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交通事故で介護が必要になる障害を負った場合に家族の人が24時間365日介護を行うのは大変な一面があります。
そのため介護サービスを受ける方が障害を負った人にとっても家族にとっても良い場合も有ります。
(考え方は人それぞれですからね・・・。)
介護サービスと言っても色々ありますが、その1つとして自動車事故対策機構が運営している養護センターが挙げられます。
この養護センターは自動車事故対策機構の主な業務である被害者支援の一環として運営されているのですが、養護センターを運営しなければならない理由が被害者支援とは別にあるのです。
別の理由というのは公的介護保険の問題点です。
介護に関しては2000年に発足した公的介護保険を利用する方法が考えられるのですが、交通事故によって介護を要する場合には話は単純ではなくなります。
以下でその理由について説明します。
交通事故が原因で介護が必要になった場合に公的介護保険は使えない!?
公的介護保険は年齢によって2つのグループに分けられます。
- 65歳以上の人⇒第1号被保険者
- 40歳以上65歳未満の人⇒第2号被保険者
65歳以上の人は要介護となった原因が何であれ介護保険を利用することができるのですが、問題は40歳以上65歳未満の第2号被保険者の人は交通事故が原因で要介護状態になった場合には介護保険を利用することができないのです。
なぜかというと、第2号被保険者が公的介護保険を利用できるのは老化を原因とする16の特定の疾病によって要介護状態になってしまった時だけだからです。
「老化を原因」とする場合のみであることから「交通事故が原因」で介護を要する事になった被害者は非常に困ることになります。
そのため自動車事故対策機構が被害者支援の業務として養護センターを運営し介護サービスを提供しているのです。
公的介護保険は40歳以上の人が加入し、介護が要する場合に介護サービスを受ける事ができる保険です。
介護サービスは概ね以下の通りです。
・在宅介護
・施設介護
・介護環境を整えるサービス
・施設に入所しての介護
公的介護保険のサービスを受ける為には要介護認定(調査員による74のアンケートとコンピューターによる一次判定と介護審査会による二次判定)を受ける必要があり、介護の度合いにより7段階に区分されます。
要介護認定に関する基準の目安として厚生労働省は介護の内容を5つの分野に区分してこれらにかかる時間によって介護を要するかどうかまた、7段階のうちのどれに該当するのか判定を行う事にしています。
■介護の内容5分野■
- 直接生活介助-入浴・排泄・食事の介護
- 間接生活介助-選択・掃除等の家事援助
- 問題行動関連行為-徘徊に対する探索、不潔行為の後始末
- 機能訓練関連行為-歩行訓練・日常生活訓練
- 医療関連行為-輸液の管理・診療の補助
■上記の5分野にかかる時間による判定基準■
- 要支援-25分以上32分未満
- 要介護1-32分以上50分未満
- 要介護2-50分以上70分未満
- 要介護3-70分以上90分未満
- 要介護4-90分以上110分未満
- 要介護-110分以上又はこれに相当する状態
参考:要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令第1条、第3条
上記の判定基準に加え患者の疾病や医師の意見書などを勘案して審査・判定が行われます。
また要支援の区分は2つ(要支援1と2)あり、要支援2は要支援1の状態に部分的な介護が必要と判定された場合に該当するとされています。
介護が要すると判定された結果公的介護保険による支給限度基準額(1割は自己負担)は以下の通りです。
区分 | 支給限度額 |
---|---|
要支援1 | 50,320円(5,032円) |
要支援2 | 105,310円(10,531円) |
要介護1 | 167,650円(16,765円) |
要介護2 | 197,050円(19,705円) |
要介護3 | 270,480円(27,048円) |
要介護4 | 309,380円(30,938円) |
要介護5 | 362,170円(36,217円) |
出典:厚生労働省-P2
()内の金額は自己負担額です。
注意事項:支給金額を超えるサービスを受けた場合には全額自己負担となります。また支給限度基準額は単位×単価として計算します。表は単価を10円として計算しておりますが、利用するサービスの数や地域によっては単価が異なります。
自動車事故対策機構の養護センターは全ての患者を受け入れるわけではない
自動車事故対策機構の運営する養護センターが患者受入に際して一定の要件を設定しています。
■患者受入要件■
交通事故により脳に損傷を受け且つ重度の精神神経障害が継続し介護が要すると判断されかつ以下の6項目のいずれかに該当する場合
- 自力移動が不可能
- 自力摂食が不可能
- し尿失禁状態
- 眼球はかろうじて物を追うこともあるが、認識はできない
- 意味のある発言はまったく不可能
- 目を開け、手を握れというような簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通は不可能
参考:自動車事故対策機構
つまり養護センターでは重度の後遺障害を負った人を受け入れる事になるため、上記要件に該当しない後遺障害の人は養護センターに入所することができません。
病床数が少ない(現在288)事などがこういった要件の設定の理由の1つになっているかもしれません。
ですので、交通事故により後遺障害を負った時の事を考えて人身傷害補償保険や搭乗者障害保険に加入しておくことが大切になってくるのではないでしょうか?
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