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後遺障害を負った場合の損害額算定方法について見ていきたいと思います。
後遺障害の場合には傷害の損害と後遺障害の損害に分けて考えなければなりません。
傷害の損害に関してはこちらを参考にしてください。
参考記事:【傷害】の場合の損害額の算定方法(自賠責保険の場合)
この両者を分けるタイミングは症状固定と医師が判断した時です。
症状固定とは交通事故で負った怪我の経過が完治までは行かずに一進一退となる状態の事を言います。
症状固定となると次に後遺障害の等級の認定となります。
まず最初に損害額の算定にあたってとても重要になるのが等級であるということを理解してください。
なぜ等級が重要になるのかを理解してもらうために自賠責保険での後遺傷害における等級毎の支払われる保険金の限度額をご覧ください。
自動車損害賠償施行令別表Ⅰ介護を要する場合
後遺障害等級 | 限度額 |
---|---|
第1級(介護を常時要する) | 4,000万円 |
第2級(介護を随時要する) | 3,000万円 |
自動車損害賠償施行令別表Ⅱ
後遺障害等級 | 限度額 |
---|---|
第1級 | 3,000万円 |
第2級 | 2,590万円 |
第3級 | 2,219万円 |
第4級 | 1,889万円 |
第5級 | 1,574万円 |
第6級 | 1,296万円 |
第7級 | 1,051万円 |
第8級 | 819万円 |
第9級 | 616万円 |
第10級 | 461万円 |
第11級 | 331万円 |
第12級 | 224万円 |
第13級 | 139万円 |
第14級 | 75万円 |
(出典:損害保険料率算出機構)
第1級と第2級では410万円、第2級と第3級では371万円もの大きな差があります。
そのため被害者としてはどの等級に認定されるかで補償される金額に大きな差が出てきます。
また限度額だけの話ではなく後に話をする慰謝料や逸失利益の計算の際にも等級が大きく関係してきます。
参考記事・出典:厚生労働省 障害等級の認定基準
後遺障害の場合の損害額算定方法
後遺障害の損害額を算定する項目は以下の通りです。
逸失利益の算定方法
逸失利益とは、本来得られるはずが事故によって得られなくなった利益の事を言いますが、実際にどれだけの利益が減ったかということではなく、後遺障害等級毎に労働能力喪失率というのが定められておりその割合によって逸失利益を計算することになります。
労働能力喪失率は等級によって決まっていて、後遺傷害を負った事により事故前と比べて仕事をする能力がどれだけ失われたかを表す数値です。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
第1級 | 100% |
第2級 | 100% |
第3級 | 100% |
第4級 | 92% |
第5級 | 79% |
第6級 | 67% |
第7級 | 56% |
第8級 | 45% |
第9級 | 35% |
第10級 | 27% |
第11級 | 20% |
第12級 | 14% |
第13級 | 9% |
第14級 | 5% |
(出典:損害保険料率算出機構-自賠責支払基準別表)
■仕事をしている人の場合
逸失利益=事故前1年間の年収又は全年齢平均給与額の年齢相当額のいずれか高い方×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
■収入を得ていない人(幼児、学生、専業主婦など)の場合
逸失利益=全年齢平均給与額の年齢相当額×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
逸失利益は将来受け取る物を今一括で受け取る事になるので、期間の利益分を控除しなければなりません。
要するに将来の価値を現在の価値に割り戻す必要があるということです。
参考記事:ライプニッツ係数
■仕事をしている人の場合の計算例■
年齢40才男性、年収600万円、等級は第10級
逸失利益=年収600万円×第10等級の労働能力喪失率27%×40才のライプニッツ係数14.643=2,372万166円
67才まで就労可能として計算しています。
■収入がない人(幼児、学生、専業主婦など)の場合■
年齢15才女子、学生、等級は第13級
逸失利益=女性の全年齢平均給与額330万1,200円×労働能力喪失率9%×ライプニッツ係数15.695=466万3,110円
未成年の平均年収は全年齢平均給与額を用いて計算します。
また専業主婦の平均年収に関しては男女の平均賃金を用いる事もあります。
未成年者のライプニッツ係数は現年齢から67才までの係数(例の場合18.418)から現年齢から18才までの係数(例の場合2.723)を控除して計算します。
慰謝料の算定方法
自賠責保険の慰謝料に関しては予め金額が決まっているので、計算方法というのはありません。
認定された等級によって受け取る保険金が決まります。
下記の表を参考にしてください。
後遺障害等級 | 慰謝料 |
---|---|
第1級常時介護を要する | 1,600万円 |
第2級随時介護を要する | 1,163万円 |
第1級 | 1,100万円 |
第2級 | 958万円 |
第3級 | 829万円 |
第4級 | 712万円 |
第5級 | 599万円 |
第6級 | 498万円 |
第7級 | 409万円 |
第8級 | 324万円 |
第9級 | 245万円 |
第10級 | 187万円 |
第11級 | 135万円 |
第12級 | 93万円 |
第13級 | 57万円 |
第14級 | 32万円 |
被扶養者がいる場合には下記の表の金額がそれぞれ限度額に加算されます。
後遺障害等級 | 加算金額 |
---|---|
第1級常時介護を要する | 200万円 |
第2級随時介護を要する | 170万円 |
第1級 | 200万円 |
第2級 | 170万円 |
第3級 | 144万円 |
また、介護を常時要する第1級と介護を随時要する第2級には介護の為の初期費用として以下の金額が加算されます。
後遺障害等級 | 加算金額 |
---|---|
第1級常時介護を要する | 500万円 |
第2級随時介護を要する | 205万円 |
(出典:損害補償料率算出機構-後遺障害による損害)
扶養者がいる人が常時介護を要する第1級の後遺障害を負った場合の慰謝料は
1,600万円+200万円+500万円=2,300万円となります。
最後に損害額を計算してみましょう
後遺障害の場合の損害額算定は逸失利益+慰謝料でしたね。
■45才サラリーマン男性(年収600万円)が10等級の後遺障害をおった場合■
逸失利益
600万円×0.27×13.163=2,132万406円
慰謝料
187万円
損害額は2,132万406円+187万円=2,319万406円となります。
これに傷害部分の治療費や休業損害などを加算して総損害額を計算します。
ただし、第10等級の自賠責保険の限度額は461万円ですので、限度額を超えた1,858万406円は加害者に請求するか任意保険会社に請求する事になります。
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