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2010年に貸金業法が改正された際に「総量規制」という制度が設けられました。
制度が開始されてからある程度の年月が経過しているので、知っている人も多いと思います。
総量規制を定めた目的は「借り過ぎ」「貸し過ぎ」を防ぐ事です。
簡単にいうと借りられる金額(貸し出せる金額)に一定の制限を設けたわけです。
消費者金融などからお金を借り過ぎて自己破産してしまう人が続出したため設けられました。
さて自動車ローンについてですが、これも広い意味ではお金を借りる行為に該当します。
そのため、自動車ローンを申し込む時に総量規制が審査に影響を及ぼすのでは?と思う人もいるかもしれません。
そこで今回は「総量規制」と「自動車ローン」の関係について紹介したいと思います。
そもそも総量規制とは?
総量規制とは、貸金業者からの借入総額を「年収の3分の1」までに制限する制度です(貸金業法第13条の二)。
例えば、年収900万円の場合には借入総額が300万円までに制限される事になります。
冒頭でも紹介したように、この制度の目的は「借り過ぎ」「貸し過ぎ」の防止です。
お金を借り過ぎると返済額そのものが高額になり、借金返済に苦慮する事になります。
もし返済を延滞してしまうと、金利とは別に借入残高に対して遅延損害金も発生します。
これが怖いんです。
借入残高が多ければ、発生する遅延損害金も高額になります。
延滞し続けると雪だるま式に借金が膨らみ、最後には債務整理する事になってしまいます。
こういった状況に陥らないように総量規制が設けられたんですね。
ちなみに遅延損害金の上限利率は以下の通りです。
制限利息の1.46倍が上限となっています(利息制限法第1条各号、第3条)。
実際には14%~20%の遅延損害金を設定している場合が多いですね。
借入額 | 制限利息 | 遅延損害金の上限利率 |
---|---|---|
10万円未満 | 20% | 29.2% |
10万円以上100万円未満 | 18% | 26.28% |
100万円以上 | 15% | 21.9% |
総量規制の対象となる貸金業者
総量規制は「貸金業者」からの借入総額を制限する制度ですが、ここでいう「貸金業者」とは内閣総理大臣又は都道府県知事の登録を受けた業者です(貸金業法第3条)。
具体的には以下のような業者の事を指します。
- 消費者金融(アコム・アイフル・プロミスなど)
- クレジットカード会社(三井住友カード株式会社・三菱UFJニコス株式会社など)
- 信販会社(株式会社ジャックス・株式会社セディナ・トヨタファイナンス株式会社など)
厳密に言えば「クレジットカード会社」と「信販会社」は違います。
ただ、ほとんどの信販会社はクレジットカードを発行しクレジットカード業務も行っているので、クレジットカード会社に分類される場合も有ります。
これらの業者のキャッシング(現金を借りる)を利用する場合などに総量規制が適用されます。
ただし、クレジットカードのショッピング利用には貸金業法ではなく割賦販売法が適用されるので、総量規制の対象外となります。
銀行・ろうきんなどは総量規制の対象外
銀行も個人向けに貸付を行っていますが、適用される法律は貸金業法ではなく銀行法です。
そのため、総量規制の対象外となります。
同様の理由で総量規制の対象外となるのが、労働金庫(ろうきん)やJA、信用金庫などです。
それぞれに適用される法律は以下の通りです。
- 労働金庫(ろうきん)・・・労働金庫法
- JA・・・農業協同組合法
- 信用金庫・・・信用金庫法
- 信用組合・・・中小企業等協同組合法・協同組合による金融事業に関する法律
なお、消費者金融のイメージが強い「レイク」ですが、2011年から新生銀行のカードローン商品として取り扱われています。
そのため、適用される法律が銀行法となるので、総量規制の対象外となっています。
自動車ローンは総量規制の例外
結論から先に書くと、自動車ローンは総量規制の対象外です。
貸金業法施行規則(第10条の二十一第1項各号)には総量規制の例外が規定されていて、その中に自動車ローンも含まれているからです(同条三号)。
(個人過剰貸付契約から除かれる契約)
三 自動車の購入に必要な資金の貸付けに係る契約のうち、当該自動車の所有権を貸金業者が取得し、又は当該自動車が譲渡により担保の目的となつているもの
そのため、たとえ「クレジットカード会社」又は「信販会社」の自動車ローンであっても総量規制の対象外となります。
自動車ローンを組む際に総量規制の事は考えなくて良い、という事ですね。
ちなみに、自動車ローンが総量規制の例外となる理由は割賦販売法が適用されるからです。
総量規制対象外でも自動車ローンの審査に必ず通るわけではない
以上のように、自動車ローンは総量規制の対象外ですから、審査の際に総量規制を理由に落とされる事は有りません。
自動車ローンの審査において総量規制の基準は無関係という事です。
ローン金額とその他の借金の合計額が年収の3分の1を超えていても自動車ローンに通る事は有ります。
ただし、必ず審査に通るわけでは有りません。
「年収」と「借入額」は審査項目となっているので、返済不能と判断されれば落とされます。
やはり「年収」と「借入額」のバランスは大切なんですね。
まとめ
自動車ローンは総量規制の対象外です。
そのため、ローン金額が年収の3分の1を超えていてもローンを組めます(その他の理由で審査に落ちる事は当然有ります)。
ただ、自動車ローンを組む際には「年収の3分の1」という基準を一つの目安に考えておいた方が良いでしょう。
年収の3分の1という数字は、返済によって”生活が圧迫されないギリギリのライン”を意味する場合が多いからです(*)。
* 但し、年収の3分の1という数字はあくまでも目安です。
人によって自動車ローン以外にかかる毎月の固定費も違いますので、鵜呑みにしすぎないようにして下さい。
せっかく自動車を購入しても、返済に追われる生活になってしまっては元も子もありません。
カーライフを楽しむ為にも無理な返済計画を立てないようにして下さいね。
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