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交通事故で被害者が入院すると、治療の過程で治療費以外にも日用品を買い揃えたりテレビを見るためのテレビカード代など様々な入院雑費が発生します。
そこで入院雑費にはどのようなものがあり、どこまでが損害賠償金を計算する上での損害として認められるかについて見ていきましょう。
入院雑費にはどのようなものがある?
病院に入院したときに発生する入院雑費には主に以下の様なものがあります。
- ①日用品や雑貨の購入費
- ②栄養補給費
- ③通信費
- ④文化費
- ⑤家族通院交通費
- ⑥医師や看護師への謝礼
- ⑦将来の雑費
①日用品や雑貨の購入費
入院するとその間は病室で生活をしていくことになるので、パジャマや下着などの衣類・洗面具やコップなどの食器類が必要となります。
②栄養補給費
入院中は病院から食事が提供され、必要に応じてブドウ糖の点滴を打つなどの処置がされるので、基本的には栄養に関して心配をする必要はありません。
しかし入院計画によっては、医師から病院から提供される食事以外でも牛乳やヨーグルトなどを摂取するように指示されることがあります。
この場合は自分で購入する必要があります。
③通信費
入院中には家族に電話をしたり、仕事で会社に連絡をしないといけないこともあります。
連絡に必要な電話代や手紙を出す為の切手代等の費用も入院中には発生することになります。
④文化費
入院をしていると、症状によっては一日中ベッドから動けないこともあります。
そこで雑誌を買ったり備え付けのテレビを見る為の費用が発生することになります。
⑤家族通院交通費
入院をしていると、家族の方が衣類の洗濯や必要な物の調達などで病院に頻繁にきてくれます。
家族が病院に通うのにも電車代やガソリン代等の交通費が発生することになります。
⑥医師や看護師への謝礼
手術をしたり、長期の入院が必要な場合には、患者が医師や看護師へ謝礼を渡すことがあります(大きな病院では倫理上受け取らない決まりがあるところが多い様です)。
この謝礼が入院雑費として認められるかについては別途「医師や看護師に対する謝礼は入院雑費として認められるか?」で解説していますので参考にしてください。
⑦将来の雑費
①〜⑥の入院雑費とは性質が少し異なりますが、被害者に重度の後遺障害が残る場合は長期の入院が必要となります。
そうすると紙おむつなどの衛生用品については継続的に相当量が必要となってきます。
入院雑費や将来の雑費はいくらまで認められる?
入院雑費が認められるのは、事故がなければ発生しなかった不測の費用を賠償するためです。
それなのに退院後でも使える物や必ずしも必要とは言えない物まで入院雑費として認めてしまうと、加害者の負担が不当に重くなってしまいます。
そこで以下の様に一定の目安金額が定められています。
自賠責基準
自賠責基準では、原則1日1,100円まで入院雑費として認められています。
しかし、1,100円を超えると絶対に認められないという訳ではなく、社会通念上妥当な範囲かつ必要な物であれば実費分が認められます。
交通事故損害額算定基準
交通事故損害額算定基準では、入院雑費は目安として1日1,400円〜1,600円と定められています。
あくまでも目安であり、以下の判例の様に高い金額が認められることもあります。
なお、以前は何を買ったのか事細かに領収書を添付して加害者に請求をしていたのですが、最近の裁判ではわざわざ領収書を添付しなくても、当然必要となる雑費として一定金額を認めるというスタンスになっています。
逆に目安金額を大きく上回る領収書があったとしても、必要性が認められなければ入院雑費として認められない傾向にあります。
被害者の自宅から病院が離れている為、通信費を含め1日2,000円の入院雑費を認めた例。
将来の雑費については、入院雑費と違い実際にかかった金額は現時点では確定していません。
被害者個々の状況によって必要となる金額は異なるため、過去の現実の支払額などを参考に具体的な金額を算定していくことになります。
①日雇い労働者の後遺障害事例。
週3回程度の入浴が必要であるため、平均余命までの24年間について入浴費として2,007万円を認めた例
②脳挫傷や意識障害の後遺障害がある被害者の事例。
紙おむつなどの消耗品や出張理髪料として1日800円、平均余命までの531万円を認めたものの洗顔液やシャンプーなどは交通事故が無くても日常生活で必要であるため認めなかった例。
③四肢麻痺などの後遺障害がある被害者の例。
紙おむつや尿取りパッドが必要であるとして、将来雑費として1日2,000円を平均余命まで認めた例。
④意識障害の後遺障害がある被害者の事例。
おむつや歯ブラシ、ティッシュ・コットンシーツ・グローブ・バスタオル・自動血圧計など37点を必要として年額約127万円を請求したが、交通事故が無くても必要となるものが多く含まれていたため年額の内3割を否認した例。
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