この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。
事故を起こした加害運転手は原則として自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任を負います。
しかし事故の原因が自動車に欠陥があった場合には加害者は運行供用者責任を負うことになるのでしょうか?
欠陥車で事故を起こした場合の責任
近年、自動運転停止機能などが登場して車の性能が向上しているイメージが有るので、自動車の欠陥を原因とした事故が発生する事があるのかな?と思うかもしれません。
しかし、数は少ないですが毎年のように発生しているんです。
(出展:自動車製造物責任相談センター-平成26年度事業報告書P5の図9)
では、アクセルやブレーキの欠陥で暴走して人身事故を起こしてしまった場合には被害者に対する損害賠償の責任は誰が負うことになるのでしょうか?責任の所在は自賠責法と製造物責任法が関係してきます。
まず事故を起こした運転者である加害者が運行供用責任者となるか否かは自賠責法3条の加害者の条件付無過失責任の話が関係してきます。
この自賠法3条に照らすと、自動車に構造上の欠陥が無かったことを立証した上でその他の免責要件をクリアしていれば加害者は運行供用責任者としての責任を負わされることは有りません。
しかし、今回の欠陥車両の場合にはそもそも欠陥が有るので、欠陥が無かったことを立証することが出来ません。
よって、加害者は運行供用者責任を負うことになります。
車両の欠陥が事故の原因なのに加害者が全ての責任を負うというのはあまりにもかわいそうな話ですよね。
そこで欠陥車両を製造したメーカーに対して製造物責任法に基づく損害賠償請求をしていく事になります。
この場合、事故が車両の欠陥が原因で起きた事を立証する事によってメーカーに損害賠償責任を負わせる事ができます。
しかし、消費者側は車両の知識・データを持っていないので、なかなか因果関係を立証する事は困難です。
そのため過去のリコール情報の収集や専門家・自動車製造物責任相談センターなどに相談して話を進めていくのが良いと考えられます。
【コラム】製造物責任法
製造物責任法は1995年に施行された製造業者に消費者が商品の欠陥によって損害を受けた場合に損害賠償を請求する事ができる事を定めた法律です。
PL(product liability)法とも呼ばれています。
損害賠償を請求する為には以下の事を証明する必要があります。
- 欠陥製品であること
- 欠陥により製品の故障や損壊以外に損害が発生した事
- 欠陥により損害を被った事
例えば、自動車を購入してエンジンを掛ける前にハンドルが取れてしまった場合には、ただ製品が損壊しただけでハンドルに欠陥があった事以外に損害は被っていないので損害賠償を請求する事ができません。
しかし、走行中にハンドルが取れてしまい人身事故を起こしたような場合には製造者に損害賠償を請求する事ができます。
この製造物責任法による損害賠償に関して消費者は上記の事を証明するだけで足り、民法のように製造者の欠陥に対しての過失まで証明する必要はありません。
そのため、購入した商品に欠陥があり被害を被った場合には欠陥製品の写真や被害状況の写真などの証拠保全、傷害を受けた場合には治療費などの請求書等をしっかりと保管しておくことが重要になってきます。
関連記事をチェックする