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交通事故で傷害を負った場合には自賠責保険から傷害に対する保険金が支払われます。
傷害の保険金といえば治療費に関する物だけと考えられるかもしれませんが、治療費も含めその他休業損害と慰謝料また文書科その他の費用が保険金の計算に含まれます。
それでは自賠責保険では治療費、休業損害、慰謝料その他の費用に関してどのように損害額を計算するのか見ていきましょう。
参考記事:【後遺障害】の場合の損害額の算定方法(自賠責保険の場合)
まずは治療費から見ていきます。
治療費の損害額計算方法
治療費には様々な関係費用があります。以下でそれぞれ説明していきますが、そのほとんどが必要と認められる実費となっています。
そのため計算というよりは実際に掛かった費用が損害額となります。
そのため領収書などで証明する必要がありますので、お金を支払う際には領収書を必ず貰うようにして大切に保管してください。
またその費用が治療に必要かどうかを判断するのは医師となりますので、自分の判断でマッサージを受けた費用や市販の薬の購入費用などは損害額として認められない場合があります。
治療関係費の内容
- 診察料
- 入院料
- 投薬料、手術料、処置料など
- 義肢等の費用
- 通院費、転院費、入院費、又は退院費
- 看護費
- 諸雑費
- 柔道整復等の費用
- 応急手当費用
- 診断書等の発行費用
治療関係費は様々な費用が含まれています。
それぞれの費用の内容を見ていきましょう。
■診察料
初診、再診、往診料を言います。
■入院料
病院に入院するための必要な費用を言います。
また医師が必要と認めた場合や病院に運ばれた時に空き室が無く個室部屋に入院せざるを得ない場合の個室料金も含まれます。
個室料金は差額ベッド代とも言われ、1人・2人部屋などに入院する場合に発生する費用です。
■投薬料、手術料、処置料など
治療に際して必要な薬や処置の費用を言います。
つまり病院での輸血や麻酔や検査の費用が含まれ、薬局などで市販されている薬は医師が必要と認めた場合に限り損害額として認められます。
■義肢等の費用
義肢、歯科補てつ、義眼、メガネ、補聴器、松葉杖などの制作費用やこれらの修繕費用・再調達費用も含まれます。
ただし、メガネ(コンタクトレンズ)の費用は50,000円が限度、歯科補てつに関しては、歯冠・加工義歯(ブリッジ)については1歯につき80,000円が限度となっています。
■通院費、転院費、入院費、又は退院費
通院・転院・入院・退院に際しての必要な交通費を言います。
■看護費
看護のために必要な費用を言います。
看護費には入院中のものと退院後の自宅と通院時の看護費用があります。
看護費用が認められるに医師の要看護証明と付添看護自認書が必要です。
○入院看護
入院中の看護費に関しては近親者が付き添った場合には1日につき4,100円、職業的看護人に付き添ってもらう場合には実費が認められます。
看護師が身の回りの事も世話をしてくれる完全看護の制度を採用している病院の場合医師が付添が必要とする証明書が出ないことが多いです。
しかし被害者の症状などから付添看護費用が認められるケースもあります。
○自宅又は通院看護
自宅や通院時の付添では近親者の場合には1日につき2,050円、職業看護人に看護をしたもらった場合には実費が認められます。
被害者が12才以下の子供の場合には入院・通院・自宅での看護は医師の証明は必要なく看護費が認められます。
■諸雑費
1日1,100円が認められます。
療養に必要な物品の購入費用がこれにあたります。
例えば、パジャマや歯ブラシやテレビの使用料が認められます。
■柔道整復等の費用
柔道整復術師やはり師やマッサージ師などの施術費用の実費が認められますが、原則医師が必要と認めたものに限られます。
参考記事:「柔道整復師や鍼灸師に代表される東洋医学は適切な治療費として認められにくい」
■応急手当費用
事故現場での緊急・暫定的な手当の費用の事を言います。
骨折している恐れがある場合の当て木や、止血するための処置にようした費用が応急手当費用に該当します。
また応急手当を事故現場の住宅や店舗で受けた場合に畳や布団等を汚した場合の費用も含まれます。
■診断書等の発行費用
保険金を請求する為に必要な書類を発行してもらう為の発行手数料の実費が認められます。
診断書や診療報酬明細書や後遺障害診断書や看護要証明書などの発行費用がこれにあたります。
以上のようなものが治療費として認められます。
色々と細かい規定も有りますのでその都度確認していくことが重要です。
続いて休業損害の算定方法を紹介します。
休業損害の算定方法
交通事故の怪我の治療の為の入院や通院により仕事を休まざるを得なかった場合に、休まなければ得られたであろう収入の事を休業損害と言います。
自賠責保険ではどのように休業損害を計算するかを見ていきましょう。
休業損害=5,700円×休業日数
