この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。
交通事故で受けた損害には精神的損害を填補する慰謝料があります。この慰謝料は入通院や後遺障害を負った事による肉体的・精神的損害また死亡事故の場合の遺族への精神的損害を填補する損害賠償項目のうちの1つです。
今回はこの交通事故の慰謝料に関して基本的な考え方の説明と慰謝料の金額の計算方法について紹介します。
交通事故の慰謝料の考え方
慰謝料の計算を考える前にまず交通事故の慰謝料の考え方について説明していきます。
慰謝料は人身事故のみで物損事故では原則として認められません
慰謝料は人身事故で怪我や死亡した場合にのみ加害者に対して請求でき、物損事故に関しては請求はできません。例えば大事にしていた時計が事故によって故障して修復不可能になり精神的損害を被ったとしても加害者に対して時計の破損に関しての慰謝料は請求できません。
例外として認められる場合もありますがかなり稀なケースでしょう。
参考「物損に対する慰謝料」
慰謝料算定方法は定額化・定型化している
慰謝料は精神的損害を填補するものなので自由に損害請求額を決定できそうですが、交通事故慰謝料では金額の計算方法は3つ基準どれをとっても定型化・定額化しています。つまり入通院1日につき4,200円とか、この後遺障害1級なら2,700万円~3,100万円の範囲内という風にです。
定額化・定型化しているのですが被害者や加害者側の事情を考慮して、それ以上の慰謝料を認める加算事由もあります。
慰謝料算定で考慮される事情・加算事由
慰謝料は定型化・定額化されていると説明しましたが、慰謝料決定の際には以下のような事情を加味して決定します。その結果定型化定額化された基準額よりも多めの慰謝料となる場合があります。
■考慮される事情・加算事由
- 被害者の怪我の部位・程度や年齢や職業など
- 交通事故により受けた間接的な損害(欠勤した事により退職した場合や学生が留年した場合など)
- 妊娠中の被害者が死産した場合など
- 事故の悪質性(飲酒・無免許・轢き逃げなど)
- 加害者の事故後の誠意の有無(見舞いや謝罪の有無や損害賠償の自己負担の有無など) 等
以上のような事情を考慮して交通事故の慰謝料の計算を行うことになります。
慰謝料計算の3つの基準
交通事故はすべてが同じような被害が出るわけではなく、千差万別の事故状況や被害状況となりそれぞれの慰謝料を迅速に計算するために自賠責保険と任意保険会社と弁護士・裁判所はそれぞれ基準を設定しています。これらを自賠責保険基準と任意保険基準と弁護士基準と呼びます。
- 自賠責保険基準-自動車損害賠償保障法施行令第2条並びに別表第一及び第二によって設定
- 任意保険基準-任意保険各社が独自に設定
- 弁護士基準-過去の裁判例を基に弁護士会が算定した基準。日弁連交通事故相談センターが作成した交通事故損害額算定基準(通称:青い本-全国版)と日弁連交通事故相談センター東京支部が作成した交通事故損害額算定基準(通称:赤い本-東京版)がこれにあたります。
3つの基準で計算される慰謝料金額にはおおきな違いがあります。具体的な数字は後で説明しますが以下のような慰謝料金額の順番になっています。
弁護士基準>任意保険基準>自賠責保険基準
交通事故被害者は、損害額が最も多く計算される弁護士基準を基に損害賠償請求をしていく事になります。
慰謝料金額のまとめ
慰謝料は以下のように事故の被害によって3種類に分けられます。また任意保険基準に関しては各保険会社独自に設定、かつ、非公開であるため以下のまとめでは自賠責保険基準と弁護士基準について紹介していきます。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
入通院慰謝料
自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|
4,200円×通院期間 | 入通院期間の計算表の金額 |
■弁護士基準の慰謝料計算表(一部抜粋)
(出展:交通事故損害額算定基準-日弁連交通事故相談センタ-著)
それぞれの基準の詳細は以下の記事を参考にしてください。
参考「【傷害】の場合の損害額の算定方法(自賠責保険の場合)」
後遺障害慰謝料
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1,100万円 | 2,700~3,100万円 |
2級 | 958万円 | 2,300~2,700万円 |
3級 | 829万円 | 1,800~2,200万円 |
4級 | 712万円 | 1,500~1,800万円 |
5級 | 599万円 | 1,300~1,500万円 |
6級 | 498万円 | 1,100~1,300万円 |
7級 | 409万円 | 900~1,100万円 |
8級 | 324万円 | 750~870万円 |
9級 | 245万円 | 600~700万円 |
10級 | 187万円 | 480~570万円 |
11級 | 135万円 | 360~430万円 |
12級 | 93万円 | 250~300万円 |
13級 | 57万円 | 160~190万円 |
14級 | 32万円 | 90~120万円 |
また自賠責基準では介護を要する後遺障害では限度額が1級では1,600万円に、2級では1,163万円に増え、また介護の為の初期費用が認められる他、被害者に被扶養者がいる場合に慰謝料が加算されます。
それぞれの基準の詳細は以下の記事を参考にしてください。
参考「【後遺障害】の場合の損害額の算定方法(自賠責保険の場合)」
死亡慰謝料
慰謝料の計算方法は以下のようになります。
■自賠責保険基準
慰謝料(本人又は遺族) | 慰謝料金額 |
---|---|
被害者本人への慰謝料 | 350万円 |
遺族への慰謝料(請求者が1人の場合)※1 | 550万円 |
遺族への慰謝料(請求者が2人の場合)※1 | 650万円 |
遺族への慰謝料(請求者が3人以上の場合)※1 | 750万円 |
※1被害者に被扶養者がいれば200万円が加算
■弁護士基準
被害者の属性 | 死亡慰謝料金額 |
---|---|
一家の支柱の場合 | 2,700~3,100万円 |
一家の支柱に準ずる場合 | 2,400~2,700万円 |
その他の場合 | 2,000~2,500万円 |
それぞれの基準の詳細は以下の記事を参考にしてください。
参考記事「「死亡」の場合の損害額の算定方法(自賠責保険の場合)」
参考記事「【弁護士基準】死亡慰謝料についての金額と判例」
関連記事をチェックする