損保会社の財務諸表の見方「損益計算書編①」~経常収益の内容~

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保険会社の財務諸表は保険業法の定めにより通常の事業会社のそれと比べると勘定科目など独特なものが多く、会計をちょっとかじった人がぱっと見ただけだとあまり意味がわからないようなものになっています。

そこで、何回かにわけて保険会社(損保会社)の財務諸表を解説・分析してみましょう。

まず今回は損益計算書の中でもメインとなる保険会社の「経常収益」部分を見ていきましょう。

財務諸表分析

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損益計算書の構造と内容

まず会社の経営状況を示す損益計算書についてみてみましょう、一般の事業会社では、

売上-売上原価=売上総損益(いわゆる粗利)
売上総利益-販売費及び一般管理費=営業損益
営業利益+営業外利益-営業外費用=経常損益
経常損益+特別利益-特別損失=税引前当期純利益

という流れを踏んで最終利益もしくは損失が算出されます。

一方の損保会社ではスタートは経常損益になります。

保険引受収益+資産運用収益+その他経常収益=経常収益
保険引受費用+資産運用費用+営業費及び一般管理費+その他計上費用=経常費用

となり、これらの差額が経常利益(or損失)となります。

そして特別利益・特別損失を加減して税引前当期純利益が計算されます。

大枠では損保会社の方がいきなり経常損益を出すので単純化されているとも言えますが、その中には事業会社でいう販売費及び一般管理費や営業外損益も含まれており経常損益を算出するのは長い道のりとなっていますね。

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保険引受収益とは

保険引受収益の中には

  • 正味収入保険料
  • 収入積立保険料
  • 積立保険料等運用益
  • 責任準備金戻入額
  • 為替差益
  • その他保険引受収益

などが計上されます。

主なものについて簡単に内容を見てみましょう。

正味収入保険料

正味収入保険料とは、一般の企業でいう売上高に相当するもので、契約者から受け取った保険料から、再保険に要した保険料等を加減したものです。

元受正味保険料に再保険にかかる収支を加味し、収入積立保険料を控除したものが正味収入保険料となり、具体的な算出は方法は以下の通りです。

「正味収入保険料」=「元受正味保険料」+「受再正味保険料」-「支払再保険料」-「収入積立保険料」

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収入積立保険料

積立保険の収入保険料のうち、積立保険料(貯蓄性のある保険料)部分を整理したもので、積立保険料から積立解約返戻金等を控除した金額が計上されています。

積立保険料等運用益

積立保険・自賠責保険・地震保険のために積み立てる責任準備金に係る運用益が計上されています。

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責任準備金戻入額

損害保険の契約は契約者から保険料を受け取って、一定の保険期間内に特定その損害が発生したときに保険金を支払う約束をする契約です。

保険期間は多くは1年ですが始期がまちまちで決算日をもって打ち切って損益の計算をすると期末時点では保険期間が未了の保険契約が無数に存在することになります。

財務諸表を作成する過程において、その未了の保険契約も当然責任を負っているのでその責任について認識をしないと正確な損益や財政状態を出すことはできません。

そこで保険期間がまだ終わっていない契約については、「次年度以降に発生するであろう」損害に対する保険金の支払や契約途中で解約した場合の返戻金の支払義務などを果たすのに支障を来さないようにするため引当金を設定する必要があります。

この引当金の事を責任準備金と言います。

保険業法は116条で以下の様に規定しています。

保険会社は、毎決算期において、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てなければならない。

そこで保険業法に基づき計算した結果、責任準備金が前期より少なくていいとなった場合に責任準備金戻入額として収益となります。

為替差益

保険取引で生じた外貨建ての債権債務の計上額と決済額の差益と期末日での評価替えによって生じた換算益の合計額が計上されます(為替差損の金額を上回った場合)。

資産運用により発生した為替損益は資産運用損益の箇所にでてくることになります。

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資産運用収益とは、、

資産運用収益には以下のようなものがあります。

  • 利息及び配当金収入
  • 金銭の信託運用益
  • 有価証券売却益
  • 有価証券償還益
  • 為替差益
  • その他運用収益

保険会社は契約者から受け取った保険料を運用して利益をあげている一面もあります。

その運用は多岐に渡っており、預貯金として保有に始まり、国債・社債・株式の保有により利息や配当金といったインカムゲイン、売却によるキャピタルゲインの獲得、契約者やその他に対する貸付による利息収入、信託銀行への金銭信託を運用して収益を獲得、不動産運用による収益獲得などを資産運用により達成しています。

そしてこれらは国内に限らず海外の国債や株式なども運用範囲に入っています。

また、金融機関同士での短期市場での資金貸付(コールローン)による利息収入などもあります。

これらの資産運用の結果がこの資産運用収益の各項目に反映されることになります。

損益計算書に登場するものは名称を見れば一般の事業会社でも登場するようなものが多く敢えてここで個々に内容を説明することはしませんが、事業会社と違って特徴的なのはこの資産運用収益の金額も保険会社では経常的なものとして出てくるのでかなり大きなものになるということです(事業会社ではあくまでも本業とは関係ない営業外損益or特別損益として計上されます)。

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まとめ

今回は収益部分について見てきました。

事業会社の収益科目とは色々違うことが分かっていただけたと思います。

次回は費用部分について見ていきましょう。

 

合わせて読みたい

損保会社の財務諸表の見方「損益計算書編②」?保険引受費用と資産運用費用の解説~

 

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