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交通事故で歯を欠損した場合に医療費の賠償が問題になることがあります。
問題の中心となるのは「インプラント治療」です。
なぜインプラント治療が問題になるのかというと治療費が高額(数百万円になる場合も)となってしまう点と治療という観点からするとその他の治療方法である可撤性部分床義歯やブリッジ義歯で十分であると考えられるからです。
「治療の観点」とは機能性と審美性の2つの側面を考慮するインプラント治療は失った歯を見た目として元通りにする点(機能性)では他の治療方法と同様なのですが、審美性つまり見た目の美しさを保つ・獲得する治療方法となるため治療の度を超えていると判断される場合があるのです。
そのため保険会社がインプラント治療は治療費が高額になるため不要だとして治療費として認めなかったり、裁判でも損害として認定されないような場合があります。
しかし、インプラント治療の全てが認められないわけではありません。(保険会社は認めないかもしれませんが)
損害賠償を争う裁判ではインプラント治療を医療費と認め損害賠償の支払いを命じる判例が増えています。
①8歯欠損の女性にインプラント治療が適切として治療費約460万円を認めた例
②12台のインプラント治療費の約721万円のうち歯周病疾患が原因である事も考慮して約3割を認めた例
歯を欠損した場合に主に考えられる治療方法としてインプラントと可撤性部分床義歯とブリッジ義歯の3つがあり、これらを比較した結果被害者にとって一番適切な治療方法がインプラントであると認められれば損害賠償として補償されることになります。
治療方法が適切かどうかは担当の医師などに証明してもらう必要があります。
先ほども紹介したとおり交通事故で歯を失った場合の治療方法は主にインプラントと可撤性部分床義歯とブリッジ義歯の3つです。
それぞれについて簡単に説明します。
■可撤性部分床義歯■
漢字ばかりですが簡単にいうと取り外し可能な入れ歯による治療方法です。
欠損した歯の両サイドの歯や歯茎にはめ込む形で欠損した部分を義歯で補います。
■ブリッジ義歯■
ブリッジは橋という意味で歯の橋をかけるイメージです。
つまり欠損した歯の両サイドの歯を支えにして欠損した部分に義歯を装着します。
橋の下に隙間があるのと同様にブリッジ義歯の場合には義歯の下に隙間ができるので食べカスなどが溜まりやすく特殊な口腔清掃用具が必要になります。
■インプラント■
インプラントはアゴの骨にチタン又はチタン合金でできた土台の部分の事を言い、その土台に義歯を取り付ける事で欠損した歯を補う治療法です。
インプラントの10年~15年後の生存率は約90%だそうです。
当然セルフ・ケアや歯科医での定期的なメンテナンスは必要になってきます。
15年以上維持できると思いますがその後インプラント自体を交換する必要が出てくるかもしれません。
上記のようにインプラントの生存率・耐用年数が10年以上はあるとされていますがその後どうなるかはわかりません。
交通事故でインプラント治療を採用した場合に将来再度インプラント治療が必要になってくるかもしれません。
このような将来のインプラント治療費まで損害賠償に含めて補償した判例があります。
■29歳男性-インプラントの耐用年数を20年と考え平均余命年数の53年のうちに2回は手術が必要であると考え将来の手術費用合計約87万円を認めた例
コラム【インプラントの料金】
インプラント治療は高額になるとされていますがいったいどれくらいの料金になるのでしょうか?
インプラントは土台となる部分と義歯の部分からなりそれぞれに土台を埋め込む手術費用と義歯の費用が必要になります。
これらの相場は土台となる部分の手術費用が10万円~30万円(約25万円が多い)、義歯の費用が5万~20万円(材質により上下)となっています。
その他に土台を打ち込むだけの骨が無いようなケースでは骨を造る手術が必要になり、その費用は数万円~数百万円になるようです。
また治療後のメンテナンス(年に1回~4回)費用が1回3千円~1万円必要になります。
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