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任意の自動車保険とは異なり、自賠責保険は自動車を持っている人は必ず加入しないといけない、強制保険です。
加入せずに運転をした場合には、「1年以下の懲役か50万円以下の罰金」が課せられる事になります。
また違反点数も6点と大きく、それだけで免許停止となります。
しかし中にはこういった違反とは無縁の、自賠責保険に入ることが強制されていない特殊な自動車があります。
ここでは自賠責保険に入らなくてもいい、いわゆる「自賠責適用除外車」について見てみましょう。
自賠責保険に入らなくていい自動車
自賠法第10条では、以下の様に自賠責保険加入義務からの除外規定があります。
国その他の政令で定める者が政令で定める業務又は用途のため運行の用に供する自動車及び道路以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車については、適用しない。
そして具体的には、自動車損害賠償保障法施行令1条の2で、以下の4種類の自動車が除外の対象とされています。
- 自衛隊関係の自動車
- アメリカ軍関係の自動車(日本国内にあるものに限定)
- 国連軍関係の自動車(日本国内にあるものに限定)
- 道路以外の場所でのみ使われる自動車(いわゆる構内専用車)
上記の自動車については、自賠責保険を付ける必要は無いのですが、契約締結を希望し保険会社が引き受けてくれるのであれば保険契約をすることも出来ます。
あくまでも、自賠責保険に加入する事が「強制されていない」ということですね。
ところで、自衛隊の駐屯基地などがある地域では、自衛隊の車両が一般道を走っているところをよく見かけますよね。
この様な地域では自衛隊の車両との接触事故もたまに報道されています。
そこで、自賠責保険が強制とされていない自衛隊関係の自動車の様な適用除外車との間で交通事故が発生した場合、被害者はどの様に保護されることになるのでしょうか?
自賠責適用除外車との事故
自賠責保険に加入していない自動車との事故に巻き込まれた場合、一般的に大きく以下の2点について被害者が困る事になります。
- ①自賠責の等級認定が受けられない。
- ②死亡時の保険金が受け取れない。
①自賠責の等級認定が受けられない。
自賠責適用除外車の様に、加害者が自賠責保険に加入していないという事は、「自賠責の等級認定を受けることが出来ない」ことを意味しています。
通常示談をする場合や裁判で損害賠償請求をすることになると、後遺障害については自賠責で定められている後遺障害の等級認定を受けることで、損害額が算定されることになります。
しかし、相手方が自賠責保険に入っていない場合は等級認定が受けられないため、損害額を計算する上での明確な基準がなくなってしまい、示談交渉などが難航することが考えられます。
②死亡時の保険金が受け取れない。
自賠責保険に加入している場合、被害者が死亡すると被害者側には3,000万円を限度として支払われることになります。
3,000万円を超える損害が出る場合には、任意保険でカバーされることになるのですが、自賠責保険に加入していないと3,000万円までは加害者自らが負担しなければなりません。
一般的な方であれば「3,000万円を負担しろ」と言われても中々難しいですよね。
しかし、法律で定められている自賠責保険の適用除外車は、基本的に自衛隊などの様に政府が絡む車両です。
つまり、交通事故が発生したときに被害者は政府を相手に損害賠償請求をする様なものです。
国が相手だと、お金も有るだろうから簡単に損害賠償に応じてくれるのでは?と思うかもしれませんが、そう簡単にはいきません。
自賠責適用除外車である自衛隊の使用する自動車との間に起きた死亡事故で、自衛隊は「一方的な等級診断を基に850万円という低い賠償額を提示してくる」という行為に出ました。
被害者からするとショックな話です。
この例では訴訟の結果、4,200万円まで賠償金額が上がったので最終的には被害者が保護されたことになりますが、当初の提示金額には驚きですよね。
自賠責保険に加入している一般車両であれば、自賠責保険から3,000万円を上限に支払われることから比べると、自衛隊が当初提示した金額は一般的な交通事故の相場よりも、かなり小さなものとなっています。
国が相手だからといって泣き寝入りするのではなく、しっかりと戦っていく姿勢が必要ですね。
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