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幼児や小学生など、まだ働いていない年少男子・女子が交通事故により死亡した場合、将来の逸失利益はどのようにして算出することになるでしょう。
当然可愛い我が子が交通事故なんかに遭わないように最新の注意を払ってくださいね。
また、運転する側の人間も事故を起こしてしまえば、被害者の家族の人生が大きく変わってしまう事を再認識して、安全運転を心がけましょう。
年少男女の逸失利益
交通事故損害額算定基準には、年少男女の逸失利益に関して以下の様に記載されています。
賃金センサスによる全年齢平均賃金額を基礎とする。
つまり「全ての年齢層の平均賃金」を集計した上での平均値を基礎として逸失利益を計算するということです。
男女間の差は合理的?
サラリーマンやOLの場合は就いている職業で収入が明確に分かるので、逸失利益もそれぞれの収入を基礎として計算することになります。
職業によって収入は異なるので、ある程度男女間で金額に差がでることは、仕方が無いことといえます。
一方で年少者はまだ働いていない状況で、将来得るであろう収入を平均値から推測することになります。
この賃金センサスは男女別に分かれていて、男の全年齢平均賃金の方が、女の全年齢平均賃金よりも高くなっています。
例として、2013年の賃金センサス(男女別全年齢平均賃金額)を見てみると、男性は326万円、女性は232.6万円と、100万円近くの差があります。
男子の場合は学校を卒業した後は職業を持ち収入を得るのが一般的です。
従って、稼動可能期間を通じて逸失利益を肯定することに問題はありません。
一方で、女子の場合には、結婚あるいは出産を機に退職し、専業主婦となる人が多いのも事実です。
つまり、女子よりも男子の方が稼働期間は一般的には長くなり、収入も多くなる可能性が高いと言えます。
とは言っても、将来がまだどうなるか分からない年少者についてまで、男女間で差が出ることは合理的とは言えませんよね。
そこで最近では、男女間の差が無くなるように年少女子については、「全労働者(男女計)平均賃金額」を基礎として計算する方法を採用する傾向にあります。
上記の例で見た2013年の賃金センサスでは、全労働者(男女計)平均賃金は295.7万円となり、男の全年齢平均賃金との差は30万円程度まで縮まる事になります。
それでも男女間では差があるので、今後女性の社会進出がさらに活発化すると、逸失利益の計算方法も変わっていくかもしれませんね。
ちなみに、年少女子はいつまでが年少なのか?という問題はありますが、基本的には義務教育修了までが年少女子として扱われています。
①11歳の女の子の事例。
性別という属性のみで差を付けるのは不合理であるとして、全労働者の平均賃金を基礎収入とし、生活費控除割合を45%としてライプニッツ方式により算定した例。
②10歳の男の子の事例。
両親が共に大学院修士課程修了者であったことから、賃金センサス(男性・大卒・全年齢)平均賃金を基礎に算定した例。
③12歳、後遺障害の事例。
小学生のときから塾で熱心に勉強しており、事故後に通信制大学に入学していることから考えると、生涯を通じて大卒者程度の賃金を得る可能性が高かったと認められるので、賃金センサス(男性・大卒・全年齢)平均賃金を基礎として算定した例。
④9歳の男の子の事例。
大企業に就職し、平均的なライフスタイルを基準に、結婚し2児をもうけるものとして逸失利益を計算すべきと主張。
しかし、認められず、大学に進学したものと推定し、賃金センサス(男性・大卒・全年齢)平均賃金を基礎として、生活費控除率を50%とし、中間利息についてはライプニッツ方式を採用した例。
逸失利益から養育費は引くべき?
子供が交通事故で死亡すると、その後の成人までの養育費は不要になります。
そこで従来は逸失利益を算定するときに、養育費を差し引くという考え方がありました。
しかし、昭和53年の最高裁による判例が出て以降は、養育費は差し引かないという方法が一般的になっています。
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