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日本の自賠責保険では「重過失減額制度」と呼ばれる制度が存在しており、交通事故被害者に重大な過失が無い限り、自賠責保険の範囲内では満額の保険金が支払われます。
この重過失減額制度は、被害者の保護・救済の観点から”被害者の過失”をある程度までは容認し迅速に保険金を支払いましょう、という事で制定された制度です。実際、この制度が採用された時は非常に評価が高かったと言われています。
しかし、この制度は被害者側に重過失があれば保険金が減額されます。また、裁判問題にまで発展すると「重過失減額制度」の適用が無くなります。重過失減額制度の適用が無くなると、厳密な過失相殺が行われるので、被害者側に満足な保険金が支払われない可能性がある制度です。
そこで、この記事では”台湾”では自動車事故の被害者(自動車事故で損害を受けたもの全般の意味)に対してどのような補償を行っているかをチェックし、日本の自賠法との比較を行っていきたいと思います。
台湾の強制保険の詳細
台湾では、日本の自賠責保険にあたる強制保険部分については【完全無過失責任】が採用されています。つまり、強制保険部分については、被害者にどんな過失が有ったとしても完全に補償されます。
一方、強制保険で補償されない部分については【過失責任】が採用されています。このように、台湾では強制保険と任意保険とで異なる責任原則が採用されているので、日本のように裁判問題に発展したからと言って”責任原則”が変わる事は有りません。
そういう意味では、台湾の強制保険は被害者救済の立場に立っていると言えるでしょう。
台湾の強制保険の補償金額
無過失責任制度を採用していたとしても、強制保険で支払われる保険金の額が非常に小さいものであれば、被害者救済が実現出来ていない事になります。
この点、台湾の強制保険の保険金額は”死亡”や”後遺障害1級”と判定された場合には日本円にして約550万円となっています。
これを高いと取るか低いと取るか?人によって判断が大きく別れるところだと思います。そこで、国民一人当たりの所得を判断の基準として利用してみましょう。
自賠責保険の補償項目である「逸失利益」は、被害者の収入金額を基に計算されますからね。
国 | 2012年度一人当たり国民総所得 |
---|---|
日本 | 46,140USドル |
台湾 | 6,560USドル |
出典:国際統計専門サイト「GLOBAL NOTE」(会員のみ情報閲覧可能)
参考サイトによると、一人当たり国民総所得では日本が46,140ドルに対して台湾は6,560ドルと約7倍の差が有ります。日本の自賠責保険金額が死亡の場合3,000万円で有ることを考えると、台湾の保険金額も妥当と言えるかもしれません。
注:今の日本の自賠責保険の保険金額が被害者救済の観点から妥当と言っているわけでは有りません。日本と台湾を比較した時にこの水準であれば台湾の保険金額も妥当と判断出来るという意味です。
ちなみ、世界では強制保険部分に限度額が無い国も有ります。例えば、ベルギーやフランス、アイルランドなどです(1994年時点の情報です)。
迅速な保険金支払い
台湾では、被害者が保険金の請求書類を提出した日の翌日から起算して15日以内に支払いが行われます。一方、日本では支払期日は規定されていません。基本的に1ヶ月前後で支払われますが、損害調査等が原因で支払時期が遅くなる事も有ります。
なお、日本と同様に「仮渡金制度」が採用されており、この制度によって請求で出来る金額は死亡の場合で限度額の50%までとなっています(日本では死亡時の仮渡金請求金額は限度額の約1割)。
強制保険部分については、台湾の保険の方が優秀かもしれませんね・・・。
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