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週刊ダイヤモンド 「中国が外資に自賠責開放も眼前にそびえる黒字化の壁」という題名で、中国の自動車保険市場で苦労する日本の損保会社の実情が書かれていました。
非常に興味深い話だったので、内容の要旨をまとめていきます。
経済成長が著しい中国では、新車販売台数も年間2,000万台を超えており市場規模としては日本と比べ物にならないほどに成長しています。
事実、中国の損保市場は2008年の約2500億元から2013年には約6,500億元まで急成長しており、日本の損保会社としても何とかしてシェアを拡大したい市場である事に間違いは有りません。
(しかも、中国の損保市場の8割近くは「自動車保険市場」なのだそうです。)
しかし、この中国市場で日本の損保会社はシェアを伸ばせないでいます。
理由はどこに有るのか?順番に見て行きましょう。
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外資系損保は自賠責を販売できなかった
まず、一つ目の理由として「外資系損保は自賠責保険を販売することが認められていなかった」という点が挙げられます。
中国も日本と同じように、自動車保険は「自賠責保険」と「任意保険」に分けられるようです。
日本の場合は一括請求制度と言って、自賠責の引受会社と任意保険の引受会社が違っても、任意保険の引受会社が一括で保険金を請求して精算できる制度が有ります。
しかし、中国にはこの一括請求制度が無く、仮に自賠責と任意保険を別々の会社で契約していると、その都度別々に保険金を請求しなければならない状態でした。
こんな状態では任意保険の販売しか認められていない「日本を含めた外資系損保」がシェアを獲得することは容易では有りません。
事実、この時点における外資系損保の中国市場におけるシェアは、合計してもたったの1.28%だったそうです。
その潮目が変わったのが2012年5月の規制緩和です。
外資系損保もようやく自賠責保険の販売が認められるようになりました。
規制緩和後もなお、日本の損保会社が苦しんでいる理由
しかし、規制緩和後も日本の損保会社の中国市場におけるシェアは伸び悩んでいます。
なぜでしょうか?
①日中の関係悪化
日中の関係が悪化したことで、スタートダッシュに遅れた事が1つの要因です。
規制緩和が行われた2012年5月頃は、中国で日本の不買運動が起こるなど日中の関係が非常に緊張していた時です。
そんな時に、日本の自動車保険を契約する中国人もなかなかいませんよね。
②省ごとの認可制度
中国で自動車保険を販売するためには、国の認可だけでなく「省ごとの認可」を求められます。
日本の損保会社は上海や北京など数カ所でしか認可を受けておらず、それ以外の地域では保険を販売することを認められていません。
結局、中国全土にわたってサポートを提供できない会社と契約しようとする中国人はそうそう居ないため、市場シェアが伸び悩んでいます。
③提携している中国の保険会社への配慮
日本の損保各社は、中国で自動車保険を販売するにあたって、中国で強大な力を持っている現地の保険会社と提携して業務を進めています。
中国で自動車保険のシェアを獲得するという事は、提携している中国の会社のシェアを奪う事と同じです。
提携先の畑を荒らすのは、なかなかやり難い事ですよね。
④日本と比べて異様に高い損害率
まだまだ市場自体が未成熟な中国は損害率が70%を超えており、仮に保険契約を獲得できたとしても、利益を出しにくいという問題が有ります。
損害率とは収入保険料に対する保険金の支払額の割合
損害率「70%」という数字は先進国の約2倍です。
人件費や事務所の家賃など他にも色々な経費を払わなければいけない事を考えると、非常に厳しい数字です。
ちなみに損害率がこれほどまでに高い理由として、事故率がそもそも高いこともさることながら、修理工場が修理費用を不当に高く請求するなど、モラルの問題が影響している部分も有ります。
まとめ
色々な理由で日本の損保会社が苦戦している事が分かりますね。
しかしながら、日本のサービスは世界と比べても非常に高いレベルに有ると思いますので、何か1つが変われば一気にシェアを獲得できそうな気もします。
色々な問題が有るとは思いますが、頑張って欲しいところです。
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