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日本で起きる交通事故の被害者は全てが日本人であるとは限りません。日本にはたくさんの外国人が永住しており、さらに観光やビジネスなどの目的で入国してくる人もたくさんいますので、外国人が交通事故の被害者になる事もあります。
なぜここで外国人の話をしたのかというと、外国人が被害者になった場合には慰謝料を日本基準に合わせて支払うか否かという事が問題になるからです。つまり、日本円が外国では倍以上の価値になったりするため慰謝料を所得水準や物価などを考慮して現地基準(在留外国人の本来の国の水準に)で支払うか否かが問題になります。
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短期の治療で終わる場合は日本基準でOK
ただし、全ての外国人・事故に当てはまる問題ではありません。なぜなら傷害事故に関しては永住している外国人の場合には日本人と同様に考えても問題はなく、また帰国予定のある場合でも治療期間が短期間となる場合には日本で治療し完治するわけですからこちらも問題が無いでしょう。
■判例-韓国籍
治療期間が在留している期間に始まり、且つ、在留中に治療が終えるため傷害に対する慰謝料は日本の基準に照らして支払うべきとした例
これは簡単ですね。問題となるのは死亡事故に巻き込まれた場合や短期間で日本を離れてしまうような旅行者やビジネスマンが治療期間が比較的長期となる傷害事故や後遺障害を負った場合に日本基準に合わせるか否かです。
それではこれらの問題について裁判所はどういった判決を言い渡したのか見ていきましょう。
在留外国人が死亡事故に遭った場合
死亡事故の場合、賠償金は親族固有の慰謝料も含めて遺族が受け取る事になるので経済水準を考慮するかどうかが問題になります。
■判例1-イラン国籍
男性は日本人の前妻(子1人)と離婚調停中の後妻(子1人)がおり、約4年間日本で就労し家庭生活を送っていた事を考えると将来イランに帰国する可能性はかなり低いと考えられるため、日本の基準に照らし死亡慰謝料2.000万円を認めた例
■判例2-中国国籍
日本で就労し、その収入を中国の息子に対して仕送りをしていた実態を考慮すると日本の基準に照らして慰謝料を計算する事が妥当として慰謝料2,800万円を認めた例
■判例1-スリランカ国籍
スリランカ国籍の男性の死亡事故につき、遺族はスリランカに生活基盤があり将来も継続して同国で生活していくと考えられるため、経済水準等を比較すると日本との差は約10倍となる事を考慮し、死亡慰謝料500万円を認めた例。なお、この裁判は1審では日本の基準に合わせて2,600万円の死亡慰謝料を認めていました。
■判例2-イスラエル国籍
男性の死亡事故につきイスラエルの経済水準にひきなおして、慰謝料総額1,500万円(親族に対しては300万円)を認めた例
日本の基準のままの場合と外国の経済水準にひきなおす場合の双方の判例があり、画一的に処理されているわけではなく、被害者の生活状況や経済状況などを加味して判決が言い渡されているようです。
在留外国人が傷害事故に遭った場合
傷害事故の場合には、後遺障害を負うケースで問題になる場合が多いようです。それでは判例を見ていきましょう。
■判例1-イラン国籍
併合3級の後遺傷害を負った男性に対して、慰謝料総額2,020万円を認めた例
■判例1-中国国籍
後遺障害を負った事故につき、経済水準の違いを考慮して日本の基準に照らした場合の慰謝料の約70%を認めた例
■判例2-韓国国籍
後遺障害併合11級につき、慰謝料に関して韓国との経済水準の違いを考慮せざるを得ないとして総額380万円を認めた例
判例を見ていると、将来帰国する可能性を考慮して母国の経済水準に照らして慰謝料を計算する場合が多いように思います。
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