この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。
満20歳未満の未成年(法律上は少年と呼ばれる)が事件を起こした場合に、度々問題視されるのが少年法です。
被害者の事よりも加害者側の立場に立った少年法は、未成年の者が凶悪な事件を起こす度に話題に挙がってきます。
では未成年の者が交通事故を起こした場合にはどうなるのかというと、やはり少年法によって処分が決定されていきます。
成人と少年の交通事故を起こした場合の手続きの違いは以下の通りです。
対象 | 年齢 | 法律 | 裁判所 | 手続き |
---|---|---|---|---|
少年 | 満20歳未満 | 少年法 | 家庭裁判所 | 少年保護手続 |
成人 | 満20歳以上 | 刑事訴訟法 | 地方又は簡易裁判所 | 刑事手続 |
今回は満20歳未満の少年・未成年が交通事故を起こした場合の捜査や刑事責任について説明していきます。
警察の捜査
当事者が未成年の交通事故であっても警察は成人の場合と同様の捜査を行います。
それは実況見分に始まり、その後の任意捜査を行っていきます。
また悪質な道路交通法違反の場合には成人と同様に逮捕・勾留して捜査を行います。
捜査が終了してからが成人の場合と扱いが異なってきます。(少年法41条)
- 罰金刑のみが規定されている道交法違反の場合→家庭裁判所へ送致
- 懲役刑が規定されている道交法違反の場合→検察へ送致
検察の捜査
加害者が成人の場合には検察官が捜査そして正式裁判又は略式裁判の決定を行い刑事罰の決定を裁判の場へと移して行くことになります。
しかし、加害者が未成年の場合には検察官に代わって家庭裁判所が少年の処分を決定する事になります。
そのため検察官は警察から送致されてきた未成年事件は家庭裁判所に必ず送致する事になります(少年法42条)。
家庭裁判所の処分
検察官から送致を受けた家庭裁判所は事件の調査を行います。
この調査を行うのが家庭裁判所調査官で、この調査官は法律の専門家である検察官とは違い心理学や教育学の専門家で法律的な調査だけではなく少年や保護者との面談の中で家庭・生活環境や、少年の性格、経歴、動機など人間関係や環境などを考慮した調査を行います。
調査を行うのは基本的には在宅(身柄を拘束しない)で行われるようですが、成人の場合と同様で逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合や観護措置請求がされた場合には少年鑑別所に収容して調査を行う事もあります(少年法第17条1項二号)。
家庭裁判所の調査は、既にお話した通り人間関係や環境なども考慮するので、逃亡や証拠隠滅の他に少年の心身の保全を目的にした観護措置請求が行われる事があります。
例えば、家庭環境が良くない場合や、周りの人間の悪影響から保護するような場合です。
そして家庭裁判所調査官の調査が終了すると少年に以下の4種類の処分が下される事になります。
- 少年院・児童自立支援施設・児童養護施設への送致(少年法第24条1項二・三号)
- 保護観察処分(少年法第24条1項一号)
- 不処分(少年法第23条2項)
- 検察官へ送致(逆送)(少年法第20条1項)
少年院・児童自立支援施設・児童養護施設への送致
少年が在宅での更生が難しいと判断された場合には少年院送致の処分が下されます。
少年院は強制的に収容される施設ですが、児童自立支援施設への送致は施設に入所又は保護者の元から通う形になり開放施設に入所するといった点で少年院とは意味合いが違ってきます。
また児童養護施設は保護者のいない少年や虐待に遭っている少年を保護する施設なので家庭裁判所から送致する事はあまりありません。
保護観察処分
少年院に収容する必要は無く保護観察官の指導・監督の元改善・更生ができると判断された場合の処分で、少年は自宅で生活を送りながら、定期的に保護観察官や保護司と面会し、指導を受けます。
保護観察期間は原則として20歳までですが、処分を受けた年齢が18歳以上であれば2年となります。
また交通事故の場合には交通保護観察となり約6ヶ月間で保護観察の解除を検討します。
保護観察中の態度や行いなどが悪ければ少年院へ入所する処分が下される事があります。
不処分
保護観察が無くても更生が十分可能と判断された場合に不処分として処理が行われます。
検察官へ送致(逆送)
罪状や情状を鑑み、刑事処分とするのが相当と判断した場合に検察官に送致する事になります。
この処分を逆送(検察官→家庭裁判所→検察官という流れをとるため逆送という)と言い、以後成人と同様の刑事手続きに処されます。
京都・亀岡の少年が無免許運転によって事故を起こし3人が死亡、7人が重軽傷を負った交通事故は記憶に新しいのではないでしょうか?この事件は一旦家庭裁判所に送致されましたが、事故の重大さ等を考慮して逆送の扱いがなされ未成年の少年は地裁にて刑事裁判を受けました。
逆送に関しては少年法が問題にはならなかったのですが、刑事裁判によって下された判決が自動車運転過失致傷罪として懲役5年以上9年以下の不定期刑となり、危険運転致死傷罪(1年以上の有期懲役で最長20年)が適用されなかった事が問題となり、悪質な運転者に対する罰則を強化するために刑法から分離独立した平成26年5月20日に自動車運転死傷行為処罰法が施行されました。
コメント
この記事へのコメントはありません。