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交通事故の相手方の保険会社が自分が契約している会社と同じ保険会社だった場合「示談交渉を保険会社に任せても大丈夫なの?」と不安になりますよね。
特に被害者の人は、受け取れる保険金が恣意的に減額されるのでは?と心配になることでしょう。
結論を先に書くと、被害者と加害者が同じ保険会社であっても、別の保険会社と対峙する場合と同様にちゃんと仕事をしてくれます。
ただ保険会社に任せきりにしておくと、知らない間に損をする場合も有ります(相手が別の保険会社の場合も同様です)。
そのため、保険金に関する知識を身につけ、また対応策も知っておいた方が良いでしょう。
同じ保険会社だからといって過失割合や示談金が恣意的に操作される事はない
事故の相手方の保険会社が自分が契約している会社と同じであっても、過失割合や示談金が恣意的に操作される事は有りません。
例えば、交渉当初の過失割合「7:3」だったものが、長期間契約している人を優遇して「3:7」と逆転してしまう。
こんな事は起こりえません。
というのも、過失割合や示談金(保険金)は、一定の事実・根拠に基づいて決定されるためです。
- 過失割合・・・過去の判例に基づいた認定基準に従い、交通違反などの修正要素を加味して決定(参考:過失割合表の読み方や用語の説明)
- 示談金(保険金)・・・市場における時価や一定の支払基準に従って決定
事故後には、被害者側と加害者側にそれぞれ担当者が選任され、その担当者間で過失割合の交渉が行われ、最終的な過失割合及び示談金が確定します。
もちろん、過失割合が変動する事も有りますが、それはいずれかに交通違反が有ったなどの事実が反映された結果です。
決して恣意的な操作では有りません。
そのため、事故の相手方と同じ保険会社だからといって、疑心暗鬼に陥る必要は有りません。
信頼して示談交渉を任せても大丈夫でしょう。
実はメリットも有る
被害者・加害者双方の保険会社が同じ場合、保険金の支払いまでの時間が短縮される、というメリットが有ります。
保険会社が別の場合と比べると、担当者同士が連絡を密に取れますし、当事者から提出される書類も1つの保険会社が管理するので内容の確認・訂正といった事務処理が迅速に行われるからです。
被害者・加害者ともに事故解決が長引くほど、精神的に疲れるものです。
スムーズに事故解決出来る、というのは嬉しいメリットではないでしょうか。
だからといって安心は出来ない!示談への対応策を知っておこう
事故の相手が同じ保険会社であっても、上記のように示談は不正なくしっかりと行われます。
しかし、保険会社は民間企業なので、支払う保険金を最小限に抑えたいのが本音です。
そのため、全てを保険会社に任せておくのも良くありません。
保険会社から提示された保険金が妥当な金額なのかを判断する知識や不満が有る場合の対応策などは知っておいた方が良いでしょう。
治療の打ち切りを迫られても屈しない
保険会社は交通事故の被害者に対して、治療の打ち切りを迫る事が有ります。
その理由は単純で、治療期間が伸びるほど、治療費や慰謝料の金額が大きくなっていくからです。
事故の被害車の中には「保険会社に治療の終了を促されたから」と治療を止めてしまう人もいます。
これでは受け取れる保険金が少なくなるばかりか、ケガの治療も満足に受けられません。
治療を終了するかどうかを判断するのは、あなたでも保険会社でもなく、医者です。
保険会社が何を言おうと、医者の指示に従い、完治するまで通院するようにしましょう。
支払われる保険金に不満が有る場合は弁護士費用特約を
保険金の支払基準は3つあり、支払われる金額が少ない順に並べると「自賠責保険基準」「任意保険基準」「日弁連基準」となります。
これらの支払基準の存在を知らなければ、自賠責保険基準で提示された金額を不思議に思わず、受け取ってしまう事になります。
また、金額が少ないと感じても「これが当社の精一杯の金額です」という言い分に納得してしまう事も有るでしょう。
そのため、提示された保険金が妥当な金額なのか、そして受け取れる正当な金額はいくらなのか、を判断できる知識が必要になります。
ただ、個人で金額を調べ、そして保険会社と交渉するのは容易な事では有りません。
そこで利用して欲しいのが「弁護士費用特約」です。
裁判や示談の費用の他にも法律相談料も補償してくれる特約です。
法律の専門家である弁護士に依頼して、保険金の計算及び保険会社との交渉を任せると良いでしょう。
なお、自動車保険に弁護士特約を付帯していない場合は、日本損害保険協会の相談受付窓口の「そんぽADRセンター」に相談して下さい。
まとめ~事故の相手が同じ保険会社でも別の保険会社でも油断大敵~
交通事故の相手が同じ保険会社であっても、公正妥当な基準によって過失割合や保険金が決まります。
そのため、不正が行われたり、被害者又は加害者の一方の意見だけ尊重される事は有りません。
しかし、その結果、提示される保険金が妥当な金額となっているかは別問題です。
これは事故の相手が別の保険会社でも同じ事が言えます。
満足のいく保険金を得るためには、それ相応の知識と対応策を備えておく必要が有ります。
専門家である弁護士に相談するのも1つの方法です。
その費用は弁護士費用特約で賄う事が出来るので、付帯されているか保険証券で確認してみましょう。
ファイナンシャル・プランナー(FP)からのコメント
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
FPからのコメント
非常に稀なケースではありますが、長く保険代理店をしていると、交通事故の当事者の双方が契約者(同じ保険会社)である事があります。
お客様次第ではありますが、私が経験したケースにおいては、双方のお客様が責任割合を含めて事故対応を私に全て一任頂いた事もあり、円滑且つ円満な対応を行う事が出来ました。
同じ保険会社であったとしても、事故対応は事故担当者の主観で進められる事はなく、客観的な事故状況から進められます。また、近年はドライブレコーダーが普及している事もあり、事故時の状況把握が可能である為、著しくどちらかに偏った解決になる事は少ないと考えられます。
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