自賠責保険では事故の傷害での休業による収入の減少や有給休暇を使用した場合には1日につき原則5,700円となっています。
ですが、1日の休業損害額が5,700円以上であると立証する事ができれば19,000円を限度として支払われます。
1日の損害額が5,700円を超えるかどうかの算定方法
■給与所得者(サラリーマンなどの場合)
事故前3ヶ月間の給与額を90日で割る事によって算定します。
なお、立証資料としては給与明細書や源泉徴収票等が考えられます。
■事業所得者(個人商店経営などの場合)
事故前1年間の収入額から必要経費を除いて本人の寄与率を掛けて365日で割る事により算定します。
なお、確定申告書等が立証資料になります。
事業主本人がどれだけ事業所得対して貢献していたかを表す割合です。
つまり1人で事業を営んでいたら本人の寄与率は100%となります。
また2人で営んでいても休業中に店を閉店した場合には事業主がいないと経営が成り立たない事から、この場合も寄与率は100%と考えられます。
しかし、閉店しなかった場合にはもう一人の従業員でも事業を続行できるので事業主の寄与率は100%ではない事になります。
つまり所得額まるまる本人が貢献しているわけではないので貢献の割合によって減額します。
これが寄与率です。
ではどうやって寄与率を算定するのかというと、税金の申告制度によって変化します。
つまり青色申告なのか白色申告なのかということです。
青色申告の場合には事業主本人の所得額が明示されているので寄与率を考慮する必要はなく申告書の所得額をもって休業損害日額を計算することになります。
次に白色申告ですが、白色申告はちゃんとした記帳がされていないため事業主本人の所得額がわかりません。
そのため寄与率による減額計算が行われるのですが、年間所得によって扱いが変わってきます。
年間所得が200万円以下の場合・・・寄与率による減額無し
年間所得が200万円以上の場合・・・寄与率は60~80%が目安となり適宜認定されます。
*寄与率控除後200万円以下となる場合には所得額を200万円として休業損額日額を算定します。
家族専従者がいる場合には以下の3つのうち最も多くなる金額を休業損害日額とすることになります。
- (確定申告書の所得金額+専従者控除額)×寄与率÷365日
- (収入金額-諸経費)×寄与率÷365日
- 確定申告書の所得金額÷365日
(参考記事:リーフ行政書士事務所)
■パートタイマーやアルバイトの場合
事故前3ヶ月の収入総額を出勤日数で割ることによって1日当たりの収入額を算定します。
休業日数
原則実治療日数となり、実治療日数とは治療の為に病院に通った日数です。
入院した日数は当然休業日数として認められます。
また通院した日数も休業日数として考えますが、傷害・症状の程度によっては通院が必要では無いとされる場合もあります。
勤務先に休業損害証明書を作成してもらう事によって休業日数を証明する事になります。
結論:休業損害を請求できます。
理由:有給は会社から給料が支払われるお休みなので会社からも保険からも二重でお金を貰う事になりますが、本来この有給は交通事故がなければ旅行などの私用に使えたものが、交通事故という加害者が原因で使わざるを得なくなったので損害と考えるようです。(京都地裁平成23年2月1日、東京地裁平成6年10月7日-参照:交通事故損害額算定基準 by日弁連交通事故センター)
また休業した事により次年度の有給が取得できなかった場合にも損害として認めた判例もあります。(東京地裁平成16年8月25日、大阪地裁平成20年9月8日-参照:交通事故損害額算定基準 by日弁連交通事故センター)
慰謝料の算定方法
傷害の場合の慰謝料の計算方法を見ていきましょう。
4,200円×通院期間です。
自賠責保険では1日の慰謝料は原則4,200円です。
また、通院期間とは治療期間と実治療日数の2倍の日数を比較して少ない方とします。なお、治療期間は事故発生日から治療終了日又は症状固定日までとなります。
参考記事:症状固定とは
例 治療期間が50日、実治療日数が30日の被害者の慰謝料の計算
通院期間:治療期間が50日<実治療日数30日×2=60日となるので治療期間50日を採用することになります。
慰謝料は4,200円×50日=210,000円
文書科その他の費用
文書料とは医療関係の書類以外の書類を発行してもらうのに必要な手数料の事をいいます。
例えば、交通事故証明書や印鑑証明書や戸籍謄本などです。
交通事故証明書 | 540円 |
---|---|
印鑑証明書 | 200~400円 |
戸籍謄本 | 450円 |
除籍謄本 | 750円 |
その他の費用には被害者を救助・捜索するための費用や事故現場から病院までの搬送費用や交通事故現場への近親者の交通費や宿泊費(事故現場が遠隔地の場合)などが実費として認められます。
上記のようなものをまとめて損害額として算出します。
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