であろうが「既に結婚している高齢の女性」であろうが、全て画一的に判断されます。
つまり、事情がどうあれ第7等級に該当すると判断されれば自賠責の後遺障害金額の「1,051万円(7等級)」が支払われて終わりなのです。
次に、「第5級 6号」に「1上肢の用を全廃したもの」という障害の程度が定義されていますが、これも利き腕か否かは関係なく一律に保険金が支払われて終わりです。
右利きの人が左腕が使えなくなるのと、右腕が使えなくなるのとでは全く状況が異なってきますが、自賠責ではそこは考慮されません。
また、第五級には「1下肢の用を全廃したもの」という症状も挙げられています。つまり「1上肢の用を全廃したもの」と同じレベルと判断されているという事ですが、仮に被害者の職業がプロサッカー選手だったとしたらどうでしょうか?
被害者にとっては、腕が使えなくなるのと脚が使えなくなるのとでは、全く重みが違ってきますよね。自賠責ではこのような場合でも全く考慮してくれません。
自賠責保険の根本概念は「すべて平等」が意識されている
なぜ、自賠責では個々人の事情が詳しく反映されないかといえば、それはやはり「すべてを平等に」という前提で制度が運営されているからです。
自賠責保険は、「強制保険」ですから、そこに属人性を打ち出してしまうと「不公平」になってしまうという問題が有るのでしょう。従って、個々人の事情を損害賠償金額に反映させるためには、民間の機関が運営している「上積みの任意保険」であったり「訴訟」で斟酌してもらうしか有りません。
なお、個々人の事情は反映されませんが、被害者保護の観点から「不公平感」を除去するための等級認定は行われる事が有ります。
例えば、「第12級 12号」の定義は「外貌の醜状を残すもの」とされています。「醜状」とは顔面部に「長さ3cm以上の線状痕」が出来た場合の事を指します。
「醜状」には、もっと色々な定義が有りますが、割愛しています。
従って、本来の自賠責の定義からすると「2.98cmの線状痕」では等級認定されず、一切の自賠責保険金が支払われないことになりますよね。しかし、これではあまりにも被害者が可哀想だということで、2.8cmや2.9cmの線状痕であれば、等級は下がるものの14等級の障害として認定される事も有ります。
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