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自賠責保険とは、自動車を保有している人なら必ず加入しなければならない強制保険の事で、正式名称を「自動車損害賠償責任保険」と言います。
強制保険ですから、任意で加入する任意保険とは一線を画する保険と言えます。
加入義務が課されているので、自賠責保険を契約せずに車を運転した場合には「無保険運行違反」となり罰則及び行政処分を受けます。
今回は、自賠責保険が強制保険として制定された経緯、そして自賠責保険の特徴(保険金額や補償内容など)について紹介します。
自賠責保険が実施された経緯及び日本における自動車事故
強制保険である自賠責保険が、政府によって全面的に実施されたのは1956年で今から約60年前のことです。
制定のきっかけとなったのは、1955年に公布された「自動車損害賠償保障法」であり、その当時の事故状況に鑑みて”自動車を運転するのであれば強制保険が必要”との判断からでした。
1955年当時の資料によれば、自動車保有台数に対する事故件数や死傷者の数及び割合は以下の通りです。
項目 | データ | 自動車保有台数に対する割合 |
---|---|---|
自動車保有台数 | 約150万台 | ‐ |
自動車事故件数 | 93,981件 | 6.3% |
死者数 | 6,379人 | 0.43% |
負傷者数 | 76,501人 | 5.1% |
もちろん、死者数や負傷者数の中には車を運転している人だけでなく、歩行中に運悪く自動車事故に巻き込まれてしまった人も多数含まれていますので、自動車保有台数に対する割合だけで判断するのは難しいですが、事故の割合・死傷者の割合が高いと思いませんか?
このように事故が多発している状況において、保険金が担保されない状況では国民が安心して生活出来ないという理由から自賠責保険が全面的に実施されることになりました。
では、この数字が直近の平成25年度だとどのようになっているか?というと以下のようになっています。
項目 | データ | 自動車保有台数に対する割合 |
---|---|---|
自動車保有台数 | 約7,500万台 (平成26年3月末時点) | ‐ |
自動車事故件数 | 629,021件 | 0.8% |
死者数 | 4,373人 | 0.005% |
負傷者数 | 781,494人 | 1.04% |
なお自動車保有台数には原動機付自転車と小型特殊自転車は含んでいません。
データ参考サイト:「自動車保有台数統計データ|自動車検査登録協会」
データ参考サイト:「安全・快適な交通の確保に関する統計等|警察庁」
当時と比べて自動車保有台数が50倍にもなっているにも関わらず、死亡者の数は減り、負傷者数の割合も大幅に減少しています。
如何に日本の政府や警察が交通事故防止に積極的に取り組んでいるのかを示す資料だとも言えます。
自賠責保険とは~補償範囲が対人に限定された強制保険
冒頭でも書いていますが、自賠責保険とは自動車を保有しているなら必ず加入しなければならない強制保険の事です。
補償内容は対人に限られています。
たまに勘違いしている人もいるので再度書きますが、自賠責保険の補償内容は対人に限られており、自分が運転している車で他人を死傷させてしまった場合に保険金が支払われるものです。
■自賠責保険の補償範囲
- 傷害(治療費・入院費など)
- 後遺障害(逸失利益・慰謝料など)
- 死亡(逸失利益・慰謝料など)
従って、その他の部分(車・物など)は補償されないため、現在の日本では車を運転するのであれば任意保険が必須ということになっています。
しかも、唯一の補償対象で有る対人賠償においても、その補償額には限度額が設定されています。
自賠責保険の最大補償金額
自賠責保険の最大補償金額は以下の通りです。
死亡 | 後遺障害 | 傷害 |
---|---|---|
3,000万円 | 4,000万円 | 120万円 |
如何でしょうか?自賠責保険では、死亡の場合でもたったの3,000万円しか保険金が支払われません。
植物状態などの重度の後遺障害を持つ場合でもたったの4,000万円です。
ちなみに、複数の車両が加害車両となる場合(共同不法行為が成立する場合)には、限度額は上記の額に加害車両の台数を乗じた金額となります。
裁判の判例を見ると、過去には2億・3億の賠償額が確定している案件も有るため、ドライバーとしては”自賠責保険だけでは安心することが出来ない”というのが現状ではないでしょうか。
自賠責の保険料は事故を起こしても変わらない
任意保険の場合、事故を起こして保険会社を利用するとノンフリート等級が3段階下がり、翌年の保険料が非常に高くなってしまいます。
営利を目的とする民間の保険会社が運営する事業の中で、事故を起こした人も起こしていない人も保険料が同じとなると、不公平になってしまいますからね。
しかし、自賠責保険は全ての車に適用される強制保険であり、その本来の趣旨が被害者救済に有ることから事故を起こしたとしても翌年度の保険料は変わりません。
ちなみに、任意保険に入っていれば事故が起こった場合に自賠責保険の手続きを実施する必要は基本的に有りません。
現在は任意保険の保険会社が自賠責保険も含めて一括して保険金を支払って、その後自賠責保険の金額分を請求することになっているからです。
自賠責保険の保険料
自賠責保険の保険料は、普通車や軽自動車、バイクなどの車種別に設定されています。
ここでは、普通車と軽自動車の購入時や車検時に必要な保険料を抜粋して紹介しておきます。
車種 | 24ヶ月 | 36ヶ月 |
---|---|---|
普通車 | 25,830円 | 35,950円 |
軽自動車 | 25,070円 | 34,820円 |
(注:上表は2017年4月1日以降に契約する場合の自賠責保険料)
その他の期間やバイクなどの自賠責保険料について知りたい方は下記記事を参考にして下さい。
任意保険との違いについて
前述したように、自賠責保険と任意保険には、事故を起こして保険を使用した場合に保険料が上がるか上がらないか、という違いが有ります。
その他にも両者には違いがいくつか有ります。
以下、両者の違いを表にまとめたみたので、参考にして下さい。
項目 | 自賠責保険 | 任意保険 |
---|---|---|
加入の義務 | 義務 | 任意 |
保険料 | 車種別で固定 | 申込条件によって変化 |
事故後の保険料 | 変化無 | 値上げ |
補償範囲 | 対人のみ | 対人 対物 車両 人身 |
補償限度額 (対人) | 傷害:120万円 後遺障害:4,000万円 死亡:3,000万円 | 無制限 |
付帯サービス | 無 | ・示談代行サービス ・ロードサービス |
任意保険の詳細は下記記事も参照して下さい。
【参考】自賠責保険料の支払時期は車検のタイミング
結論から言うと、自賠責保険料は車検費用と一緒に支払います。
まず新車・中古車を問わず、車を購入した時に購入代金と共に自賠責保険料を支払います(自賠責保険が付帯されたままの中古車も有ります)。
通常、この時の自賠責保険の加入期間は次回の車検の時期までです。
新車の場合は3年(37ヶ月)、中古車の場合は2年(25ヶ月)です(乗用車の場合)。
つまり、次回の車検と自賠責保険の更新が同時に到来する事になります。
車検を受けるのであれば、車検費用と一緒に自賠責保険料も支払う事になります。
ちなみに、自賠責保険の証明書が無ければ、車検を受ける事は出来ません。
自賠責保険に未加入の車を車検に通さないようにする事で、無保険車による事故を防いでいるんですね。
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