自賠法16条-被害者による保険者への直接請求権

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被害者の自賠責保険の直接請求権は自動車損害賠償保障法16条1項(以下自賠責法)にて認められています。

被害者の直接請求権が、被害者にとってどれだけ重要な権利なのかを説明していきたいと思います。

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原則的な保険金支払いの流れ

まずは条文を見てみましょう。

(保険会社に対する損害賠償額の請求)
第十六条  第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。

自賠責法16条1項の条文だけを読むと、被害者の直接請求権が当然のように思えますが、自賠責保険の契約上は【被害者はまったくの部外者】なのです。

自賠責保険は「保険者となる損害保険会社」と「被保険者である車の所有者」が契約している保険です。

ですので、交通事故の損害賠償の支払いは「①被保険者である加害者が保険者である保険会社に請求し⇒②保険会社が請求を受けて保険金を被保険者である加害者に支払い⇒③加害者が被害者に支払う」という流れが原則的な流れです。

この流れの中では、被害者は第三者となるので、保険者である損害保険会社への保険金の請求権は原則ありません。

原則的な保険金の流れ

保険者(損害保険会社)⇒加害者⇒被害者

ですが、この原則だけでは色々な弊害が有りました。そこで、例外として被害者の直接請求権を認めたのです。

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直接請求権がない場合の弊害

では、どんな弊害が有ったのでしょうか?例えば、以下の様な例が挙げられます。

  • ①加害者が保険金を使用してしまう
  • ②加害者が失踪したり自殺した場合、損害賠償を請求する相手がいなくなる
  • ③加害者が破産した場合、保険金債権は破産財団の管理下に入り、その他の債権者に配当される恐れある

第一に、加害者が多額の借金など何らかの理由で、お金に困っていた場合です。

目の前に被害者への保険金があれば、借金返済に回してしまうかもしれません。

第二に、加害者がプライベートで事故を起こしているなら、原則として損害を請求できる相手は唯一加害者のみとなります。(社用車での事故なら、会社に対して運行供用者責任を追求できる。)

このような場合に、加害者が失踪又は自殺をしてしまうと、損害賠償を請求する相手がいなくなり被害者は一切損害を補償されません。

参考「損害賠償は誰に請求出来る?ケース別のまとめ

最後は加害者が破産してしまった場合です。

この時、本来なら「被害者」に支払われるべき保険金が、加害者のその他の債権者の損害の補填に使用される恐れが出てくるのです。

第三のケースの場合、実際には保険法22条1項に規定されている「責任保険契約の先取特権に関する規定」が適用されるので、被害者が受取るべき保険金は他の債権者より優先されます。従って、被害者が保険金を貰えない可能性は少ないです。

自賠責保険は被害者を保護する事が目的なので、このような弊害が存在していては目的を果たせません。

そこで、被害者保護に資するために自賠法では第16条において、自賠責の直接請求権を認めたのです。

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自賠責16条の直接請求権の恩恵

自賠法16条は、被害者の直接請求権を認めると共に「保険者である保険会社」も賠償義務者としました。

これにより、仮に加害者が支払いに応じてくれなくても、直接保険会社に賠償請求することで、交通事故により受けた損害を回復する事が出来るようになったのです。(二重取りは出来ません。)

もう一つは直接請求権(被害者請求)が認められた事により、示談が全てまとまっていなくても、後遺障害等が発生した時には等級認定が降りた時点で、自賠責の保険金を先取り出来るようになりました。

これにより、お金に困っている被害者も当面の生活費等々を工面しやすくなった訳です。

なお、自賠法17条において、自賠責の仮渡金制度も定められているので、そちらの利用も可能です。

但し、直接請求するとなると全て資料を自分で集めなくてはならず、手続きが煩雑になるというデメリットが有ることも知っておいて下さい。

合わせて読みたい

自賠責保険の任意一括払いと被害者請求を比較

出典・参考HP:電子政府の総合窓口 e-Gov

 

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