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今回は妊娠中絶費用が医療費として損害賠償が認められるのかというテーマでお話したいと思います。
なぜこのようなテーマを採用したかというと交通事故によって中絶を行う原因には2通りあるからです。
- 交通事故による受傷が直接の原因となる中絶
- 交通事故による受傷が直接の原因ではない中絶
交通事故による受傷と中絶の因果関係があるかないかは損害賠償を考える上で非常に大切な考え方になりますので少し解説してから妊娠中絶費用についてお話していきたいと思います。
損害賠償として認められる為には交通事故とその傷害の因果関係が必要になってきます。
なぜなら交通事故における損害賠償請求は、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)として行うので、不法行為(交通事故による加害)と受傷の間に因果関係が必要になってくるのです。
極端な具体例ですが、事故後に虫歯のせいで歯が痛くなり虫歯の治療をした場合を考えてみましょう。
普通に考えて虫歯と事故に因果関係は有りませんよね?そのためこのような場合には治療費用を請求しても認められないでしょう。
ただ、事故によって顔面を強打して歯が折れたので義歯代を請求するとかは当然認められます。
それでは妊娠中絶費用について見ていきましょう。
妊娠中絶と交通事故
ここでは妊娠中絶費用の他にも慰謝料についても言及していきます。
交通事故による受傷が直接の原因となる中絶
交通事故によって受けた傷害によって早産・死産または中絶が必要になった場合には損害賠償の対象となります。
これは事故と中絶に因果関係があると考えられるからです。
また胎児が交通事故の受傷により死亡した場合には胎児の死亡慰謝料は認められませんが、胎児が死亡したことによる本人への慰謝料の増額が認定された例が有ります。
ケース1-妊娠18週
交通事故により頸部挫傷・右足間接捻挫の傷害を負い、かつ胎児が死産した事故に関して、胎児死亡に対しての慰謝料350万円を認めた例
ケース2-妊娠36週
交通事故により腹部への強い圧力により胎児が死亡した事故に関し、妊娠36週であり新生児と紙一重である事、両親のショックは相当であるとして母親に700万円、父親に300万円の慰謝料を認めた例
交通事故による受傷が直接の原因ではない中絶
よくあるケースは事故後に妊娠していた事が発覚するような場合です。
傷害の診察・治療では投薬やレントゲン撮影など胎児に悪影響を及ぼす可能性が高い処置が行われますが、被害者は妊娠している事を知らないので胎児への影響を考えずに治療方法を選択してしまいます。
そして、事故の怪我の治療後、生理が来ない・体調が悪いなどの理由で婦人科を受診し、そこで初めて妊娠していることに気付くというパターンですね。
投薬やX線は胎児に悪影響を及ぼし、奇形児や精神発達遅滞の子供が産まれてくる確率をを高めます。
このような異常出産への不安から中絶をしてしまう女性もいるのです。
このような場合には中絶したこと自体は事故と直接関係はないので中絶費用を損害賠償として請求できるのかが問題になってきます。
判例では上記のような場合でも中絶の手術費用を損害賠償として認めているものがあります。
ケース1-19歳女性
交通事故で傷害を負い、レントゲン撮影や薬を服用し治療を受けた後に婦人科で妊娠している事がわかり、妊娠している事を知らずにレントゲン撮影や投薬治療を受けたとして、妊娠中絶手術は仕方ないものを認められ手術費用約19万円を認めた例。
ケース2-32歳女性
事故直後の婦人科の診察で妊娠4週目であることが判明。
また不正出血をしていた事からその原因が切迫流産か子宮外妊娠かは断定できないもののその可能性も有るとして、止血の為の通院治療費を認めた例。
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