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民事調停とは示談交渉が上手くまとまらない時に、第三者に話し合いに加わってもらって、賠償金額等を決定するものです。
交通事故の賠償金トラブルの他にも、「お金の貸し借り」「売買の代金の支払い」「近隣関係」など、あらゆる民事のトラブル解決に利用されています。
民事調停とは
「調停」という言葉を見ると、とても仰々しく見えますが、調停は訴訟のように原告・被告に分かれて法廷で勝ち負けを判断するものでは無く、あくまでも話し合いで円満に解決するのが目的です。
話し合いには2人の「調停委員」が参加し、調停委員が双方の話を聞きながら、解決策をまとめていきます。調停のメンバーには裁判官1名も含まれますが、裁判官は調停が成立したとき、もしくは不成立となったとき、あるいは重要な局面以外は出席せず、通常時の進行は2名の調停委員に任されています。
以下、調停の特徴点を少しまとめていきます。
費用は訴訟の半額
民事調停の費用は訴訟の半額です。また、申し立て手続きも裁判に比べて簡易的ですので、弁護士を雇わなくても自分で実行可能です。(弁護士費用も不要になるという事。)
従って、調停でしっかりと話をまとめる可能性が有るのであれば、訴訟ではなく民事調停を選んだ方が無難です。
調停調書は確定判決と同様の効力を持つ
調停は訴訟に比べると簡易的な手続きで済みますが、その効力は確定判決と同じ意味を持ちます。従って、調停で決まった事を相手方が実行しない時は、任意で財産差し押さえなどの強制執行が可能になります。
精神的にも時間的にも訴訟に比べると楽
何ヶ月あるいは数年スパンで行われる裁判よりも短期で問題を解決することが出来ます。また、法廷に出廷する訳では有りませんから、精神的ダメージも訴訟に比べると軽いです。
完全非公開でプライバシーが守られる
調停の話し合いに関しては、当事者のみが関わる事になるので裁判のように周りの人間に知られる事が有りません。裁判になってしまうと、色々と周りの目も気になってしまいますが、調停にはそのようなデメリットは有りません。
調停委員の提案に強制力は無い
双方の主張を聞いた調停委員は、両者の意見を総合して解決案を提示しますが、調停委員の提案に強制力は有りません。従って、当事者のどちらかがその解決案に不満であれば調停は成立せず「調停不成立」という事になります。その場合は、訴訟で解決するしかなくなります。
交通事故紛争処理センターなどの第三者機関との比較
交通事故トラブルの場合、民事調停の他に「交通事故紛争処理センター(以下、紛セ)」や「日弁連交通事故相談センター(以下、日弁連)」などの第三者が間に入って示談を斡旋してくれる特別な機関が有ります。
当事者のみで示談がまとまらない場合、このような交通事故専門の第三者機関に話を持っていくべきなのか?それとも裁判所の調停に解決を委ねるべきなのか?どちらが正しいのでしょうか。両者を比較して考えてみましょう。
交通事故専門機関への示談あっ旋依頼は無料
先ほども書いたように、民事調停を行う場合「賠償希望金額」に応じて調停費用を支払う必要が有ります。しかし、紛セや日弁連への示談あっ旋依頼は費用がかかりません。無料です。
第三者の専門性の違い
民事調停の場合、調停委員は2名で構成されており、1名は弁護士で、もう1名は見識の高い一般市民が選ばれます。もちろん、裁判所に認められる程の人なので、それなりの立場にある人が担当してくれます。
問題は、調停委員に選ばれる弁護士が「必ずしも交通事故を専門にしている訳では無い」という事です。一方で、紛セや日弁連では「交通事故に強い弁護士」が間に入ってくれます。
そういう意味で、込み入った話を理解して貰いたいなら、紛セや日弁連に示談のあっ旋をお願いした方が良いでしょう。
相手方への強制力の問題
紛セの決定は「損保会社」に、日弁連の決定は「一定の共済」に強制力を持ちます。従って、示談が成立すれば、必ずそこで成立した示談金を受取る事が出来ます。
しかし、民事調停はあくまでも当事者間の話し合いの手助けという位置付けなので、調停が成立したとしても、相手方に賠償金支払いの強制力が生じません。(もちろん、財産差し押さえなどの強制執行は出来ます。)
以上のような違いが有るので、交通事故トラブルの時にわざわざお金を払って調停をする意味合いは、そこまで無いのかなとも思います。最終判断は当事者が行うことですが、上記のような違いが有るという事は認識しておきましょう。
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