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「自賠責保険とは~自動車損害賠償責任保険の変遷~」を読んでもらえれば分かるように自賠責保険は事故の被害者を救済する目的で加害者側・・・つまり自動車走行者側が保険料を負担することで成り立っている制度です。つまり強制保険である自賠責部分に関しては事故被害者には一切の負担が生じません。
この発想、社会保険の一種である「労災保険」の発想と瓜二つと思いませんか?
労災保険では給与の支給を受けている労働者(正社員・パート社員・アルバイトの区分に関わらず使用者から給与を支払ってもらっている人全員)が業務上の災害に有った場合(負傷した場合や病気になった場合)に給与水準に応じた一定の給付を労災保険から支給することで事故を受けた本人や家族の生活を保障することを目的としています。
また労災保険が支給されることで給与が支給されないという従業員の不安も解消することが出来、一日も早い現場復帰を促すという目的も有ります。このような機能は非常に自賠責保険と似ていると言えるでしょう。
労災保険も自賠責保険も利用者側が保険料を負担する
労災保険の保険料は全額使用者側(事業主側・会社の場合は会社)の負担となっています。自賠責保険も被害者側に一切の負担が無いという意味で同様です。
ではなぜ、労災保険や自賠責保険に関しては利用者側が全額保険料を負担するのでしょうか?それは何か問題が発生した場合の賠償義務が使用者側や加害者側に有るからにほかなりません。当然利用者側はそれによって利益を享受しているわけですから被害車や従業員に何かしらの問題が生じればそこは負担してあげるべきという発想です。
ちなみに雇用保険に関しては使用者側の方が若干負担割合は多いものの、従業員側も負担します。
実際に事故が起こった場合に自動車保険が適用されるのか労災保険が適用されるのかについて少し論争が起きています。その辺りは下記記事を参考にして下さい。
コラム~自賠責保険は最低保障か基本保障か
自賠責保険は最低保障なのか基本保障なのか?自賠法が制定された当時は金額的にも小さく社会保障的な意味合いが強いという事で「最低保障」であるべきという意見が昔は占めていたそうです。
また上述しているように社会保険の一種である労災保険と形態が非常に似ていることから最低保障であるべきという意見も至極まっとうなように思います。
しかし、自賠責保険の保険金額が今日のように死亡の場合は最大3,000万円、後遺障害の場合は最大4,000万円と設定された事でこの自賠責保険は「最低保障である、最低保障であるべきである」という意見は陰を潜めていきました。
自賠責保険には現在税金の投入が行われていない点、国や地方自治体などの公共機関が運営しているわけではないという点、民間企業がその役割を果たしているにも関わらず営利を求めてはいけないという点(ノーロス・ノープロフィット原則)からするとやはり最低保障と考えるべきものでは無いでしょう。(私見です)
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