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休業損害は、事故により働く事が出来なくなった為に得られなくなった収入のことをいいます。
この休業損害の金額は、原則として交通事故に遭遇する前の収入を基礎として計算していくことはこちらの記事でも書きました。
ところで、「収入」と聞くとサラリーマンや自営業の方を想像しがちですが、高校生や大学生の中にも勉強をしながらアルバイトで生計を立てている方はたくさんいます。
そこで、アルバイトをしている学生の休業損害はどのように計算するかを見ていきましょう。
事故によりアルバイトができなくなった場合
事故前にアルバイトをしていて収入金額が明確に把握できる場合は、治療のためにアルバイトを休んだことによって減少した収入を休業損害として請求することができます。
ただし、学生のアルバイトの場合は社会人と違って雇用状態が安定しているとは言えません。
というのも試験前になるとアルバイト日数を減らしたり、気に入らないアルバイトだとすぐに辞めてしまう、ということがよくあるからです。
そこで、過去の就労状況や継続性、授業等でアルバイト日数が減る時期なども検討し、現実的な就労予想日数を考慮した上で休業損害を算出していくことになります。
①20歳の大学生の事例。
大学在学中にアルバイトの収入が年間99万円あったが、就職活動や卒業論文の為に今後アルバイト日数が減る可能性は高いとして、大学在学中2年間の逸失利益として80万円を認めた例
②大学3年生(症状固定時は大学4年生)の事例。
アルバイトをしていた時間帯からしても大学生活・アルバイト・就職活動を両立できたと判断し、入院期間の全てについて事故前のアルバイト収入を基礎として休業損害を算定した例
アルバイト先を転々としている学生さんもいますが、判例の立場からすると継続して同じアルバイト先で働いている方が休業損害として認定されやすそうですね。
事故により卒業や就職の時期が遅れた場合
学生に休業損害が発生するのはアルバイトをしている時だけではありません。
長期間の治療のために卒業や就職の時期が遅れた場合は、予定通り就職していれば得られたはずの給与を失うことになるので立派な損害です。
そこで、卒業や就職が遅れてしまったのであれば休業損害として請求することが出来ます。
この場合の休業損害の金額の算定の仕方は、給与金額を明確に推定できるかどうかによって異なります。
給与金額が推定できる場合
会社から既に内定をもらっている場合、初任給はその会社の過去の給与支給実績などからある程度推定する事ができます。
給与の金額を推定できるのであれば、その金額を元に休業損害を算出することになります。
給与金額が推定できない場合
現在就活中でまだ就職先が決まっていないときは、会社毎に異なる給与の金額を推定する事はできません。
そこで、給与の金額を推定できない場合は、厚生労働省の公表している賃金センサス(学歴別の初任給平均値)を利用する事になります。
音楽大学4年生の事例で頸部・腰部の痛みから卒業試験を受ける事が出来ずに留年し、1年後にピアノ講師に就職。
賃金センサス平均賃金から留年中のアルバイト収入を控除した金額を損害として認めた例。
注:賃金センサスについては、厚生労働省 賃金構造基本統計調査を参考にしてください。
幼稚園児や小学生については休業損害は基本的に発生しません。
休業損害は働いて収入を得ている人が交通事故により働く事ができなくなった結果、収入が減った事に対する損害を請求するものです。
幼稚園児や小学生は基本的に働いて収入を得ることはないですからね。
ただし、中学生にもなると生活費や学費の為に早朝の新聞配達などのアルバイトをしている方もいるので、その場合は休業損害が発生する可能性はあります。
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