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男女平等が叫ばれ始めてから既に数十年以上経ちますが、未だに企業内における男性と女性の扱いは酷く差が有ります。
それは、男性と女性の平均年収等(*1)を比較してみても明らかです。
*1 もちろん、女性は出産等の影響で給与が上昇する前に退職することもありますし、給与の上昇幅が大きい総合職の割合が、男性に比べると少ないという事情も当然有りますが。
しかし、交通事故で「顔に傷が出来た場合」の取り扱いに関しては、男性よりも女性の方が優遇されていた時代が有ります。
平成23年以前には両者には大きな違いが有った
冒頭で述べたように、「顔に傷が出来た」という事実は男性でも女性でも変わりありませんが、やはり「女性の顔の傷の方」が将来の結婚等を考えると不利になるという考えが有ったのか、両者の取扱には差異が設けられていました。
具体的には以下の通りです。
■平成23年度4月以前の顔の傷に関する等級
「外貌に著しい醜状を残すもの」(大)
女性7級
男性12級「外貌に醜状を残すもの」(小)
女性12級
男性14級
それぞれの自賠責保険における保険金額は以下の通りです。
7級:1,051万円
12級:224万円
14級:75万円
男性の場合は「顔の傷」でいくらあがいても、自賠責で7等級の認定は受けられないというのが従前の取扱でした。
7等級と12等級の差額は827万円ですから、大変大きな差です。
改正された経緯
改正される契機となったのが、2010年5月(平成22年)に京都地方裁判所が出した等級認定の取り消し命令です。
火傷のせいで顔を含めた上半身に酷い後遺障害が残った男性に対して、女性の場合よりも低い11等級が認定されていたのですが、これが取り消されました。
結局、国の方も控訴を断念し、「男女間で等級認定に差異を設けている状態」は違憲であると確定したのです。
改正後(現在)の取り扱い
改正後(平成23年5月以降)は顔の傷の取り扱いに関して、以下のように振り分けられるようになりました。
- 第7級・・・外貌に著しい醜状を残すもの
- 第9級・・・外貌に相当程度の醜状を残すもの
- 第12級・・・外貌に醜状を残すもの
これにより、改正前は第14級10号で「男子の外貌に醜状を残すもの」が削除され、男女平等の取り扱いが実現されました。
改正前後の状況は以下の画像を参照して下さい。
醜状の程度の目安
ここで、問題になってくるのが「醜状」の程度です。
どれくらいの傷であれば何等級に該当するのか?「顔面部」に限定して紹介すると以下のようになります。
- 著しい醜状・・・鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没
- 相当程度の醜状・・・5cm以上の線状痕(従前は7等級の事項だったが、改正で9等級に変更)
- 単なる醜状・・・10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線状痕
醜状として認められる為には「人目につく」事が条件として挙げられます。
従って、髪の毛や眉毛で隠せる醜状に関しては、等級認定が認められない場合も有ります。
なお、自賠責では上記基準で画一的に判断されることになりますが、上積み保険や裁判においては被害者の職業や、未婚・既婚の状況等により、上乗せの賠償金が支払われることも有ります。
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