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民間の損保会社が販売している任意保険の保険料には、当然のことながら企業利益分が上乗せされています。
私企業ですから営利を追求するのは当然のことであり、この企業利益分をどれだけ含めるのかによって保険料は変わってきます。もちろん、会社としての経費の状況も関係してくるのは言うまでも有りません。
一方、強制保険である自賠責保険の場合はどうなっているのでしょうか?利益が出ても良いのでしょうか?この記事では、自賠責保険に適用されている「ノーロス・ノープロフィットの原則」について詳しく見ていきたいと思います。
ノーロス・ノープロフィットの原則とは
自賠責保険の保険料を決定する上で守らなければならない原則が【ノーロス・ノープロフィットの原則】と呼ばれるものです。ノーロス・ノープロフィットの原則は自賠法25条で以下のように規定されています。
責任保険の保険料率及び責任共済の共済掛金率は、能率的な経営の下における適正な原価を償う範囲内でできる限り低いものでなければならない。
条文だけ見ると小難しく感じますが、要は自賠責保険は利益も損失も出ないように運用される必要がある、という事が書かれています。これをノーロス(損失)・ノープロフィット(利益)の原則と言います。
自賠責保険は、あくまで国主導で、交通事故の被害者の救済を目的として全ドライバーに加入を義務付けているものなので、そこからは利益も損失も出してはならないという考えです。
民間企業に自賠責保険の引受を義務付ける矛盾
自賠責保険はノーロス・ノープロフィットの原則を元に運営されていますが、実際に引受・運営業務をしているのは”民間の損害保険会社”です。
しかも、自賠責保険の引受は民間損害保険会社の義務とされています。つまり、自賠責保険の引受けをしないのであれば、自動車保険(任意保険)の販売もしたらダメ!という事になっているわけです。
民間企業に、強制保険の引受を義務付けているにも関わらず、そこから利益を出してはいけないと言うのは少し強引な気がしませんか?と言っても、もちろん自賠責にかかる経費分はしっかりと支給されますけどね。
【参考】自賠責保険料を算定する際に加味されている項目
ノーロス・ノープロフィットの原則が適用される自賠責保険料は、色々な項目を加味して計算されています。以下、主だったものを簡単に見てみましょう。
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- 保険金支払原資
交通事故が起こる確率や1事故当たりの損害額を元に保険金支払原資となる保険料を算出します。
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- 損害保険会社の経費
自賠責保険加入に係る手続き費用や自賠責に関連した調査費用、代理店等に対する代理店フィーなどが該当します。
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- 過去の運用利益や運用損失
ノーロス・ノープロフィットの原則は有りますが、毎年毎年収支がピッタリ一致するわけではなく、必ずいくらかの誤差が生じます。この誤差(運用利益の場合もあれば運用損失の場合も有る)は翌年度以降の保険料に反映されます。
以上の項目を主として、他にも賃金統計や物価統計なども加味した上で自賠責保険料は決まります。
また、車種(普通乗用車や貨物自動車、バイク等の区分)によって、事故発生率や1事故当たりの損害額が違いますので、自賠責保険の金額も車種ごとに当然異なります。(年齢や性別・等級などによって金額が変わる任意保険よりは圧倒的に画一的な価格設定ですが。)
こうした項目を考慮して、損害保険算出機構が基準料率を算出します。そして、”金融庁”及び”自賠責保険審議会”にて当該基準料率が適正かどうかの判断が下され、最終的な自賠責保険料が決定されます。
なお、自賠責保険料は毎年改定の検討がなされます。最新の自賠責保険料は下記記事を参照して下さい。
参考記事:「自賠責保険料の金額早見表!」
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