この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。
交通事故で傷害を負った場合には病院で怪我を治療します。
ほとんどの場合は医師のおかげで治癒していきます。
しかし医師は神ではなく人ですから完璧に治る保証は有りません。
ごくたまに医療ミスによりさらなる損害を負うケースがあります。
こういった場合には共同不法行為となり加害者と医師が連帯責任で拡大した損害を負担する事になりますが、その負担割合はどうなるのでしょうか?
医療ミスがあった場合の負担割合
問題となるのは医療ミスによって拡大した損害に対して加害者と医師の損害の負担割合です。
医療ミスなので医師だけに責任がありそうですが、そもそも事故がなければ医療ミスも起きなかったので、交通事故の加害者にも責任は発生します。
そこでこの拡大した損害の負担割合をどのように考えるかですが、医師と加害者の「寄与度」で負担割合を判断します。
つまり拡大した損害という結果に対して交通事故と医療ミスという2つの原因がどれだけ寄与したのかによって損害を負担する事になります。
判例によればこのような損害賠償は連帯責任になり、寄与度による負担割合のみに限定されません。
つまり被害者は加害者の一方に全額請求する事ができます。
ただし、各個人の責任額は負担割合までなので仮に全額を支払った場合には他の相手に負担割合によって求償をする事になります。
事故後に再度事故にあった場合の負担割合
1度目の事故の治療中に再度事故に遭うという不幸なケースですね。
体のどこかが不自由になっているので健康な人に比べると事故に遭う確率は高くなります。
ではこういった場合の損害の負担割合ですが、2パターンに分けて考える必要が有ります。
- ①1度目と2度目の負傷箇所が同じ場合
- ②1度目の負傷箇所と2度目の負傷箇所の判断が付かない場合
■①1度目と2度目の負傷箇所が同じ場合
この場合には2度目の事故が発生した時点で1度目の事故の加害者の損害賠償は打ち切られ、2度目の加害者が引継ぐ事になります。
■②1度目の負傷箇所と2度目の負傷箇所の判断が付かない場合
このケースでは1度目が足、2度目が腕のようなわかりやすい場合はそれぞれ別に損害賠償請求すればよいだけです。
しかし、怪我が全体に至るような場合にはそれぞれの事故の責任割合が判断できません。
そのためこのように複雑な場合には1回目の事故で負傷した傷の回復の程度を基準に1度目と2度目の事故の寄与率を定めた上で賠償額の負担割合を判断する事になります。
1度目の怪我がほぼ回復しているような場合には2度目の加害者が80%~90%の責任割合になるでしょう。
【コラム】医療ミスと過失相殺
事故と医療ミスが重なった場合に過失相殺はどうなるのかという問題があります。
判例によれば事故における過失相殺は医療ミスによる損害賠償には影響を及ぼさないとしています。
過失相殺はある不法行為における負担の公平な分担を意図したものであって、他の不法行為に対しては考慮することは認めないとしたものです。
例えば、交通事故(加害者の過失が80%で被害者の過失が20%)と医療ミスによる損害額が1,000万円だった場合に、この損害に対する寄与度が交通事故が50%、医療ミスが50%とすると、交通事故の加害者は500万円を負担する事になりますが過失相殺により80%の400万円を被害者に賠償する責任が発生します。
一方医療ミスを犯した病院又は医師は500万円全額を負担する事になります。
交通事故の被害者の過失20%は医療ミスに関しては過失相殺をしない事になります。
関連記事をチェックする