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営業用車両が事故に遭うとその車両を修理する期間中や買い替えに要する期間中にその車両を動かすことで得られた利益・収入を得る事ができなくなります。
本来事故に遭わなければ得られたであろう収入を休車損害といい損害賠償請求をする事になります。
休車損害の基準
営業用車両の場合は操業を続けていれば得られる純益(収入から経費を差し引く)を休車損害として請求する事ができます。
特に緑ナンバーや黒ナンバーなどの営業用車両は国土交通省から許可を得て操業しているので、使用不能となったからといって無許可の車で代替する事ができないため利益をあげる事ができなくなります。
休車損害の注意点
■車両を借り入れた場合
この場合には使用不能となった車両の代わりに借り入れた車両で売上をあげる事ができるため休車損害の問題ではなく代車料の問題になりますが、借り入れた車両でも事故前の売上水準に満たない場合には休車損害が認められます。
所有車両と下請け業者を利用して営業していた運送業者の保有車両の休車損害について、自己所有車両に粗利益率と下請け業者の車両を利用した粗利益率の差である21.83%を休車損害として認めた例
■遊休車が利用可能な場合
遊休車を使用不能な車両の代わりに操業にまわせるとすれば休車損害は発生しない事になりますので休車損害の損害賠償請求はする事ができません。
通常運送などの事業を営んでいる企業は複数台の車両を保有していると考えられる事からこのような遊休車の存在を考慮する必要が出てくるのですが、複数台所有しているから即休車損害を否定する事にはならず、その稼働実態や経営手法を考慮して判断される事になります。
■休車損害を否定した判例
タクシー会社の休車損害について、当事業は遊休車が存在する事が通常考えられ、遊休車の存在や休車損害の発生に関して主張・立証できなかったため休車損害を否定した例
■休車損害を認めた判例
遊休車がある貸し切りバスの休車損害について、事故車両と同格の車両を多数保有し、代替が用意に可能である場合を除いて、事故車の保有者に対して遊休車を利用して操業させる事相当でないとして、同各の車両は1台のみであった事、またその稼働率は70%を超えていたことを考慮して休車損害を認めた例
休車損害の計算方法
休車損害は以下の式で求める事になります。
休車損害=1日当たりの損害額×休車期間
1日当たりの損害額算定
休車損害算定の式を構成する1日当たりの損害額は、通常は「ある期間の売上額からその期間の休車をした事によって不要となる経費を控除しさらにその期間で除すること」によって求める事になります。
例えば事故前90日間の売上額が100万円でその期間の当該車両の経費が10万円であった場合には、1日当たりの損害額は(100万円-10万円)÷90日間=1万円となります。
■計算に用いる売上額の期間
判例では明確な基準は示されていませんが、多く使用されている期間は事故前3ヶ月間の売上と経費から1日あたりの損害額を算出しています。
同型車の事故前3ヶ月間の売上額から必要経費である人件費・燃料などを差し引き90日で除する事によって1日当たりの損害額14,902円を基に134万円の休車損害を認めた例
その他にも季節の変動を考慮して事故前3ヶ月間で計算するのは妥当ではないとして、事故前1年間の平均売上を利用する場合や前年度の同時期の売上を利用する場合もあります。
■控除する経費について
事故車が休車する事によって発生しなくなる経費に関しては上記のように求めた売上額から控除する必要があります。
つまり車両の稼働に対して比例して発生する変動経費(燃料費・人件費・高速道路料金・オイル代・タイヤ消耗費など)は控除する事になり、休車したとしても発生するような固定費(車両減価償却費など)は控除しません。
貨物自動車の休車損害について、売上額から控除する経費は変動経費のみを控除し、固定経費に関しては控除する事は妥当ではないとしてき休車損害456万円を認めた例
休車期間の算定
休車期間は修理期間、又は買い替えに要する期間と納車に要する期間を基に算定する事になります。
ここで注意が必要なのは前述したように国土交通省に営業用として使用する許可を得る為の期間も考慮する必要がある事です。
また警察の捜査の為に留置される期間や事故の相手側との交渉が難航して修理又は買い替えが遅れる事も考慮されます。
■事故車を廃車し、新車購入の注文また納車までの期間である64日間を休車期間として認めた例
■事故捜査の為、警察に留置された16日間を含め休車期間を95日間認めた例
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